第78話 この戦いが終わったら……。

『ガっ!? アッ、ギヤッ』


 デンワから漏れるのは魔族の情けない悲鳴……。

 しかし、上空を飛んでいた雑魚とは訳が違う。


 最上位魔族。名は、イブリース。

 魔力無限を持つ恐ろしい魔族。


 だが、その恐ろしい魔族はもっと恐ろしい存在によって……一方的なサンドバッグ状態になっていた。


『ギャッ、グフ、ボェェ』


 自慢の無限の魔力も使わせてもらえなければ、宝の持ち腐れ。

 反撃さえできなければ、普段倒している魔物同然。


『漠然していますが、人類の制圧ですかね』


 その願望は、イブリースなら十分成し遂げられただろう。


 ただ————魔族として復活を成し遂げ、出逢った相手がとても悪かった。


「人類の制圧が目的と言っていたけど……所詮は戯言。一生無理そうね」


 ルルシーラが淡々と言う。


『ん。ユマがフルボッコにしている』 

「そうでしょうね。ユマは悪魔の凱旋ナイトメアの序列1位だもの。本気を出したユマは、私よりも強い」

『ん。ただ、まだ魔力を上手く制御できているわけじゃないから、魔力暴走が始まるかもしれない。誰かもう一人、フォローに欲しい』

「そうね。ユマにはフェルが適切でしょう。フェル。ユマの元へ行ってくれるかしら?」

『了解致しました』

『ん。フェル、助かる』


 アリーシャがデンワを切る。

 フェルもデンワを切り、急いでユマルマたちの元へ。


 通話が繋がっているのは、ルルシーラを入れて6人。


「ラフィア。そっちはどうかしら?」

『………』

「ラフィア?」


 応答がないラフィア。

 別に危機に陥っているわけではない。

 五体満足。息切れもなし。奥の手もまだ見せていない状況……。


 しかし、ラフィアは悩んだよう口をどざしていた。


『……ふぅ』


 息をつき、ようやく口を開いた。


『おねぇ。アルマちゃん。ガルガさん。ホルスさん。こっちにきてください』

『あら』

『およ?』

『お、おお……』

『意外ですね』


 名前を呼ばれた4人からは驚きの声が漏れた。

 まさかラフィアが助けを呼ぶなんて———


『別に手に負えないってわけではないですよ。私1人でも勝てます。ただ……余裕があるわけではありません。だから、みんなで瞬殺しましょう。その方が早いです。今、何より優先すべきは、クロウさんが倒すまで私たちが倒し続けること……。圧倒的な力で捩じ伏せておくことですから』


 ラフィアの発言に4人は納得したように頷く。


『さすがお姉ちゃんの妹っ。賢いわ〜』

『ラフィアの頼みならすぐに駆けつけないとね〜』

『ふっ。雑魚じゃ物足りなかったから、いい相手になるといいがなぁ!』

『この4人が追加で攻撃に入るとは……逆に魔族が可哀想になってしまいますね』


 それぞれやる気を出していた。


『でもルルちゃんはどうするのかしら?』


 ロフィアが唯一名前を呼ばれていないルルシーラことに気づく。


「私は……クロウのところに行くわ」

『——』

「ええ。分かっているわ。もちろん手出しはしない。私はただ、彼の戦う姿を眺めているだけよ」


 誰かが問う前に、ルルシーラが答える。

 そしてその答えを止める者も批判する者もいない。

 

「じゃあ、みんな。よろしく」


 ルルシーラの一言で全員デンワを切った。

 

「……はぁ。私も余裕がなくなってきたわね」


 ルルシーラは重いため息を吐く。


『——私にクロウを返してくれないか』


『とにかく、私はクロウがギルドを抜けたいかを確かめたい。それが本気なのか。まずは君たち自身に確かめて欲しいんだ。その上で決めて欲しい。クロウを射止めるか、私と戦うか』


 セリスに言われた言葉。


『ありがとう、今まで守ってくれて。副リーダーとして支えてくれて。そして……まだギルドを創立する前から一緒にいてくれて』


『もう一度戻ってきた日には、君と肩を並べられるくらい強くなりたい。だから僕は……ギルドを抜けるよ』


 クロウからハッキリ聞いた言葉。


 それらはまだ、ルルシーラだけしか知らない言葉。


「この戦いが終わったら……クロウが私たちの元からいなくなる。なんてこと、させない……絶対に」


 ルルシーラだけが知る言葉が、彼女の重い感情さらに加速させる。


 最悪の魔族との戦いも最終局面。


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【コミカライズ開始】異世界最高峰のギルドリーダー~ギルド最弱の僕だけど、ギルメン全員の愛が重くてギルドをやめられません~ 悠/陽波ゆうい @yuberu123

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