88.目覚めてからは
「……そういえば、アルフィアはあれからどうなったの? その辺りのことを、聞いてもいいかな?」
「ええ、構わないわよ」
そこで、私はアルフィアにそれを聞いておこうと思った。
この世界の現状は、聞いていたが、そちらに関してはそこまで聞いていなかった。
無事に皆の輪に入っている所を見て、大丈夫だとは理解している。しかし、そこに至るまで何があったのかは聞いておきたかったのだ。
「あなたと別れてから、私は目覚めたわ。周りには、見知った顔がいた。もっとも、数名を除いて、私が知っている人というには少し違ったみたいだけど……」
「そっか……そうだよね」
「まず気になったのは、自分がどうなったのかということだったわ。暗黒の魔女シャザームによって……私の記憶では、ファルーシャが私の魂を引き裂いたり再生したりする記憶があったから、どうして今自分がそこにいるのか、訳がわからなかったわ」
「そう……だったんだ。ごめんね、嫌なことを思い出させてしまったかな?」
「……別に、気にしなくていいわよ」
アルフィアの言葉を聞いて、私は少し悲しくなった。
シャザームの実験によって、彼女はその魂を弄ばれた。その記憶があるというのは、なんとも苦しいことだろう。
「それで……私は、事情を聞こうと思ったのよ。でも、最初に目に入ったメルティナのことが気になって、それどころではなくなったの。シャザームが自分を利用していたことは理解していたし、何よりあなたの言葉があったから……」
「私の言葉……」
「だから、私は訳もわからないまま言ったのよ。ごめんなさいと……」
アルフィアが最初に放った言葉は、謝罪の言葉だったようだ。それは、メルティナからしてみれば、驚きのことだっただろう。
ただ、彼女から謝罪されて、メルティナも悪くは思わなかったはずだ。きっと、彼女ならその謝罪に笑顔を見せただろう。
「そしたら、メルティナは言ってくれたわ。もう二度とそんなことはしないと約束するなら、許しますと……優しすぎるわよね?」
「うん、そうだよね……」
アルフィアは、悲しそうに笑っていた。彼女からしてみれば、怒りをぶつけられる方が楽だったのだろう。
罪を自覚して反省している今の彼女は、罰を受けたいと思っているはずだ。その表情から、それが読み取れる。
「それから事情を聞いて、あなたのことを知ったわ。驚いたけど……でも、改めてわかった。あなたの言っていることは、全て本当だということが……」
「……うん」
「私の体、預かってくれていてありがとう。おかげさまで、こうやって元気でいられるわ」
「……気にしないで。そんなことより、勝手に体を使ってごめんね」
「それこそ、気にしないでいいことよ」
アルフィアは、私に対して明るい笑顔を見せてくれた。その表情を見て、私は思う。なんだか、安心すると。
きっと、あの体に入っていたことによって、私は彼女をもう一人の自分であるように思っているのだろう。だからこそ、彼女のことで一喜一憂するのではないだろうか。
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