【はじまり始まり】

【はじまり始まり】


三ヶ月後、早朝。


綺麗に整地された海辺の【Tatsumi International School(仮)】建設予定地に一見変わった三人組の姿があった。浜辺で波と戯れる一人の少年とそれを見ながら語らう二人の老婆。

「よくシャルロッテがあの子を手放す気になったわね。」

「シャルロッテはともかく、やっぱり白人だらけの中にいると緊張しているアロちゃんが可哀想だと思ったのね。まだ学校もできていないのに。白い飛行機で連れて来ちゃうんだもの。」

「まあ、毎月の全世界製薬会社の会合場所を【タツミグランドホテル】の【鳳凰の間】にして会いに来ることにしてくれたし。」

「それに、毎朝毎晩テレビ電話でお話ししてるわね。」

「ハマちゃんのお部屋で一緒がいいって可愛いわね、あの子」

「そりゃそうよ、人間の子として生まれ変わった時に立ち会ったんだもの。」

「でも、学校ができたら、他の子と一緒に全寮制になりますからね。」

「私が全部【平家造り】が良いなんて言ったもんだから、こんな広い敷地になっちゃって、予算の方は大丈夫なの?」

「大丈夫よ。資金援助はたっぷりと頂きましたから、来年の春には開校できるわ。それにね、階層のある校舎が不自然な階級や不必要なランク付けを助長するっていうあなたの教育論には、私も賛成よ。ね、【校長先生】。」

「私[管理職試験]も[校長試験]も受けてないのに【校長先生】になっちゃうなんて。ねえ、本当にいいのかしら?」

「いいんじゃないの。【教育特区】指定も受けたことだし。必要なら【校長試験合格証】もらいましょうか?」

「もらいましょうかってもらう物じゃないでしょう。いきなり【教育特区】ね。お役所関係は、【キミちゃん】の?」

「そう、【キミちゃん】の鶴の一声で3年前に決まっていたことになりました。」

「すごいわね。【キミちゃん】て本当は何者なの?」

「うーん、今度本人に直接聞いてみて。私が言えるのは、元は、教科書に載ってる有名人ってことだけ。見た目は若く見えるけど、私よりずっとずっとお姉さんなんだから。」

「ア〜イ!」

波打ち際でキラキラと羽付白猫と戯れていた褐色の少年が大きな声を上げた。

「あらっ!?」

「ふふふ、来ちゃったのね。」

波より目を輝かせて見上げている少年の前には、

「【シロちゃん】洞窟から出てこれるのね!?」

「そうよ、地下水脈で海と繋がってるんだもの」

アロは【シロ】に水を吹きかけられて、キャッキャとこちらに走ってくる。

「ハマ〜っ!!!」

「それにしても【龍人】じゃなくなったとはいえ、【見人】としての能力は無くならないのね」

「言葉もわかるし、身体能力もずば抜けたままね。やはり[普通の子供]にはなれないのかしら。」

「ハマちゃんも一緒。慣れてゆくのよ、ゆっくりね。すべて流れに任せて。」

ドーンと勢いよく抱きついてきたアロをギュッと抱きしめる。

「頑張りましょうねー!アロちゃん!」

「ア〜イ!わかった〜!」

「さぁ、戻って朝ごはんにしましょう」

「今日の[RUN]のレギュラーのポーラさんとゲストでマリーさんも出るんだって」

「やった〜っ!【マルコ】と【チビクロ】もでる?」


きめ細かく粒の揃った砂浜に3人分の足あとをのこしながら、優しい波音の中を【タツミーホーム】へ戻っていった。


》シロ、またね!《

》またね、タマ《


3人の後をパタパタと普通の人には見ることのできない羽付き白猫が羽ばたきながら波音と共に追いかけて行った。




             ~ 一巻はここでおわり ~

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おばあちゃんと龍 @TAPETUMSHIMON

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