17.彼女を知る者
「確か、こっちだったわよね……」
私は、校舎裏に続く戸を開いた。恐らく、ゲームではこの辺りでイベントが起こっていたはずである。
「平民の癖に、随分と調子に乗っているようね……」
「アルフィア様やバルクド様と親しくするなんて、許されることではないわよ」
私の耳に、すぐに声が聞こえてきた。その話している内容に、私は覚えがある。
それは、ゲーム内でアルフィアが言っていたことによく似ているのだ。平民の癖に調子に乗って、バルクド様と親しくして。彼女は、そんなことを言っていたはずである。
「これ以上、調子に乗るようなら、私達も容赦しないわよ」
「貴族の権力があれば、あなたなんか簡単に潰せるんだから……」
私は、校舎裏の状況を確認した。たくさんの女生徒に、メルティナが囲まれている。やはり、彼女は令嬢達に虐められていたようだ。
私という主犯格が消えても、それは変わらなかったようである。新しい主犯格が生まれただけということなのかもしれない。
「……あなた達、何をしているの!」
「なっ……!」
とりあえず、私は姿を現すことにした。色々と考えたいことはあるが、それは後だ。まずは、メルティナを助けるべきである。
「これは、どういうことなのかしら?」
「……いえ、少し彼女と話をしていただけですわ」
「ええ、そうですとも」
「そういう風には、見えなかったのだけれど?」
「本当に、話していただけですわ」
令嬢達は、自分達の犯行をまったく認めなかった。それは、ゲームでバルクド様が現れた時と同じだ。
もちろん、それは当たり前のことである。犯行を認めていいことはない。そんなことをするはずはないのだ。
「さて、私達は、これで失礼させていただきます。それでは」
「なっ……」
令嬢達は、それだけ言って速足で去って行った。追いかけようかとも思ったが、メルティナの方が気になるため、それはやめておく。
「メルティナ、大丈夫? 怪我なんかは、していないかしら?」
「……はい、大丈夫です」
私は、メルティナに話しかけてみた。彼女の反応は、少し淡白だ。恐らく、今の出来事の衝撃が、まだ抜けていないのだろう。
それは、当たり前のことだ。あんな大勢に囲まれて、平静でいられる訳はない。
「……あの、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「あら? 何かしら?」
「……あなたは、一体何者なんですか?」
「え?」
メルティナの言葉に、私は困惑する。その質問の意図が、よくわからないからだ。
だが、私は気づいた。彼女の視線に、何やら只ならぬものが宿っていることに。
「……私の知っているアルフィア様は、あなたのような人間ではありませんでした。高慢で平民を見下す貴族……先程、私に言い寄ってきた人達の側の人間だったはずです」
「なっ……!」
私は驚いた。メルティナが言っているのは、ゲームの中でのアルフィアだったからだ。
どうして彼女がそれを知っているのだろうか。私は、かなり困惑していた。こんなことは、初めてだったからだ。
もしかして、彼女にも前世の記憶があるのだろうか。『Magical stories』をプレイしていて、アルフィアを知っていた。そういうことなのだろうか。
私自身がそうなのだから、他にそういう人がいてもおかしくはない。今までそんな人とは会ったことがなかったが、この学園で、よりにもよってメルティナがそうだったとでもいうのだろうか。
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