引きこもりニートが1年間アメリカで生活して、アメリカンドリームをつかみ取る話

@gurasaaaan

序章

「もう死にたいな」

 人生で初めて、そんな考えが頭をよぎった。いや、もう覚えていないだけで、本当はそれまでも数回くらいはあったのかもしれない。でも、覚えてないということはやはりそれはその程度の軽い感情だったのであって、事態はさほど深刻ではなかったのだろう。いや、そのこと自体すっかり忘れてしまっているだけで、その当時の自分にとっては深刻な悩みだったなんてこともあるのかもしれない。ぱっと思いつくもので、その類の経験がひとつ、ふたつある。いずれにしても、真剣に「死」というものを検討したのは、この時が初めてだったことは確かだ。

 大学4年の夏、とある会社の面接を終えて、最寄り駅から家まで歩いていたときだった。どうしたらいいのかわからない。もはや自分が何をやっているのかもよくわからない。自らの23年という短い人生を全否定されたよう…などとは思わなかったが、自分は社会不適合者なのではないか。こんなにしんどい状態がいつまで続くのか、と考えていると、気づいたら泣いていた。


 既に察しの方もいるかもしれないが、私は大学受験時に、浪人している。その上、一浪した結果、現役時に合格していた大学の同じ学部の違う学科に入るという、テンプレ浪人エピソード持ちである。

 そんな私だが、大学4年間は青春を謳歌した。というには少しばかりロマンス要素が足りない気もするが、それなりに楽しかった。いや、すごく楽しかった。小学生の時からやっていたテニスを大学でも続けるために、テニスサークルに入った。この時点で、テニサーでただ遊び散らかしていただけだろう、などと考える人もいるだろうが、私が所属していたテニスサークルは、世にも珍しい、真面目にテニスをやるサークルだった(世の中の大半のテニサーがこの文言を使うことを、大学2年生くらいで知った)。適度に遊びつつも、リーグ戦のメンバーとしてテニスに打ち込み、何年ぶりだったかの一部リーグ昇格にも貢献した。だから、この大学生活自体は、全く後悔などしていない。ただ、他にもっとできたこと、しとくべきだったと思うことはたくさんある。死ぬほどどうでもいいが、今私がこう思っている時点で、これが近い将来にタイムマシーンが誕生することはないことの証明である。

 そのしとくべきだったことの一つが、自分のやりたいこと探しだ。自分が何をやりたいのか、何が本当に好きなのか。これが簡単なことのようで、意外と難しい。そもそも、大人になってもこれがわかっていない人。わからないまま一生を終えていく人も一定数いると、個人的には思っている。当時の私も、これがわからなかったから、いくつ面接を受けても、箸にも棒にもかからなかったのだと思う。どうして、大人はこんな大事なことを、子供達にもっとわかりやすく、説得力のある方法で、たたき込んでくれないのだろう。

 そういう訳で、死を考えるほど精神的に追い詰められていた私だが、あの日、目から涙が溢れてきて初めて、どれだけ自分が追い詰められていたのかに気づいた。就活を辞めようと決断したのは、その日だった。

 その日から、紆余曲折を経て、4年ほどが経過した訳だが、今こうしてここに文字を打ち込んでいるのは他でもない、これまでに起きた出来事や、その時々で私が何を考えていたのか、そしてこれから先、私のこの人生がどうなっていくのかを記録として何かに残しておきたいと考えたからである。

 と言うわけで、この物語とはとても言えないような、稚拙な文章の塊は、引きこもりで就活にも失敗したニートが、アメリカで生活することになり、その後翻訳家として世に名をはせるようになるまでの記録。になる予定のものである。





 

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