124.奇妙な行動
『……やはり、あなたは厄介ね、メルティナ。だからこそ、あなたを排除したかった。魔法の才能に恵まれたあなただけが、私の障害……』
「私だけは、あなたの計画を止められませんでした。ここにいる皆さんがいたからこそ、私はここまで来られたのです」
『確かに、そうまもしれないわね……でも、あなたさえいなければ、よかった。あなたがいなければ、どうとでもなったのだから』
ネルメアは、メルティナの元にゴーレムを一体向かわせた。
流れからして、それは彼女とその夫が入っていないゴーレムなのだろう。バルクド様が引き付けているものを除けば、それが彼女の最後の戦力である。
「残り三体……それなら、こちらも全力で行かせてもらいます」
『ぬうっ……!』
次の瞬間、メルティナの体から光が放たれた。
その眩しい光に、私は思わず目を閉じる。恐らく、メルティナは全力で魔法を放った。その結果がどうなるかは、明白だ。
『……ふっ、やはりこうなるのね』
私が目を開けてみると、既にゴーレムは消え去っていた。メルティナがその魔法によって、消滅させたのだ。
私達が苦労して倒したゴーレムも、彼女の前ではほとんど無力である。もっとも、魔力をかなり消費しているはずなので、目に見えている結果程楽なものではなかったはずではあるが。
「さて、これで残りは二体ですね。一体にはあなたが、そしてもう一体にはあなたの夫の魂が入っている。どちらで来ますか?」
『……当然、私が行くわ。あの人の魂だけは、傷つける訳にはいかない』
続いてメルティナの前に立ちはだかったのは、ネルメア自身の魂が入ったゴーレムだった。
彼女は、夫の魂が入ったゴーレムを守ろうとしている。つまり、彼女の戦力は、最初から七体だったようだ。
しかし、そもそも彼女はどうして夫の魂をこの場に連れてきたのだろうか。近くに置いておきたかったとも考えられるが、それはなんとも妙な話だ。
「……」
その違和感は、当然メルティナも覚えているだろう。彼女は、挑発しながらも辺りの様子を気にしている。それは、暗黒の魔女が何かしらの策略を巡らせていないかを警戒しているからだろう。
『ふふっ……これが、最後の戦いよ。言っておくけど、このゴーレムは今までのものとは違う。なんといっても、私が入っているのだからね』
「そのようですね……」
ネルメアは、笑っていた。それが、不気味である。
自嘲して笑っていると考えられない訳ではない。だが、その笑みには何か狙いがあるような気がしてならない。
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