第7話
水上早紀は語る―――。
婚約指輪を選びに、銀座に彼と二人で出かけたんです。
人気ブランドショップに入って、二人でガラスケースの中の指輪に夢中になっていたら「ゆっくりとご覧になってください」と女性店員さんが声をかけてくれて。
お礼を言おうと顔をあげたら、同性の私が驚くほど素敵な女性が立っていて――。どう言えば……オーラがすごくて、洗練された芸能人やモデルのような……。
思わず見蕩れていると、その店員さんもまた、私を見て「え……?」という表情を浮かべたんです。
なんだろう……と思いながら少し見つめ合った後「もしかして水上さん?」と聞かれました。
私が戸惑っていると「あの――、大学のテニスサークルで一緒だった真堂です。覚えてないですよね」と、彼女は微笑みました。
思わず「あっ」と声が漏れました。
一呼吸遅れて二人で「懐かしい」と、笑い合いました。
覚えてないも何も、彼女はサークルで一番の有名人でしたから。
ただ、学生時代よりも遥かに綺麗になって大人の魅力を増した彼女と、記憶にある彼女とが結びつかなくて――。
―――「その再会に、どんな想いを抱かれました?」
少し間があいた―――。
「どうでしょう……懐かしくはありました。ただ、今となっては―――」
聞くまでもない事だ。成海は、質問を変えた。
「彼女は学生当時、どのような?」
「学生の頃から彼女は 抜群に魅力的で人気もあって、とても目立っていました。大きなサークルでしたので、顔は知ってるけど名前は知らない――そんな人もたくさんいましたけど、男女とも、彼女の事を知らない人はいないと断言できるほどに。ただ、よくない噂も―――」
早紀は、言いにくそうに言い淀んだ。
そこからは―――成海が引き取った。
「報道では、被害者側の悪評などは流れにくいですがー―、彼女の評判は……すこぶる悪いものばかりでした。記者から色々な情報が入りますが、良いものは一つもなかった。
いわゆる『魔性の女』です。
彼女が狙いを定めた男は、まるで魔物に絡めとられていくかのように彼女に堕ちていく。そして、その男は決まって妻や恋人がいる男たちです。男たちが自分なしではいられなくなった頃を見計らい、ゴミのように捨てる。彼女はそんな事を繰り返していたようです。だから、いつかはこんな事件に巻き込まれるんじゃないかと思っていた人が、たくさんいたそうです。
おそらく今回も、真堂留美は矢並恭司にソレをしたのでしょう。
もっとも販売員としては、とても優秀なようでした。女性ファッション誌やテレビなどで『美人すぎるカリスマ販売員』などとして幾度か取り上げられるほどに―――。ご覧になられた事はないでしょうか?」
「いえ……、あまりそういった雑誌や番組は見ないものですから。そうですか『魔性の女』……彼もまた、彼女の魔性に絡めとられてしまったんでしょうね……」
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