 最終章 えんどろーる 


馬車に乗ってゆらゆらと帰途に就く私たち。


隣に乗ってるナツの顔がなんだか浮かない。


頭に手を当ててるし。


なんだか顔も青い。




「ねえ、だいじょうぶなの?」


「ああ、気にするな。ただのお見合いの振り替えだ。」


ああ……という感じのうめき声。


「そんなことより、帰んなくていいのか?」


「?帰るって何が?」


「姉ちゃんがこれ落ちてたってさ?」




そういってナツは見覚えのある古びた本を渡してきた。


「お姉さん?」


「ああ、言ってなかったか。姉ちゃん、王族やめて宿やってるんだ。王都で。」




「えっ、ってことは?」


「忘れ物みたいだな、ちいさな勇者様。」















ぶおおおおん。


 「ちょっと春っ。春ってば」


 グラグラと揺れる体。


聞こえてくるエンジンの音、泉美の声。




 「もうやっと起きた。ちょっと春ったらまだ寝たりないの?もうすぐ着くわよ。」


目の前には泉美の顔。


窓に映るのはいつもの景色。


あれ?




「えっ着くって?どこへ?」


「もう冗談はいいから。ほら次降りるよ。」


「次は…次は…。」


「お降りの方は停車ボタンを押してお知らせください。」


「We will soon be ariving at …。」


聞こえてくるバスのアナウンス。


「もうほら、いくよっ。」




「ちょっ、そんなひっぱったら。」


ふわっと体が浮いて体が床へと落ちていく。


しかし、その手がじめんにふれることはなかった。


なぜなら…。






「お客様、忘れ物ですよ。」
















 おわり 

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私色ファンタジア stardom64 @stardom64

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