第2話 プロローグ2 オッサン、キャラ崩壊


 

 吾輩はオッサンである。名前はまだ――


 すいません。間違えました。何故か言わなければいけない気がしました。




 では、テイク2で。


 知らない天井だ……


 というセリフをよく聞かされておりました。

 ああ、それだけではありません。『お前の血は何色だー』とか『弾幕薄いよ、何やってんの』とか。いきなり『目がー、目がー』と叫ばれた時にはマジで救急車呼ぼうとしました。


 後で聞いたら、ああ、そういえば見たことあったはずだ、という感じでした。

 リアルタイムで見た私が全く覚えていなくて、最近生まれたばかり(中学生)の連中が多用する時代です。


 ハイ。そうです。私は四十路のオッサン、花の独身中学教諭ですが、何か?


 あっ、やべっ。これも生徒たちが使ってた。

 これも逆輸入と言って良いんでしょうか。

 思わず使ってしまいます。


 冒頭(テイク2)のセリフ、今の状況が本当にハマリまくってます。ウソです。使ってから一人で訂正しました。


 天井ないじゃん! 壁もないじゃん! ついでに地面もないじゃん!!


 何言ってるかわかりませんか?

 事実なんです。

 今、必死に写メ撮ってます。電波ありません。あ、わたしガラケー派です。なんとなく? アンチ多数派? まあいずれ廃止されるのはわかっているので仕事用はスマホ使ってますけど、もうね、料金がきつくて、でもガラケーに愛着もあるしで……


 いや、それどころじゃなくて。


 白い空間です。持ち物検査で可愛い生徒クソガキ達から没収したラノベや無料のネット小説で読んだことがあります。

 重力が十倍でも空気も薄くないので精神と○の部屋ではないのでしょう。


 絶対神様が来る。

 遺跡風なら王女サマだ。





 ……が、誰も来ない。

 体感で30分くらい待ちましたよ。あ、電波なくても時間がわかるんだった。

 暇すぎて現実逃避しちゃうよ。

 ってか、これ、現実? 夢?


 ということで、ただいま検証中。わたし、社会科(公民)の教師なんだけどね。

 どこまで科学的に証明できるか自信ないけど、ほかにすることないから。ネットもつながらないし。


 検証してみてわかったこと。

 足元に雲。蜘蛛じゃないよ。以上。


 うん。全く科学的じゃない。誰もつっこんでくれないし、もうやめて! HPはゼロよ!

 いかん。そろそろ脳がやばい。いや、ぃやヴぁい。


 ああっ! 誰か助けて!






 うん。はっちゃけてみたけど、反応がないよ。ノーレスだよ。職場でやったら事案だよ!


 ホントにどうなってんの?

 お約束はどうしたの?

 チートとかいらないから。

 奴隷じゃなきゃ農民の子供でもいいから。


 はっ。も、もしかして、これ、テストか何か?

 神様が極限状態の転生候補者を監視してて採点してる?


 はっはっは! 勤続二十年の教師ナメンなよ!

 OK。そうとわかればこっちのものだ。先ほどのお茶目な言動はノーカン。一時的な錯乱ってことで。一般人ならフツー、フツー。


 ……さて。検証の続きだ。

 視界、360度パノラマ白い空間。

 上空、白い空間。

 下方、白い雲。

 もうホントに真っ白で狭いんだか広いんだかもわからない。手探りで壁を探そうとしても見つからないから狭くはないとわかる。足元がルームランナーになってなければだが。太陽のような光源もないのに自分の姿はハッキリ見える。でも影はない。そもそも足元の雲は見てわかるのにちょっと離れたところは天地の境目がわからない。


 うん……やってられっか!




 いや、待つんだジョー。これは罠だ。絶対見られてる。

 くそっ。


 しかし、不思議といえば不思議だ。

 何で雲の上に立ってられる?


 まじめに検証してみてもいいかも……


 しゃがんでよく見てみる。

 うん。マシュマロ風の何ちゃって雲じゃないね。


 例えるなら、アングラ劇団がよく使うドライアイスのスモークみたいだね。風もないのに漂ってるし。

 何で私、落ちないの?


 手で触ってみる。


 うわ!  触れないよ。突き抜けるよ。空気だよ。そりゃそうだよ、雲だもん。

 小銭(五円玉、なくなってもお賽銭だと思えば惜しくない。堅実だな私。)を落としてみたらスッと雲を突き抜けていった。探しても見つからない。


 え? だから、何で私は落ちないの?

 足か? 足限定で落ちない仕様? 

 靴かも? この、やっすい校舎用内履きの布靴のせい?


 じゃあ、試してみよう。

 片足だけ靴を脱いで……


 あ。立てた。クラ○が立った!




 危ない。また脳がやられるところだった。誰も聞いてないからギリギリセーフ! 3秒ルール!


 あー、とにかく、科学的検証でわかったことがある。

 この雲? 一定以上の力を加えると力場? が発生するんだ。バリヤー? ラノベ風にいうと魔力障壁?

 具体的に言うと人間の体重移動で歩けるくらい?


 もうね、人体実験しちゃったよ。冷や汗ものだよ。


 雲? の上に寝転がってみました。体重の分散? も大丈夫だった。

 三点倒立してみました。江頭○○分?

 山○塾もしてみましたよ! マジびびった! 股間がヒュンだよ。


 今は、前転しながら移動中。迷子怖いから近場だけ。ランドマークないからもう既に迷子?


 ゴロゴロ。


 う~ん。未だ試験の結果が出ないから、もう少し考えよう。

 今度は、科学的じゃなくて心理的でいいや。


 仮説その1

 ここは現実世界。地上二千メートルの雲海の上。未発見のふしぎ雲。


 ブーっ。駄目。満場一致で却下。一人だけど。


 仮説その2

 ここは現実世界だけど、バーチャル空間? ゲームとかの。


 ブーっ。駄目。やったことないけど、ありえない。つーか、まだそこまで進歩してないだろ。


 仮説その3

 ここは夢の中。肉体は植物状態、意識不明。ブラッ○ジャックの出番だ。


 ああ、思い出した。というか、思い出すどころか忘れてなんかいないよ。

 何か、とどめを刺されそうで口にできなかったんだよ。


 そういえば、この空間に来る前に校舎の屋上から落ちたんだよ。ロープレスバンジーなんだよ。

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