98.届いた手紙

「さて、それでは入ってください」

「うん、お邪魔します」


 少し歩いて、私達はメルティナの部屋の前まで着いた。

 彼女に招かれて、私は部屋に入っていく。よく考えてみれば、私は彼女の部屋に初めて入る。彼女が私の部屋に来ることはあったが、逆はなかったのだ。


「ここが、メルティナの部屋……」

「あの……恥ずかしいので、あまり見ないでください」

「え? ああ、ごめんなさい」


 私は、メルティナの部屋に入って思わず声をあげてしまった。

 実の所、私はこの部屋を知っている。ゲームをやっている時に、この部屋は背景として出てきていたのだ。

 それが見られて、私は少し感動していた。ただ、彼女からしてみれば、部屋をじろじろと見られた形になるので、恥ずかしいだけだろう。


「でも、別に恥ずかしがるような部屋でもないと思うけど……」

「そ、そうですか?」

「うん、綺麗な部屋だし……」


 もちろんじろじろ見るのはよくないことだろう。だが、メルティナの部屋はとても綺麗である。別に恥ずかしがるようなものはないと思う。


「それで、話というのは何かな?」

「あ、その……実は、シズカさんと相談したいことがあるのです」

「相談したいこと……何かな?」


 世間話をするのも楽しくていいのだが、私は本題を聞くことにした。

 彼女が私の部屋に来る時は、大抵何か重要な話がある時だ。ということは、今回もそういうことなのだろう。


「実は、手紙が来たのです」

「手紙? これは……」


 メルティナは、一通の手紙を私に渡してきた。その手紙の宛名には、王国騎士団と書いてある。

 それは、この国を守る組織の名前だ。そんな組織から、メルティナの元に手紙が届くとは、どういうことなのだろうか。


「中身を見てもいいの?」

「ええ、もちろんです」


 私は、手紙の中身に目を通していく。すると、そこには例の事件のことなどが記されていた。

 どうやら、騎士団もきちんとシャザームのことを調べているようだ。恐らく、ディゾール様がドルキンスに取らせた記録が、彼らにそんな行動させたのだろう。


「……要するに、騎士団はこちらで調査するから、手出しは無用と言いたい訳なんだね?」

「ええ、そういうことだと思います」

「そっか……うん、まあ、考えてみれば、そうだよね」


 騎士団は、私達にこれ以上の調査はしないようにと釘を刺すためにこの手紙を送ってきたようである。

 それは、当然のことだ。本来なら、これは私達が動くようなことではない。

 学園の事件の時は、教師達が動いてくれないから、そうするしかなかった。だが、今回は違う。

 きちんとした機関が事件を調べるのだ。そこに、私達が介入するのは、正しいこととはいえないのだろう。

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