リア充なのに異世界へ〜女神に呪われたせいでろくな魔法が使えない勇者は現代に帰りたいようです〜

リクヤ

第1話 ある日、夢の中

 リア充。


 ネット上ではなく、現実世界において人間関係が良好であり、趣味活動を楽しめている人間をそう呼ぶ。


 俺みたいな高校生なら、彼女がいたり、成績が優秀だったりする奴らのことを言うのだそうだ。


 なんでいきなりそんな話をしたかというと、この俺━━━椹木さわらぎ幸多こうたがリア充だからだ。


 自分で言うなって? なら見せてやろう、俺のスペックを。


 高校二年生。成績はクラスで上位五番目。バスケ部のレギュラー。親父は会社の社長なので、将来は親父の後を継ぐ予定。この前ずっと好きだった幼馴染に告白したらOKをもらい、晴れて彼女持ちになったのだ。


 どうだ? 羨ましいだろ。


 ……。


 いや、悪い。調子に乗りすぎた。ごめん。帰らないで。


 ただでさえ目の前の現実に理解が追いつかないんだ。ここで一人にされたら凹む。


「あー、あんたさぁ」


 ぼんやりと明るい空間。椅子に座った金髪の美少女が、机に置かれた書類を見ながらこちらに語りかけてくる。


 そこの声には明らかにやる気がない。心底どうでも良さげで、仕方がないから説明している感が満載だ。


 そのことに若干苛立ちを覚えつつ、俺はその美少女の顔立ちより、別のモノに目を奪われる。


 白く輝く、美しい翼。


 頭の上で輝くリング。


 明らかにただの人間じゃない。


 あの子は、女神だ。


 そう答えを導き出した瞬間、女神は書類を見ながら口を開いて。


「これから異世界に行くから。向こうでも頑張ってね」


 シャンプー切れたから買ってきてくれない? みたいな軽いノリで告げた。


 だからこそ、俺が発する言葉は一つだ。


「いやですけど?」

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