122.密かな特技
『……予想外だったわ。でも、どうやらあなた達はもう戦えそうにないわね』
「それは……」
『残りのゴーレムは五体……さて、メルティナ、あなたはどこまで戦えるのかしら?』
ネルメアは、また新たなゴーレムをこちらに向かわせてきた。
メルティナはもちろん強い。だが、残り五体のゴーレムと暗黒の魔女自身を相手にして勝機があるのかどうかは、微妙な所である。
しかし、私達はもう限界だ。ディゾール様もキャロムも戦えない以上、もう学園に戦力は残っていない。
「皆さんの頑張りを無駄にはしません。残り五体は、必ず私が……」
「待ってください、メルティナさん」
「え?」
ゴーレムに構えるメルティナの前に、一人の男性が現れた。
それは、バルクド様である。彼は剣を携え、メルティナを守るように立っていたのだ。
「バルクド様? ここは危険です。早く避難を……」
「わかっています。ですが、避難する訳にはいきません。ここには、僕の大切な人達がたくさんいますから」
「でも、あなたは……」
「確かに、魔法について、僕はそこまで理解が深くありません。ですが、あのゴーレムなら、僕にも対抗する力がある」
バルクド様は、そう言ってその剣を掲げた。そして、そのままゴーレムに向かって行く。
それに対して、ゴーレムは大きく振りかぶる。その巨大な拳で、彼をひねりつぶすつもりのようだ。
「甘い!」
『なっ……!』
ゴーレムの攻撃を、バルクド様は素早い動きで躱した。その身のこなしは、見事である。
「……敵も味方も、驚いているようだな」
「え? リオーブ様?」
驚いていた私に話しかけてきたのは、リオーブだった。彼は、バルクド様の動きに対して、笑みを浮かべている。どうやら、私達と違って事情を知っているようだ。
「あいつは、昔から剣技の才能があった。本人がそういうことを自慢する質じゃないから、俺くらいしか知らなかったがな……」
「そ、そうだったのですか?」
「ああ、最近、あいつは密かにその剣技をさらに磨いていたんだ。こういう戦いがある時、少しでも役に立てるかもしれないってな」
リオーブの言葉に、私はまたも驚くことになった。バルクド様がそこまで優れた剣士だったなんて、まったく知らなかったからである。
少なくとも、私はその話を聞いたことがない。メルティナも困惑しているので、彼女もそうだったのだろう。
しかし、これは幸運なことだ。これで、ゴーレムの内一体は、バルクド様が引き受けてくれる。
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