第14話 邂逅
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「------------------、よう」
頭の中で急に声が響いて、おれは目を覚ました。
いや違う。おれは目を開けてなんかいないし、なぜか、閉じることすらできない。
身体も動かないし、息も吸えない。何かが触れる、感覚もない。
何が起こった?
「……………………?」
というよりも、不思議な場所だった。きらきらと小さな粒子が空気を舞っていて、ぼんやりと空から光が差し込んでいる、真っ白な世界。
まるで、雲の中にいるようだ。
「-----こっちだ」
また声が響いて、おれは振り返る。いや、振り返る仕草をした。
すると、そこには、一人の男が座っていた。
身体がすっぽりと覆われるほどの大きなローブも身に纏った男。何も見当たらないはずの世界に、背もたれ付きの木製の椅子に座っている。
これは夢か何か?
「……?」
誰?と言ったつもりだった。しかし、おれの声はこの世界に響かず、ただただ、白の世界へ吸い込まれていく。
ローブの男は何も言わず、ゆっくりと椅子から立ち上がった。そして、おれのいる方へ歩き出す。よく見ると、男の背格好は同じぐらいだった。ローブで顔は口元しか見えないが、若い男のようだ。
その口元が不意に動き出した。
「…なんだ?何故話せないか不思議なのか?ん?」
男はおれに顔を近づけながら、弄ぶかのように言った。でも、おれはそれに反論することができない。
「はっはっは。当たり前だろう。お前には口が無いんだから」
それを愉しんでか、男は高く笑い出す。
今なんて言った?おれに、口が無い?
おれは自分の身体を探した。頑張って探した。でも、見当たらない。どこまでも、果ての無い真っ白な空間が広がるだけだ。
じゃあ、ここにいるおれは、何なんだ?
「お前は、今、意識だけなんだよ。思念体、と言ったところか。ま、おれが呼びだしたんだけどね。安心してくれ。身体は別の場所でゆっくり眠っている」
何か今すごいことを言われた気がしたのだが。思念体?おれが?呼び出されて、身体から離れて?別の場所にいる?
もう訳が分からない。頭が混乱しそうだ。その頭がないのだけれど。
「大丈夫だよ。お前はすぐにもとの場所に戻れるから。おれはね、ただお前と話をするために呼び出しただけなんだ」
どういうわけか、この男にはおれの意思や表情がわかるようだった。というか、こいつは何者なんだ?おれの意識だけを呼び寄せることができて、こんな不思議な場所にいる人物。
そんなの、考えられるのは。
「…神、とでも思ったか?残念。おれはそんな大層な存在じゃない。いわゆる、この世界の監視者みたいなものだ。まあそうでなくとも、お前たちにはできないことができたりはするけどね」
男はおれの思考を読み取って、そう答えた。さっきから不思議なことばかりで、全然ついていけないけれど。
監視者。男はそう言った。そんなものがこの世に存在するかどうかはともかく、今自分の目の前にいるのだから、疑いようがない。
でも、そんなやつが、おれに一体何の用があるのか。
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