サキ

〈サキ〉

 光輝君はたくさんの友達に囲まれながら、出会ってから私に一度も見せなかった満面の笑みをして、友達からお菓子を受け取った。本当はみんなに渡す予定のなかったお菓子ではあるが、そんなことはどうでもいい。


 他人の幸せを感じたのは何年振りだろうか。


 他人から幸せを与えられたのは何年振りだろうか。


 どんな夜よりも暗く閉ざされていた私の心に、この夜が光を灯してくれた、そんな気がした。


「いいですねぇ、ハロウィンの夜ってのは」

「そうですね、私も来年は、もっとお菓子用意しなくちゃ」

「そしたら来年こそ、私にもお菓子をくれますよね?」


 ……え?


 すぐさま横を向くと、そこに立っていたのは灰色セーターに丸メガネの……


「お巡りさん! このおっさんも捕まえてください!」


 こちらの夜は、まだまだ明けないようだ。




 完

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こんな夜には軽めの奇跡を 地下街 @tikagai

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