第4話 プロローグ4 オッサン、管理神(笑)の仕打ちにキレる



 

 互いに自己紹介しました。


 なるほど。ここで冒頭につながるワケか。うん、メタメタ。



 私をいきなり引っ叩いたのは、白のハリセンを構えた白いワンピースの幼女? 童女? でした。ほんと白押しだね。保護色? 白の背景に白の服って、生首が浮いているように見えるよ。


 うん。アリだ。

 いやいや。変な意味じゃなくて。

 異世界モノとしてのテンプレってことで、ですよ?


 偉そうに腕組みして、精神的には上から目線で、身長差的に上目遣いで私を睨み付けてくる幼女女神(仮)を前にしてそんな感想をいだきました。


 だって、白髭のジジイか天然美女か、あるいは野じゃ炉利かってくらい鉄板でしょう。少なくともうちのクラスの生徒から没収したバイブルではそうなってた。

 シェア三分の一ですよ。アリアリ。


 でも、一つ懸念バージョンがある。

 この神様(仮)の姿がまさに仮の姿で、面接対象の欲望・願望を具現化したものだ、などと言われた日にはオッサン貝に転生するよ。衛星軌道で考えるのやめちゃうよ。


 いや! 自信持とう。二十年中学校で教師を務めてきたんだ。耐性はあるはず。中には拗らせちゃうヒトもいるみたいだけど……

 いやいや。私は大丈夫! 相手が○リだろうが炉利だろうが魯理だろうが問題ない! YESなんとかNO TOUCH!とか言わないから。紳士だから。あれ? 紳士がまずいんだっけ?


 え? 伏字? 誤字がある?

 いやいや。自分教師ですから。察してください。


「安心せい。確かに姿ぐらいは変えられるが、この姿がデフォじゃ。お主の欲望など知ったことではない」


 わ、しゃべった!


「しゃべるわ! お主、人を何だと思っとるのじゃ」


 ぷぷっ。人だって。神様じゃないのかね?


「やかましい! 揚げ足を取るでない!」


 おお、今気付いたけど、無言で会話できてるよ。これも鉄板だな。慣れると便利かも。


「くっ……動じんヤツだ……」


 心の声にいちいち突っ込むなんて、律儀だなあ。

 あ、そういや、ちょくちょく合いの手が入ってたけど……


 え? アカシック・レコードさん? あの有名な?

 どうもどうも。反村武士と申します。いつもお世話になっております。というか先ほどからお世話になってます。いや~放置されっぱなしでいたたまれなかった時にアカシックさんが相手してくれなかったら心病んでましたよ。お仕事とはいえ感謝します。時に――


「こ、こら! 勝手にママと話しちゃダメっ!なの」


「え? ママ? なの? 『のじゃ』はどこいったの?」


「う、うるさい! それもこれも全~~部っ、お前らのせいじゃんか!」


 思わず声に出したら、幼女がキレました。涙目で地団太踏んでます。雲を突き抜けそうで怖い。可愛いとか思ってナイヨ。


 どうするタケシ。このままでは事案モノだぞ。


 安心しろ。オレには三種の神器がある!


 泣いてる幼女を放置して、私は身を守るための準備をする。うん。自己防衛大切。


 三種の神器。一つ目は情報社会に依存せざるを得ない現代の武器、ケータイ。まあ最新のスマホは職員室のカバンの中だけど。


 二つ目は実弾。物理的に肉体を維持するためのカロリーに変換可能。ぶっちゃけ食費の入った財布。うち、中学校でよかったよ。給食があるもん。高校の先生なんかどうしてるんだろうね? 昼飯毎回ラーメン? 勘弁してよ。たまにだから旨いんじゃない。愛妻弁当? わるかったな。毒男です。


 ゴホン……そして三つ目は社会的に命を守るイージスの盾。


 私はおもむろに懐からブツを取り出した。具体的にはジャージ(上)のポケットに入れっぱなしだったからですが。


「テテテテ~ン! ぼ~はんきょ~かいのわんしょ~!」


 説明しよう。

 四十男が街中で幼女に声をかける。一発で通報だ。社会的に死ぬ。


 その悲劇を回避する究極のアイテム。それがこの『防犯協会の腕章』なのである!


 防犯協会、PTA、区役所など、面倒な手続きを経て手に入れたコレを装備すると、あーら不思議。街中で幼女に声をかけ、あまつさえ手を繋いで連れ回しても通報されるどころか、『ご苦労さまです』と労われてしまう、まさにゴッドアイテムなのだ!


 私はゆっくりと左上腕に腕章を装着する。隙はない!


 ふっふっふ。コレさえあれば涙目幼女などオソルルにたらず。さあ、我が究極の話術を受けてみよ!


「……いや、聞こえてるんだが……」


 ぐおーっ! な、なんてことだ! 幼女の『ママ』発言に気を取られて肝心のテンプレを忘れていた!


「引っ張るな! さっきの発言は忘れろ! この変態!」


 幼女、暴言を吐く。


 カッチーン! これまでの私の努力を無にしおった! HENTAIだと? 許せん!

 わかった。もう我慢しない。

 ふん! どうせ神サマなんだから見た目だけだ。合法○リだ。炉理バ○アだ! 遠慮などいるものか!


 いや、社会的にはアウトか。

 だが! 大人なアカシックさんはわかってくれるに違いない! 根拠はないが味方だ!


「あのな――」


「おい! 貴様! それでも神なのか! この何ちゃって神め! 神(笑)が!」


 私は○リ神の発言をぶった切り、暴言を浴びせ返す。大人気ないと言うべからず。


「だいたい何で語尾がコロッコロ変わるんだよ! 統一しろよ! 『野田』って誰? 『なの』って可愛いじゃねえか! こうなったら『にゃん』って言えよ! 『ピョン』でもいいよ!」


「だっ、だって! それはお前らが――」


 無言通信? と違って肉声言語罵倒には息継ぎが必要だ。

 幼女女神(笑)はその隙を突いて反論しようとしてきた。


 だがやらせん!

 真っ白の精神と時の部屋? で鍛えた高速思考の奥義を見せてやる! 修行のおかげでキャラが崩壊してしまった自覚はあるが。あるいは、職場ではPTAが怖くて隠れていたオレの中の眠れる獅子が目覚めたのか。


「だいたい『ママ』ってなんだよ! アカシックさんに似合わないだろ! 『野じゃ』なら無難に『母上』でいいじゃねえか! 意表をつこうとしてんのか? だいたい――」


 私はこの後小一時間ほど言いたいことを言い続けるのだった。

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