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(1、2、3……)
そして、21巡目。
たどり着いた。
大きなアーチ。
豪華な柄で縁取られている。
とある空間に繋がる入口だ。
今まで通ってきたものと比べるとやや小さめだろうか。
だが、そこはそうとは思わせない威厳に満ち溢れていた。
上部ではステンドグラスが壁を一周する形で飾られている。
そして、その奥には巨大な扉。
最近のものとは思えない。
大理石のようなもので作られているのだろうか。
遠めに見てもその荘厳さが伝わってくる。
だが、その扉よりも存在感を放つものがそこにはいた。
それは中央に立ち尽くしていた。
異形である。
大きさは3メートルほどか。
異形である。
光沢を放ちながらも、ところどころ錆が目立つ。
異形である。
中央部分に置かれた、ほぼ円に近い角ばった装置に明りが灯る。
異形である。
不気味な機械仕掛けの音を響かせながらそれは存在しない目でこちらを睨む。
その歪な体躯をこちらめがけて突進させる。
早い。速い。
それを間一髪で回避する。
生じた風で殺されそうになる。
息が切れてくる。視界が曖昧になってくる。
攻撃は止まない。
その一撃一撃、全てが無茶苦茶で、全てが終わりに繋がる。
その一撃一撃、全てを無我夢中に、全てを繋ぐ為に躱す。
反撃の兆しはない。
常に最悪が繰り出される。
意識が朦朧としてくる。
永遠には続けられない。
後方へ避ける。
扉から遠ざかる。
段差に躓き、転ぶ。
自分の体が影に覆われる。
それは腕を大きく振り上げる。
壊れた時計が視界に映る。
(あとどれほど時間が残っているのだろうか)
きっとそんなことは、今、気にすることではないことなのかもしれない。だが、不
思議とそのことが異様に気になった。いや、今だけではない。ずっとそれが頭のどこ
かで、体のどこかで、心のどこかで気になっていた。
時間は残されていない。先に進めなければ
果たして、今のは自分の思いであったのだろうか。確実にそう思ったのは間違いない。だが、何故かそれに違和感を覚えた。
そのようなことを考える余裕があったことに驚く。
思えば、最後の一撃がまだ届いてこない。
それは、先ほどまでの勢いを突然、失ったかのようだった。
それでも確実に迫ってきている。
力が湧いてくる。一体どこからそんなものが出てくるのかは分からなかった。
戻るな。
足に力を込める。
止まるな。
拳を握りしめる。
覚悟を決めろ。
顔を上げる。
己を見ろ。
避けてきたそれと対峙する。
進め。
一歩進む。
間合いを詰めた。
二歩進む。
体がのめり込んだ。
三歩進む。
押し通った。
四歩進む。
破壊した。
五歩進む。
後方で機械の部品が木端微塵に吹き飛ばされた。
六歩進む。
空を切った。
七歩進む。
また体が何かにのめり込んだ。
八歩進む。
貫通した。
九歩進む。
それでも止まらない。
十歩進む。
止まってはいけない。
十一歩進む。
止まることが何故か恐ろしいことに思えた。
十二歩進む。
だから、進まなければな
広場の中央でその男は倒れた。
どこかで秒針の刻む音が聞こえた。
次話は2/6 23:00に更新されます。
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