115.無謀な戦い

「とにかく、騎士団は暗黒の魔女に敗北しました。やはり、彼女に対抗できるのは、私達しかいないようです」

「それは……」

「……これ以上、犠牲を出す訳にはいきません。私は、シャザームを倒しに行きます」


 メルティナは、真剣な顔でそう言ってきた。

 それは、決意に満ちた顔だ。彼女は、必ずシャザームと戦うだろう。今の顔は、そういう顔である。

 そして、私はそれを止めることができない。事実として、騎士団が敗北しているからだ。

 天賦の才を持つ暗黒の魔女には、同じく天賦の才を持つメルティナしか対抗できない。そういうことなのだろう。


「シャザームがどこにいるかは、騎士団がはっきりと示してくれています。すぐにでも、彼女と戦うことができます」

「すぐにって……」

「騎士団だって、ただでやられた訳ではありません。岩の巨人は、十二体いたそうですが、八体まで減らしてくれたようです。シャザームが余計なことをしない内に、彼女との決着をつけるべきだと思います」

「騎士団が四体しか減らせなかったのに、八体を倒せるの?」

「わかりません。でも、やるしかないのです」


 メルティナは、今にでもシャザームの元に駆け出していきそうな様子だった。

 彼女の言っていることが、理解できない訳ではない。あちらが立て直せていない内に襲撃をかける。それは、悪くないことだろう。

 だが、騎士団は岩の巨人を四体しか減らせなかった。いくらメルティナに秀でた才能があるといっても、流石に対抗できないのではないだろうか。


「騎士団に協力は仰げないの?」

「消耗している今、その協力を受け入れてもらえるでしょうか?」

「それは……」


 メルティナの力は、よく知っている。しかし、それでも、今回は危ないと思う。

 せめて騎士団と協力するべきだろう。残り八体を倒すためには、それが必要だ。

 もちろん、その間にシャザームは態勢を立て直すかもしれない。だが、それでもここはまだ待つべき時だ。

 勝算がないのに、彼女を行かせてはならない。私は、そう思ったのである。


「メルティナ、焦っては駄目だよ。その岩の巨人は、簡単に作ったり修復できたりするものなの?」

「それは……そう簡単ではないはずです」

「それなら、騎士団が再び襲撃できるようになるまで待とう。その方が、勝算は高いはずだよ」

「……確かに、そうかもしれません」


 私の説得に、メルティナは納得してくれたようだ。

 そのことに、私は安心する。ここで、彼女を止められなければ、大変なことになっていただろう。本当によかった。そう思いながら、私は肩の力を抜くのだった。

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