99.正しい形
「どう思いますか?」
「どう思うか?」
「ええ、その手紙に、私達は従うべきなのでしょうか?」
メルティナは、私にそんな質問を投げかけてきた。
彼女は、手紙に従うべきか迷っているようだ。今まで、自分で解決に当たってきたため、そう思うのだろう。
「メルティナ、基本的には従うべきだと思うよ。だって、この国のそういう機関がことにあたるんだから……」
「しかし……シャザームに対抗できるのでしょうか?」
「わからない……でも、流石に大丈夫なんじゃないかな? 魂を分けたら魔力も分かれる訳なんだから、残っているシャザームはそんなに強くないはずだし……」
「そう……ですよね」
私の言葉に、メルティナは不安そうに頷いた。どうやら、彼女はあまり納得していないようだ。
人生を二周目歩んでいる彼女は、いつも覚悟が決まっている。それは、すごいことであるとは思う。
ただ、なんでも自分で背負うのは、やめた方がいいのではないだろうか。せっかく、騎士団が解決してくれると言っているのに。
「メルティナ、ここはとりあえず騎士団に任せるべきだよ。あの暗黒の魔女との戦いをあなたがずっと引きずる必要なんてないはずだもん」
「シズカさん……そうですよね」
メルティナは、今度は明るい笑みを浮かべていた。その笑顔に、私は安心する。
彼女は、これまで充分頑張ってきた。そろそろ、休んでもいい時期だろう。
他の皆だってそうだ。ここにいるのは、ただの学生である。そんな人達が、いつまでも事件に振り回されるべきではないのだ。
「シズカさんの言う通り、今回は騎士団に任せることにします。キャロムさんやディゾール様と相談して、こちらが持っている情報を渡して、それで私達の役割は終わり。それで、いいんですよね?」
「うん、それでいいと思う」
メルティナの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
きっと、これでいいのだ。事件のことは騎士団に任せて、私達は学園生活を送る。学生として、それが一番正しい形だろう。
少し残念なのは、修行の成果を出せないことである。でも、強くなりたいと思う気持ちは変わっていない。これからも、ディゾール様の元で学びたいとは思っている。
恐らく、それでいいのだろう。この経験はきっといつか役に立つはずだ。例え、こちらの世界でなくとも。
「さて、もうそろそろ夕食の時間だよね? 食堂に向かおうか?」
「ええ、そうですね。そうしましょう」
私とメルティナは、手紙を置いて部屋から出て行く。
こうして、私達は暗黒の魔女の件を騎士団に任せることにしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます