123.操られてきた者達
『……次から次へと鬱陶しい。だが、まだゴーレムは四体自由……こちらの優位は変わらない』
「いや、三体だ」
『……何?』
イラつくネルメアの言葉を遮ったのは、ディゾール様だった。
暗黒の魔女を含めて、私達は彼の言葉を理解できなかった。しかし、周囲を見渡してみると、確かにゴーレムが一体いなくなっている。
『なっ……何をした』
「お前のゴーレムの内一体は、俺が空間の狭間に閉じ込めた」
『ば、馬鹿な……お前に、そんな魔力が残っている訳がない』
「確かに、俺の中にもう魔力は残っていなかった。だが、それは俺の中の話だ」
『……む?』
ネルメアとほぼ同時に、私もあることに気づいた。ディゾール様の後ろに、二人の女性が立っているのだ。
それは、ファルーシャとアルフィアである。どうやら、二人はディゾール様に自らの魔力を分け与えたようだ。
『お前達……』
「シャザーム、あなたが私の体を使って何度も他人を操っていたおかげか、私もその魔法を体が覚えていたようです」
「私も、あなたに操られていたことがあるから、そういう魔法は理解しやすかったわ」
『くっ……』
ネルメアは、他人を自身の魔力で何度も操っていた。その時の経験は、二人の体にしっかりと残っていたようである。
操っていたファルーシャも、操られていたアルフィアも、魔力の譲渡に関する魔法を簡単に使えるようになっていたようだ。それは、暗黒の魔女にとっても、大きな誤算だっただろう。
『だが、まだ三体いる……』
「……強がりはやめた方がいいと思いますよ。あなたの戦力は、もう三体とはいえないはずです」
『……何?』
メルティナは、ネルメアの言葉にそう反論した。
だが、ゴーレムはまだ三体残っている。バルクド様が一体引き付けていることを考えれば、四体とさえいえるだろう。
だが、メルティナは焦る所か余裕そうだ。ということは、あちらの戦力は見た目より少ないということなのだろう。
「皆さんが戦っている間、私はただぼうっとしていた訳ではありません。あなたのことを探っていたのです。そして、わかりました。あなたのそのゴーレムの中には、魂が入っていると」
『……くっ!』
「一体には、あなた自身が入っているようですね? ですが、もう一体に入っている魂はなんでしょうか? そのゴーレムが戦力にできるとは、私には思えないのですが……」
メルティアの話を聞いて、私は理解した。
恐らく、ゴーレムの内一体には、彼女の夫の魂が入っているのだと。
オルディネス、魂奪取魔法の本来の開発者。その魂を、ネルメアはこの戦いに連れて来ていたのだ。
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