第98話「魔王軍四天王」
〈街の制圧おわったー! あ、こんばんわ! 今良かった?〉
〈おめでとう! お疲れ様。無事に済んだようで何よりだよ〉
〈レアちゃんのおかげだよ! あ、おかげっすよ! 剣崎さんだっけ? 超強いね! 敬語になっちゃうレベル!〉
〈役に立ったようで良かった〉
レアの方も、今は一段落ついている。
問題ないようならブランの元へ『術者召喚』で飛び、直接話してもいいだろう。それに絡んで、『召喚』系スキルの有用性について解説してやりたいところでもある。
すでに『使役』を取得しており、また協力体制を敷いているプレイヤーであることだし、『召喚』『死霊』『調教』に関する各種使えるスキルは教えておいて損はないだろう。
〈今からそっちに行ってもいいかな。色々話したいこともあるし〉
〈全然おっけー! でも遠いよ? 多分走っても半日くらいかかるよ〉
あのあと半日も走ったのか。
途中SNSについての情報もくれたくらいにはよそ見していたようだし、実際に走っていたのはあのスパルトイたちだろうが。
〈大丈夫。一瞬で行くから〉
〈そんなーまたまた……〉
*
「──といった具合に、『召喚』や『調教』ツリーには有用なスキルが多くあるんだよ。
それと、そのルートから『使役』を得たのではないのなら、『使役』があった専用のツリーがあったと思うんだけど、そちらの方も伸ばしていけば類似したスキルがあるかもしれないね。
それらのスキルはどうやら効果が重複するようだし、経験値が残っているなら積極的に試してみるといいよ」
「ふむふむ……。いやーでもまさか、本当に一瞬でこられるとは……。てっきりリップサービスかと」
「いや、わたしあんまりリップサービスとか得意じゃないからね」
皮肉でよければその限りでもないが。
「それより。けっこう建物とかはそのまま残してあるんだね。ここ再利用するの?」
見れば街の住民だった者たちはゾンビとなって徘徊している。
レアの王都のようにプレイヤーホイホイとして利用するつもりならば、今のままでは戦力的に若干不安だ。
「再利用するってほどのことは考えてないけど。せっかく滅ぼしたんだし、わたしのものーって感じで全部眷属で埋めとこうかなってくらい」
「そうなんだ。SNSなんかを見てた限りだと、もうここの隣の街がふたつ、滅ぼされてるって話はプレイヤーたちにも知られてるみたいだし、新たな狩り場としてイベント期間中に稼ごうとするプレイヤーがやってくることもあるかもしれないんだよね」
これは昼にケリーから話を聞いた時に思いついたことだ。
転移サービスを使って隣の街へ移動できるということは、こちらからすれば制圧した場所の隣の街までは、どこかから1日にしてプレイヤーがやってくるということになる。
現在王都に現れている者たちはそうやって隣街まで来たのだろう。
「なんならおんぶしながら2つ3つ街を越えてくるプレイヤーもいるみたいだし、すぐにでもあらわれてもおかしくないんだよね」
「……でも他のプレイヤーの人ってどうなの? 1人だけ会ったことあるけど、不意打ちで一撃だったよ」
「会ったことあるって、ここの前の街とかで? だったらイベント期間中に内地にいるくらいだし、あんまりガツガツしたプレイヤーじゃなかったんじゃないかな。もしかしたら、今までもっと街なかにいたけど気付かずにキルしちゃってたってこともあるかもしれないよ」
「あ、そうか。いっきに全滅させちゃったとしたら、リスポーン前に宿とか消えちゃってた可能性あるのか」
「そういうまったりエンジョイ勢の人ならいいんだけど、わたしが怖いのは制圧されたって言われてる街にわざわざ来るようなプレイヤーかな。
そういう人たちは、この間の瓦礫の丘で戦った騎士より強かったりするからね」
「ひえっ」
そういうプレイヤーが大挙して現れては、ブランたちの戦力ではもたないだろう。剣崎1本増えたところで死ぬまでの時間が伸びるくらいのことにしかなるまい。
「それより、もしわたしを殺したプレイヤーなんかが混じってた場合、剣崎を見られるとわたしとブランの関係が疑われる可能性があるね……」
「関係が疑われるってなんかワイドショーみたい! 有名人の仲間入りだ! あでもその場合わたしは一般女性枠になるのかな」
ブランが何を言っているのかちょっとよくわからない。
ブランとの会話ではときおりそうしたことがあるが、最終的には会話はつながっているので大した問題ではないだろう。
とりとめのない会話、というのもいかにも女同士の友達らしくて素晴らしい。
「ブランが構わないならまあ、別に構わないんだけど」
「構わない構わない! だって魔王の右腕になる予定だからね! あ、四天王とか作っちゃう?」
四天王ならケリーたちがいる、といえばいるのだが、現状魔王軍というよりはスパイ活動のほうが仕事が多い。人類の内情を探るという意味でも、ケリーたちはあの方向の方が良いだろう。他の眷属では決してできないことでもある。
「四天王か、だったらスガル、ディアス、ジークあたりかな? そこにブランも入るかい?」
「入る入る! なんかすることある? 任命式的な?」
任命式をするとしてもお互いの眷属しか参列者はいない。自己紹介も兼ねてやってもいいが、レアの眷属は現在王国西部にかけてかなり広くに分散している。実際にやるのはかなり難しいだろう。
「任命式は難しいかな……。あとは実力的にだいぶ……まあそれはいいか」
現在ブランはゾンビを除く配下たちの1体1体に経験値を振って強化しているようだが、『眷属強化』などのスキルを利用したほうが単体あたりのコストは安くなるし管理も楽だ。『眷属強化』系のスキル開放自体が非常に高額なためイニシャルコストは悩みどころになるが、先々を考えればそのほうがいいだろう。
「レアちゃんの言うようなスキルを取るにはちょーっと経験値が足りないかなーって。街をもうひとつふたつ滅ぼさないと厳しいかなぁ」
「……あるいは、少し時間がかかることになるかもしれないけどここでプレイヤーを待ち受けるという手もあるかな。これだけ派手に潰して回っているのだし、すでに把握してこちらに向かっているパーティもあるんじゃないかな」
何なら姿を消してレアが飛び、この隣の街やさらにその隣の街などを偵察してきてもいいだろう。
最近はオミナス君も大森林で寝ているだけだし、『召喚』して彼に頼んでもいい。
「よし、では軽く偵察に飛ばしておこう」
オミナス君を『召喚』し、方角のみ伝えて空へ放った。
「あー! そっか、そういう方法もあるのか。でも向こうの街についたとしてどうやって報告受けるの? またこっちに戻ってきてもらうの?」
「さっきの『召喚』の派生で、わたしの視界だけを眷属に乗せることができるスキルがあるんだよ。それ使ってちょいちょい覗き見すればいい」
「はえー。やっぱレアちゃんの言ったスキルは早急に取得を目指す必要があるなぁ……」
「まあ、偵察が向こうに到着するまではもう少し時間があるだろうし、今のうちにとりあえずすぐに活用できそうなスキルからとっておけばいいと思うよ」
「そうだねぇ。そうしようかな。ちょっと見ててもいい?」
「もちろん。わたしはSNSでものぞいてプレイヤーの動向なんかを見ておくから」
オミナス君が到着するころには日も昇ってきていることだろう。
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