第2話 ぶっちゃけると
「はぁ?」
いやですけど?
俺がそう言うと女神らしき女性が顔を上げる。ぱっと見美女のようだが、怒りで顔が歪んでいて台無しだ。
「嫌って何よ。あんた異世界知らないの? 流行りのアニメくらい見なさいよね」
「見たことはあるけどよ」
まさか女神からアニメを見ろと言われるとは思わなかった。
いや、それは置いておいて。
異世界アニメ。
前に姉貴が見ているアニメをなんとなく見た。転生したり転移したりってやつだ。その展開は知っている。
冴えない主人公が死んで、女神に超パワーを与えらえて異世界に転生。美少女とイチャイチャしつつ大活躍しながら生活を謳歌する、そんなストーリーだ。
アニメ自体は面白かった。ヒロインも普通に可愛かったし。アニメをよく見る姉貴も、作画も主題歌も良かったしなかなかの出来だと太鼓判を押していた。
ただ、俺はどうしても共感はできなかった。
異世界への転生するのはまだいい。女神から力を与えられるのも、まぁ納得できる。
ただ、他人から与えられた力で得意げになっていた主人公にはちょっと感情移入しずらかった。
俺はどちらかというとSFとかサスペンスが好きなんだ。攻殻機動隊みたいな。
「なら喜びなさいよ。現実に不満があるでしょう? 向こうでキャッキャウフフな生活をしたいでしょう? なら選択肢は一つじゃ━━━」
「いや、特に不満はない。さっさと元の世界に返してくれ」
女神の言葉を遮って俺は自分の意見を口にする。
正直な話、今が人生で一番楽しい自覚がある。勉強も部活も恋愛もうまくいっているのに、なんで異世界に行かなきゃいけないんだ。
「はぁ! 女神の提案を断るわけ!? 上等じゃない!」
怒り出した女神が机の上をガサゴソと漁る。やがてリモコンか何かを取り出すと、虚空に向かってかざしてボタンを押した。
ピッという電子音とともに降りてきたのは、巨大なスクリーンだ。
なるほど、女神はこれでアニメを見てたのか。
映画みたいでちょっと羨ましいと思ってしまう俺。
「さぁ、覚悟しなさい!」
「何を?」
「これから映すのはここに来る数時間前のあんたの行動よ! あんたがどんな1日を送ったのか、見てやるんだから!」
「人生全部じゃないのかよ」
「しょぼいなーって顔するな! あんたのプライベートを丸裸にしてやるから!」
えい! と女神はさらにリモコンを押した。
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