第127話「ダンログ評価☆3」
「素材を得ることもできただろうし、経験値もたぶんプラスだったろうし、彼らにとってはなかなかいい初ダンジョンだったと言えるんじゃないかな。
敵が強くて攻略できないということではなく、脱出できないことが問題だと認識してくれたのなら、また挑戦してくれるだろう。あまり強いエネミーで詰んでしまうようだと、どこかで経験値稼ぎでもして強くなるまで再挑戦はしてくれないかもしれないからね」
具体的に脱出方法や迷路対策が浮かばなかったとしても、そういう傾向のダンジョンだとわかっているなら、浅層で狩りをしてすぐに脱出するなどのやり方でちまちま稼ぐプレイヤーも増えてくるかもしれない。
そうしたプレイヤーをいかにうまく奥へと誘導するかも腕の見せ所といえるが、宝箱的なアイテムを奥の方へ用意するなど、やり方はいろいろある。
ある程度の危険を覚悟しなければ成果が得られないのは何でも同じだし、それはプレイヤーたちもわかっているだろう。
「他のパーティもだいたい同じようなものかな」
急場のマッチングパーティでも先の彼らと同様に、それなりの成果を上げた後退場している。
すでにSNSに注意喚起がされていたため、必要以上に警戒しているパーティもちらほら出てきていたが、そういうパーティにはグレータータランテラをけしかけたりはせず、そのままお帰りいただいたりもした。
入ったパーティは例外なく全滅するという噂にでもなったら問題だし、調子に乗ったら全滅する、という程度の認識が一番都合がいい。
とはいえこちらとしても使用料金はいただきたいので、たまに不意を突いて1人か2人はキルしたりしている。
「実装直後のコンテンツとしては順調な滑り出しと言っていいんじゃないかな」
しかしサービス開始直後であるし、顧客の反応というのは重要だ。
***
【旧ヒルス】ダンジョン攻略報告スレ【その他】
1:蔵灰汁
地域ごとのダンジョン攻略目的の情報共有スレ
他の地域は
【オーラル】ダンジョン攻略報告スレ
【ペアレ】ダンジョン攻略報告スレ
【シェイプ】ダンジョン攻略報告スレ
【ポートリー】ダンジョン攻略報告スレ
【ウェルス】ダンジョン攻略報告スレ
にどうぞ
2:マニホ
>>1おつ
3:タット
旧ヒルスって誰かどっかアタックしてるの?
4:ノーギス
>>3
☆1のアルトリーヴァって街にいます。
今から入ります。
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122:ノーギス
☆1アルトリーヴァ
ちょっとだけ入ってみましたが、ゾンビしかいないです。ただ数だけは多いので、囲まれると死ぬと思います。
それ以外なんにもないです。街にゾンビがいるだけ。
昼間は家の中にいるみたいで、建物の中に入らなければ探索し放題ですけど、探索しても別に普通の街なので特に意味はなかったです。
また夜になったらどうなるのかわかったら書き込みます。
123:アロンソン
>>122
報告おつかれ
ボスみたいなやつは夜になったら出てくるのかな
124:ノーギス
一番大きな建物は怖かったので入っていません。
他にもプレイヤーたくさんいたので、入った人もいるかもしれませんが、たぶんほとんどはぼくと同じく始めたばかりの人だと思うので……
125:アロンソン
別に報告は義務じゃないし、やれそうだったらやればいいし、それで得た情報も流していいと判断したならここに書き込めばいい
126:クランプ
そうだな
たまに情報の独占ガーとか言い出すやついるけど、だったら自分で行けばいいだろってだけの話だしな
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231:ホワイト・シーウィード
旧ヒルスのダンジョン報告はここでいいのか
☆3のラコリーヌについて報告というか、警告だ
232:アロンソン
警告とは穏やかじゃないな
なんかあったのか
233:ホワイト・シーウィード
ラコリーヌの森は☆3にしてはモンスターはそう強くはないと思う。
これは他の報告なんかを見て比較しただけだから正確なところはわからんが、たぶん間違ってない
でも他のダンジョンと違って、この森はルートが常に変わる
それで脱出できなくなって、最後は囲まれてやられた
この森に行くときは注意してくれ
234:アロンソン
ランダムダンジョンなんてもんまであるのか
235:ホワイト・シーウィード
>>234
そんな生易しいもんじゃない
言い方が悪かったかもしれん
入るたびに変わるんじゃなくて、常に変わってるんだ
侵入したルートで戻ろうとしたら、道がなくなってたし、景色もがらりと変わってた
木に付けた目印も消えてたし、道中放置した魔物の死体も無くなってた
森の中はずっと枝が揺れるような音がしていて周囲の状況がつかみづらいし、太陽もはっきり見えないから方角もわからなくなる
236:クランプ
迷いの森って感じか
まあダンジョンだし、そういうのもあるのか
237:タット
でも他のところでそんなの聞いたこともないし、運営も特別に力入れてんのかな
確かもともと街があったところにいきなり森ができたんだろ?
もしその森をクリアできれば、なんかのカバーストーリーみたいなのもわかるかもしれんな
238:マニホ
なるほどダンジョンごとのカバーストーリーか!
そりゃ熱いな
狙ってみようかな
239:丈夫ではがれにくい
災厄といい、国家滅亡といい、高難易度のダンジョンといい、そのランダムダンジョンといい
ヒルス王国ってなんか恵まれてない?
俺もヒルスに活動地域移そうかな
240:サーモス
プレイヤーにとっては、だけどね
NPCにしてみたら、国家滅亡したのに恵まれてるとか言われたらキレそう
***
「悪くない反応じゃないか。
もっとヒルスの……ああ、旧ヒルスの方へたくさんプレイヤーが引っ越ししてきてくれれば、わたしの懐も潤うというものだ」
ラコリーヌはいいとして、最初の方に少し出ていたアルトリーヴァというダンジョンは確かブランのエリアだ。
特に何かしたなどの話は聞いていないため、おそらく街中の住民をゾンビに変え、そのまま放置しているのだろう。もしかしたら忘れている可能性すらある。
しかしそのすべてはブランの眷属であるはずだし、倒されても1時間でリスポーンする。初心者が経験を得るにはちょうどいいフィールドと言えるだろう。
人型のモンスターを倒すことに抵抗がないならばだが。
「運営の意図したものはもしかしてブランのような放置ダンジョンなのかな……。まあいいや、わたしには向かないし」
弱いアリやゾンビだけを集めたエリアというのも作れないことはないが、場所がない。
「なにもない荒野にいきなりトレントの森を作って、そこにアリを放したりしたら領域として認識されるのかな?」
しかし実際に「魔物の領域」などと言っているのは人類側のNPCだけであり、システム的にそういう区分けがされているわけではない。その魔物の領域の中にはいくつかのセーフティエリアがあることもあるが、こちらはNPCには関係がない。
「どうせ今回のアプデから、近くに転移先が設定された領域の内部にはセーフティエリアは無くなったわけだし、気にせずに作ってしまえばいいか」
王都やラコリーヌなど、レアの支配領域に接している転移ポイントのすぐ側にそういう低難易度の森を作ってやれば、初心者から中級者、果ては上級者まで幅広く利用できる転移ポイントとして人気が出るかもしれない。
「試すだけ試しておこう。宣伝する手段は……ちょっと思いつかないが、まぁそのうち誰かが気づくだろう」
〈では手配しておきましょう〉
「よろしく頼むよ」
スガルに丸投げすることにした。
そうこうしているうちにも、続々とプレイヤーたちはラコリーヌへ集まってきている。
どうやらSNSの、ランダムダンジョンやカバーストーリーとかいう妄言が人を集めているようだ。
丘を覆うほどの街を、さらに全て覆い尽くして余りある森だ。よほど突き抜けた強さのプレイヤーでも居ない限りは十分に対応できる。
「なにか、視覚的に幻惑できるような手段もあるといいな。霧とか。ブランのスキルは吸血鬼専用のものだったかな?
吸血鬼ルートの転生ってどうすればいいんだろう。
わたしの配下のゾンビからだと、ワイトとかレヴナントとか、あるいはスケルトンとかあの方面にしか進まなさそうなんだけど」
やはり吸血鬼の『使役』を一度は受けるとか、そういうトリガーが必要なのかもしれない。
しかしどちらにしても森はほとんどがトレントで構成されている。アンデッドとは相性が悪い。
「──おや? こいつは見たことがあるな」
オミナス君の視界を通して、あるエルフの女が見えた。
「見たことがあるということは、おそらく例のレイドパーティのメンバーだったということだな? ならばぜひ、直接遊んでやりたいところだが。
……わざわざラコリーヌまで出ていって相手をするというのはリスクが大きいな。わたしが王都とラコリーヌを行き来できたり、ラコリーヌの様子を監視できるという事実に気づく者でも現れたら困る」
レイドボスとはそういうものだと思ってくれているうちはいいが、そうではないと誰かが感づいたら一気に面倒が増える。
すでにレア同様にそうしたスキルに気がついている者ならば、今更わざわざ吹聴したりはすまいが、そんなものは無いと思っていたのに実はあったという事に気づいた者なら賢しげに自説を披露するだろう。
〈でしたら、頃合いを見てクイーンアラクネアをけしかけましょう。我らがボスに土を付けるくらいですし、奴は上級プレイヤーなのでしょう? ある程度の実力者にはそれなりのボスが出てくるギミックがある、と思われる分には問題ないかと〉
悪くない案だ。
もとより生きて帰すつもりはない。レアを倒して得たであろう経験値を少しでも返してもらう。
グレータータランテラたちで倒せるような者でもないだろうが、クイーンアラクネアなら勝算は十分だ。念の為にクイーンビートルやクイーンベスパイドも近くに控えさせておけばまず始末できるだろう。
「そうしよう。トレントたちも使って全力でキルしてやりたいところだが……。迷路のオブジェクトだと思われているものが魔物だと知られてしまうのはマズいしね。蟲たちだけで片付けてやれ」
〈了解しました〉
トレントという魔物がこの周辺にしかいないということもあるまいし、どうせいつかは気づかれる。
そうなったら周囲の殆どが魔物という狩効率がずば抜けて良いダンジョンになるだけだし、実のところ言うほどデメリットはない。
せっかくランダムダンジョンなどと勘違いをしてくれているのだし、ならばそのままのほうが話題性があるだろうという程度のことでしかない。
自分の手を下す事ができないのは残念だが、久しぶりのリベンジとなりそうだ。
実際にクイーンアラクネアと戦闘に入ったら、視界はオミナス君ではなくクイーンアラクネアに移したほうがより臨場感を得られるかもしれない。
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