第4話 無理矢理奪った恋に愛はない。

三人は、それぞれ別の大学へ進学する。



この後起きる事は、誰も想像していなかった。



准平を見送る為に、まだ二、三日後の出発だった咲羽は、空港まで来た。

そして、心から好き合っている同士だったら、きっとこんな情景が見受けられるだろう。


「咲羽、キスしていい?」

出発まで後一時間。准平と咲羽は、高校の卒業式から二、三日ごとに会っていたが、いつも手を繋ぐだけ。キスはしなかった。


「…ごめん。なんか心の準備が出来ないって言うか…」

「でも、もう何か月も会えないんだよ?だったら…」

准平は咲羽の肩に手を当て、キスをしようとした。



咲羽は准平の腕をゆっくり丁寧に、そして少しずつ強くしながら、拒んだ。



「ごめん…ごめんなさい…ごめ…」



咲羽はぽろぽろ涙を次から次から零し、何度も何度も謝った。

その瞬間、



「さーちゃん泣いてるじゃん!何してるんだよ!?」


咲羽に、待ちわびた声が聴こえた。


「なんでお前がいるんだよ!咲羽はもうお前のものじゃないんだよ!」

「さーちゃん泣かしてまで、出来るのかよ!そんな風に無理矢理奪った恋に愛はない!絶対絶対愛は生まれない!!」

「光…」

「さーちゃんは、僕に後ろ三十メートルの距離をくれた。何か荷物を落としたら、三十メートルから戻ってきて一緒に拾ってくれた。いつも僕がどうやって学校で何をして良いか、何をしちゃだめだとか、一個一個優しく教えてくれた。とっても優しいさーちゃんなんだ!そのさーちゃんを泣かせたら、僕が許さない!」



「じゃあ、来いよ!相手してやる!!」

「ちょ…准ちゃん!」


誰もが想像していたと通り、光は一方的に殴られるだけで、光は胸倉をつかんでは、突き飛ばされ、行く先がすぐわかるパンチで、勢い余って転んだり、


「さーちゃんの事裏ぎったくせに!これから大学行って、他の可愛い子いたらすぐそっち行くくせに!僕は絶対咲羽ちゃん以外好きにならない!」

「んだとー!?てめーだっていつも女に囲まれていい気になってたじゃねぇか!!」



「やめて!!!!!」



ほとんど掠り傷もない准平と、ぼろぼろの光。


「光!あんたが准ちゃんに勝てる訳ないでしょ!?」

「でも、強くなるって約束したから…」

「え?」

「僕、憶えてるよ。高校生三年生…の卒業式の日、六時ちょうどに告白したら付き合ってくれるって。卒業式は約束…破っちゃったけど、強くはなったから…今、本気出すから!」


必死で准平に歯向かて行く光。息も途切れ途切れだ。余裕だった准平も、あまりのしつこさに、

(やばい…こいつ、もう立てるはずないのに…)

「絶対さーちゃんの事強くなって、恋人になるんだ!」



最後の一発、怯んでいた准平を初めて腰をつかせた。


「俺の…負けだよ…」

「!じゃあ…三上君…、咲羽ちゃんの事て呼んでいい?」

准平は少し言葉を失った。かと思うと、寝転んだまま大爆笑した。

「おまっ…ははははあー腹痛てぇーううっははははバーカ!こういう時はお前なんか咲羽と約束してたんだろ?それ、言わなくて良いのかよ!!」


「あ、そうか!さーちゃん、僕のコイビトになってくれる?」


「…うん…なったげる!!」



大粒の涙をこぼして、咲羽は、騒ぎを聞いた警備員が集まり、四人の周りを囲んだが、寝転んだまま笑い転げる三人に、どうしたものかと呆れるだけだった。



お帰り。十三年の恋。

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馬鹿!なんで優しくするの?…でも、なんで気付いてくれないの?あなたの優しさが欲しいよ。 @m-amiya

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