第340話「サンドバッグ」
けたたましい音をたて、シェイプ王城の高層階、その窓ガラスが内側から破られた。
窓を破って空中に身を躍らせたのはレアだ。
その後をふわふわと霧が追いかけ、レアの傍まで来ると実体化してブランの姿になった。
「──もっとスマートに移動しなきゃ」
「うるさいな。窓ガラスなんて何の障害にもならないんだから、ぶち破って通り抜けた方が早いし合理的でしょう」
ローブについたガラスの破片を手で払って落とす。
先ほどまでレアたちがいた執務室に、ガラスの割れる音を聞きつけて騎士だか衛兵だかが廊下から入ってきたのが見える。
戦力の大半をペアレ王国に差し向けているのだろう今、王都に残されている騎士はわずかであるはずだ。
そのわずかな騎士を、街の守りではなく城の警備に使っているとは大した為政者である。
もっとも、この城に集まっているのだろう貴族たちが死亡してしまえば遠征軍も全滅してしまうし、そうせざるを得ないのは確かなのだが。
シェイプ王はしかし、そんな騎士たちは無視して、割られた窓からレアたちを追ってきた。
「逃げようとしても無駄だ! 貴様らがどういうつもりでこの俺に賢者の石などを渡したのかはわからんが、実に愚かな選択だったな!
精霊王という高みにさえ上ってしまえば、貴様らごとき敵ではないわ!」
霧をすり抜けた月明かりがシェイプ王の血走った目を照らし出す。
大部分が髭に覆われているため見づらいが、頬も紅潮しているようだ。
鼻息も荒い。これは逆に髭のおかげでよく分かった。肩が上下するのにあわせて髭がふよふよなびいている。
「完全にキマっちゃってる顔してるんだけど」
「まあ、だいたいいつものことだよ。みんなこうなる」
「え? わたしはそんなことなかったけどな」
「えっ」
耐性が出来るのか、ブランが真祖と化した時はそれほどでもなかったが、その前にアルケム・エクストラクタで能力値を軒並み上げた時などは「負ける気がしねー!」とか言っていたような気がするのだが。
「……まあいいや。さて、どうしようかな」
「ここはわたしが! ──と言いたいとこだけど」
「とこだけど?」
「そういえばわたし、レアちゃんがちゃんと戦ってるとこあんまり見たことないんだよね。どういう感じなの? 本来は魔法が得意なんだっけ」
ブランと共闘したというと、初めてあのラコリーヌの丘で出会った時、それから前回イベントの過去大天使戦だろうか。
初対面の時は敵との実力差があり過ぎてまともな戦闘とも呼べないものだったし、大天使戦にしてもレアはタンクに徹していた。
確かに、戦闘らしい戦闘を見せた事は無かったかもしれない。
ブラン自身もかなり強くなってきている。自分と他人との戦闘力の比較に興味が出てきたのだろう。
「わたしも真祖になったばっかだし、いろいろ試してはいるんだけど、いまいちこれでいいのかどうかわかんない事とかもあるしさ。
よかったら、お手本見せてくれない? ほら、先輩として」
先輩。
なるほど悪くない響きだ。
「……なるほど。先輩として、か」
「そうそう、ひとつよろしくおなしゃすよ、レア先輩」
「むふん」
そこまで言われてしまっては、見せないわけにはいかないだろう。
相手にとって不足しかないが、一応種族の上では同ランクの相手であるし、そこらの雑魚より多少はマシだ。
「じゃあ、そこで見ているといい。先輩の戦いぶりをね!」
「別れの挨拶は終わったか? 安心しろ、すぐに2人まとめてあの世に送ってやるわ」
がはは、と新精霊王が笑う。
執務室にいた頃は、憔悴の跡がありながらも、どこか高貴な雰囲気もあったものだが、今はそれらはかけらもない。
憔悴ぶりが払拭されたのはいいことなのだろうが、一緒に高貴さも失ってしまったというのは不幸な事だ。
このままにしておくのも憐れであるため、一刻も早く楽にしてやりたいが、戦いぶりを見せる約束をしている手前そうもいかない。
彼には悪いが、レアの戦闘技術をデモンストレーションするためのサンドバッグになってもらう。
角や翅を惜しげもなく晒している相手の姿に、なんとなくレアも対抗したくなり、ローブを脱いでインベントリに仕舞った。
「『解放:角』、『解放:翼』、『解放:金剛鋼』。そして『識翼結界』」
レアの頭部から角が現れ、腰からも6枚の翼が広がった。そして周囲に舞い散る羽。いずれも漆黒だ。
知覚範囲が広がり、いくつものスキルがアクティブになっていくのが感じられる。
かなり長い間これらの特性はオフのままだったが、こうして解放してみると、素晴らしく気分がいい。錯覚だろうが、体が軽くなったような気さえする。
「──ほう、こうして見てみれば、かなりの美しさだな。
しかし、所詮は上辺だけだ。貴様には決定的に足りないものがある」
あの高揚感に支配された状態ではどうせロクな話はしないだろうとスルーするつもりだったが、足りないものという言い方は少し引っかかった。
それが何かの役に立つなら、聞いておいても損はない。
「それは筋肉だ! 貴様には圧倒的に筋肉が足りない!」
前言撤回だ。聞いて損した。
「そのような細腕でこの俺にダメージを与えることなど出来ようはずもない! どこからでもかかってくるがいい!」
先手は譲ってくれるらしい。
本来レアが得意としているのは相手の力を利用したカウンターであり、自分から攻撃するのは専門ではないのだが、それはあくまでリアルの話だ。
この場で言えば、相手よりも自分の方が数値的にはかなり高い。体格で自分をはるかに上回る相手に、力で勝っているという有り得ない前提条件だ。もとより、普段得意な技は使いようがない。
それにブランが見たいのはおそらくレアの攻撃する姿だろう。
例の霧関係のスキルを考えれば、防御性能というか、生存性能に関してはブランはすでにレアよりも上である可能性がある。回避や防御に関するメソッドもレアとは全く違うものになるだろうし、そちらは見せてもあまり益がない。
それは攻撃方法についても同様だが、攻撃はスキルの組み合わせ次第でさまざまな手段をとる事が出来る。やり方によっては再現に近い事も可能かもしれないし、防御よりは参考になるはずだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。まずは……。『解放:糸』、『斬糸』」
指先から鋼糸を出し、新精霊王へ叩きつける。
このスキルはいつかライラに言われた通り、格下相手であれば絶大な威力を発揮するが、同格以上が相手では大した効果は見込めない。相手の防御がアダマスの硬度を上回っている場合、スキル『斬糸』の補正値とレア自身の能力値だけがダメージを左右する事になる。
初手でこれをぶつけたのは相手の防御性能をある程度測るためだ。数値的なものは『鑑定』により見えているが、これまで基本的にこのスキルでは格下のモノしか斬ったことがないため、具体的にその数値がどのくらいの硬度なのかは実際に斬ってみなければわからない。
「ぬおっ!? なんだこれは!」
躱しきるほどではないが、明らかに迫る糸に対応した動きを見せている。
新精霊王には自分を斬りつける糸が見えたようだ。
ウェインや他のプレイヤーたちには全く見えていなかったらしい事を思えば、それだけでもこの王の能力値の高さがわかる。
見えるという事は、努力次第で回避できるという事であり、このクラスの能力値を持った者が相手では、やはり『斬糸』をメインに据えて戦闘を組み立てるのはやめた方がいいだろう。
ただ、初見という事もあってか新精霊王は回避に失敗し、糸にその身を切り裂かれていた。
さすがにウェインのように腕ごと落ちたりはしていないが、血を流させる程度には傷を付けることに成功している。
「──くっ、だが! あくまで俺の皮一枚を切り裂いたに過ぎん! その程度の細さでは俺のこの筋肉を断つことなど!」
こんなキャラだっただろうか。
いくら高揚していると言っても、まったくの別人になるなど考えられない。もともとあった気質が表層化しているだけだと思われるが、となるとシェイプ王はもともとこういう人物だったという事だろうか。
ディアスの話では前精霊王も筋肉が好きだったようだし、ドワーフ出身の貴族というのは皆そういう傾向があるのかもしれない。あるいは精霊王だからなのか。だとしたら魔王にしておいてよかったと言わざるを得ない。
「まあ、糸は牽制というか、文字通り小手調べだからね。次はこれだ。『イヴィルスマイト』」
ブランにもわかりやすいよう、あえて『魔眼』ではなく発動ワードで魔法を放った。
放たれた闇は一直線に新精霊王に向かう。的が大きいため外しようがない。
「ぐぬう!」
これも見えてはいるためか、回避しようと身体を捻ったようだが、その場で半回転するに留まった。結界により強化された闇は新精霊王の肩に突き刺さり、LPを削る。魔王の放つ『暗黒魔法』だ。精霊王にとってはさぞ痛かろう。
回避行動がその場での回転に留まったのは、おそらく足場がないためだ。『飛翔』で浮遊している状態で思い通りに身体を動かすには慣れが必要だ。
しかしこれは、地上での戦闘であれば躱されていた可能性が高いという事でもある。肉体を鍛えていたらしい事から見ても、戦闘は素人というわけでもないらしい。
「──ち、躱せんかったか! だが、この程度のダメージなど!
見よ! これが精霊王の力だ! 月よ、我が意に応えよ! 『霊術:月』!」
精霊王が叫ぶと、あたりに降り注ぐ月明かりがその翅に収束されていく。
周囲が月明かりで満たされているというのは普通、意識して分かることではない。
それがこうして一ヶ所に集められ、それ以外の場所から急激に失われると、これまでいかに自分が月の光に照らされていたのかが逆に良く分かる。
端的に言えば精霊王だけがより明るくなり、その周辺以外が暗くなっただけだが、その過程も実に神秘的だった。
すると、その光を翅に集めた精霊王の肩の傷がみるみるうちに治っていく。
どうやら『霊術:月』とやらいうスキルは自己修復らしい。回復量だけ見れば『
「……いや、違うな。これはもしかして、MPも回復している、のか?」
ほとんどノーコストでLPとMPを回復させるとは、とんでもないスキルだ。ぶっ壊れにも程がある。
「そして食らえい! 『霊術:風』!」
『鑑定』で見た限り、この『霊術』のツリーには『霊術』しかない。
つまり、月とか風とか言っているが、それはスキルの発動後に効果を選択しているだけであり、スキルそのものは同一のものを発動しているという事になる。その選択可能な効果までは外からの『鑑定』ではわからなかったが、ひとつだけ確かな事もある。それはこのスキルにはクールタイムが無いらしいことだ。
精霊王の発動した『霊術:風』は範囲攻撃のようで、不可視のカマイタチのようなものが無数にレアを襲った。
やっかいなことにこれらにはマナが通っておらず、『魔眼』でも見えない。
名前からして風を利用した真空波のようなものなのだろうが、範囲攻撃であるらしい事も考えれば、撃たれてしまえば回避はほぼ不可能だ。
しかし、それも晴れた日であればの話だ。
現在シェイプ王都は、その全域がブランの生みだした濃霧に覆われている。
夜ではあるが、霧は月明かりでほのかに浮いて見えている。それを切り裂いて飛んでくるカマイタチの軌道など手に取るように分かる。
レアにとっては、見えている以上容易に回避できる程度の攻撃でしかなかったが、そのダメージも見てみたかったため敢えて攻撃を受けることにした。
といってもまともに食らったわけではない。
そもそもレアにダメージを通そうと思えば、その前に4枚からなる不可視の盾を突破しなければならない。
盾を前面に集め、すべてのカマイタチを『魔の盾』で受けた。この盾の防御力はレアのそれから防具の分を引いた数値だ。ダメージを計測するのに適している。
ざくざくと、といっても音がなったわけではないが、そういうイメージを伴ってカマイタチが『魔の盾』を穿った。
いつかの大天使の群れによる集中攻撃と比べればかすり傷のようなものだが、たった1人による攻撃でこのダメージだと考えるなら大したものだ。
「──見たことないスキルだし、それが精霊王の固有のスキルかな。クールタイムは無し、消費も低い、でも効果は高め。けっこう、いやかなりズルいなそれ」
「まったく効いていないだと!? 生意気な……!」
精霊王は気持ち後退し、レアから距離をとった。
かかってくるがいい、とか言っておきながらすかさず反撃をしてきたり、こうして警戒して距離をとったりしているあたり、転生直後と比べるとかなり冷静になっている。『斬糸』や『イヴィルスマイト』で負わせたダメージによって少し目が覚めてきたらしい。
「──その『霊術』っていうの、もしかしてあれじゃない? 環境に左右されるスキルとかなんじゃない?
例えば月が出てないとさっきの回復は出来ないとか、風が通るような開けた場所じゃないと今のカマイタチは飛ばせないとか」
ブランの言葉になるほど、と納得した。
そういった制約があるのだとしたら、この性能の高さも理解できる。
ブラン自身も天候が濃霧でなければ使えないスキルなどを持っている。それで気がついたのだろう。
改めて『鑑定』してみたが、この他には目立ったスキルはなさそうだ。
特性や能力値も含め、『霊術』以外はデータ的にはレアの劣化版に過ぎない。
「……どうやら、貴様は防御に長けているようだな。貴様らのその余裕はそこから来ておるのか」
ことさらに防御が得意というわけでもないが、レアもブランも死ににくいのは間違いない。
そういうつもりだったわけではないが、『霊術』の性能についてはその一端を見る事が出来た。
これ以上の引き出しは無さそうだし、生かしておいてもあまり意味はない。
もともと、ブランには攻撃する姿を見せてやるつもりだったのだ。
「魔法はまあ、相手の魔法を相殺狙いで狙撃するとかってテクニックもあるけど、相手次第になるしまた今度ね。それ以外だったら、基本的に飽和攻撃で叩き潰すのが早い」
「なるほど! 何も考えずに魔法ばらまくのは得意だよ!」
「だろうね。じゃあ、そっちは置いておいて、ちょっと近接もやっておこうか」
レアは少しだけ翼を広げた。
実戦ではやったことのない動きであるため、うまく制御できるかわからないが、アクティブスキルを使いこなせば形にはなるだろう。
その感覚を覚えておき、次回以降はスキル無しで再現すればいい。
なにせこの手の練習には相手が必要だ。そうそうやれる機会がない。
「ダメージを受けないのをいいことに、呑気にお喋りか? だが守っているばかりでは──何!?」
『天駆』と『高速飛翔』を駆使し、空中で出せる最高速度で精霊王に肉薄した。
測定した事はないが、体感的には『縮地』に匹敵するスピードだ。そして『縮地』と違い動作までパッケージングされたスキルではないため、移動中も移動後も自在に動く事が出来る。
「『翼撃』、『ストレイトブロウ』」
「がっは!」
まずは右の最上段の翼で一撃を加える。
拳に見立てた翼をまっすぐ伸ばし、精霊王を撥ね飛ばすように殴りぬく。
「『翼撃』、『スクレイプブロウ』」
「げぶっ!」
撥ね飛ばした精霊王を、今度は側面からの抉りこむようなフックで攻撃する。
殴られた精霊王はその場でくるくると回転した。
「『翼撃』、『シザーズブロウ』」
「あがっ!」
そして3対の翼で両側から挟み突きをお見舞いし、回転を止めてやる。
精霊王の身体が空中で静止したところで、トドメのスキルを発動した。
「『翼撃』! 『アドバンスラッシュ』!」
六つの翼それぞれが拳を握り込み、秒間に何発なのかも数えられないほどのペースで打撃を叩きこむ。
翼を握りこんで拳にするとはまるでコミックだが、レアの翼は指先の関節が人のそれに似ているのか、普通の鳥の翼よりも頑丈で柔軟な構造をしている。この構造のおかげで、疑似的な形ではあるが拳として運用が可能だ。あるいは『翼撃』を取得しているために可能になっていることなのかもしれない。
そのせいか翼全体が若干重いような気もするが、高い能力値によってほとんど気にならない。また、実際にこの翼で羽ばたいて飛ぶわけでもないため問題ない。
『翼撃』と『素手』アクティブスキルの組み合わせは初めて使うが、なかなかの威力を持っているようだ。
精霊王の生命の輝きが見る間に失われていく。
魔王の翼長は長い。最大まで伸ばせば3メートルはある。
これは目の前の精霊王や大天使も同じだ。
これほどのリーチで拳を、しかも6本の腕として叩きこめるのであれば、その攻撃力は計り知れない。
しかもこの翼、現在は特性によってアダマスの硬さをも持っている。
打撃属性の物理攻撃としてはかなりのダメージレートと言えるだろう。
「──あ、しまった」
『アドバンスラッシュ』は一度発動すると、相手が死ぬまで止まることはない。
手加減するつもりなら途中でキャンセルしてやる必要がある。
殴るのをやめたために落ちてきた精霊王の髭を掴み、生死を確かめた。
『真眼』による視界では、国王にはなんの光も残っていない。『魔眼』においてもただのオブジェクトとして見えている。『鑑定』しても表示されるのは「精霊王の遺体 状態:劣」だ。手遅れだった。
キャンセルするのが遅すぎた。キャンセルしなくても止まっていただろうタイミングだったらしい。
「あー……。まあ、やっちゃったものはしょうがないな……」
このところ、調子に乗るNPCばかり目にしてきたせいか、レアにも少しそれが伝染してしまったようだ。
「すっ……げ! めちゃかっこよかったよ! でも多分今の攻撃はわたしには通じないぜ! 『霧散化』すればあらゆる物理攻撃はスルー出来るからね!」
レアの真似なのかなんなのか、拙いシャドーボクシングをしながらブランが近付いてきた。
生意気だが、可愛くもある。後輩というのはたぶんそういうものなのだろう。
「参考になったかな」
「いや、全然!」
──全然……。
「でも、他の人の戦い方とかはあんまり気にしてもしょうがなさそうって事だけはわかったよ! レアちゃんみたいにはやれなくても、このおっさんくらいならわたしでも多分完封できた気がするし」
相性の問題もあるだろうが、確かにブランなら余裕を持って勝てるだろう。
転生したての災厄級は、本人が思っているほど強くはないということはレアが誰より知っている。
序盤は油断せずに格下相手に着実に経験値を稼ぎ、足場を固めていくことが重要だ。
もっとも、この「油断をしない」というのが一番難しいことでもあるのだが。
「あ、部屋に様子見に来てた人たちも倒れてるね。やっぱこのおっさんの眷属だったんだ」
「ということは、ペアレに侵攻している部隊の何割かも同じように死亡してしまったってことでもあるね……。他の貴族の分もいるだろうし、プレイヤーもいるからいきなり全滅ってことはないだろうけど。なんとか調整して、予定を前倒しするしかないな。
ブラン、悪いんだけどさ、この街の霧、消しておいてくれないかな。確かそれが王都に共和国軍が攻め込むフラグになってたよね」
国王が居なくなってしまったのなら、なんとか共和国の行動を制限していても仕方ない。
「うん! じゃあ消しとくね」
ブランが言うが早いか、周辺から不自然な早さで霧が薄まっていく。
霧が晴れた夜空は思っていたより明るかった。どうやら満月らしい。だからこそ精霊王も、霧の中でも『霊術:月』とやらが発動できたのかも知れない。
「こんな時間だけど、いったんペアレの様子も見ておきたいし、そろそろ行くよ。
ブラン、共和国軍が王都に来る前に、城の中の本を全部盗みだしておいてくれないか。アザレアたちにやらせてもいいからさ。確か、インベントリについてはもう教育してあるんだよね」
想定外の事もあったが、それ以上に得たものも大きかった。
手を振るブランに別れを告げ、レアはシェイプを後にした。もちろんその手にはシェイプ王の遺体を持っている。
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