第6話 見覚えがある
出発が大幅に遅れたので、出発前からわかっていたことだし、野盗の件が片付き再出発する際にエルメスが宣言したことだが、今夜は野宿となった。
それにしても今日の予定していた半分の距離も移動できなかったわね。
「無駄なことがあった所為で移動距離が全く稼げず、今夜宿泊を予定した街まで辿り着けないどころか予定していた半分の距離も消化できなかったので、ここで野宿になります。
馬車か自分たちで用意したテントなどを張って睡眠を取ってください。食事も各自用意したものを食べてください」
そんなことを言ってもログハウスを出せばそっちで休ませろとか文句を言ってくるだろうが、こちらには、私達が帯同することに同意した際に交した彼ら3人のサイン入りのこの紙があるので問題ないけど、あとで出すことにした。
私がそう言うと王子たちは、自分たちで用意した3人が寝れるくらいのサイズのテントを馬車から出して、ハザードが一人で張りだした。
ハザードがテントを張っている間に王子と聖女は近くにある木の枝、枯木、枯葉を集め、テントの近くに組んで火打ち石で火を起こし焚き火をしようとしているが、中々火が点かないようだ。
ハザードがテントを張り終わって二人の元に行き代わったハザードが5回くらいやったら火が点いたようで、鍋を出し湯を沸かし、簡易椅子に座って、焚き火を囲んで干し肉と沸かしたお湯を入れ簡易スープという長旅や冒険者にはお馴染みの簡易保存食を取り始めた。
「干し肉硬い、スープも味が薄い。量も少ないしお腹いっぱいにならない。普段と同じ食事がしたい」
聖女が食事に文句を言い出した。
野宿じゃ普通は普段と同じ食事は無理よ。
城や屋敷では料理人が料理作ってそれを食べている王子とハザードに料理できるわけがないからね。
ハザードは騎士だけど下級貴族と平民の兵士団は、野外訓練とかやるけど、騎士団は基本、王城や貴族街だけの警備だから野外訓練はないので、現地で狩りなどをして料理するなんてないしね。
「マキ。料理人もいないし、野宿で普段と同じ食事は無理だよ。馬車にりんごとか果物があるからそれを食べて我慢してくれないか」
「わかったわ」
男なら紳士たれじゃないの……。
ハザードか言い出した王子が取りに行って持ってきてあげるのかと思ったら……
王子からそう言われた聖女が自分で馬車に行き果物を持ってきて椅子に座り食べ始めた。
「お前たちはテントを張ったり、食事したりしないのか?」
「私達はすぐ出せますし、食事はもう少ししてから食べるので、私達のことは気にしないでいいですよ」
「お前たちのことなど気になどしていない。
食事しているのにジッと見られていて不愉快な気分なだけだ」
そういえば特に王子はさっきからイライラした感じで食事してますね。ごめんあそばせ。わざとですわ。クスクス
しかし荷物も積めるから荷馬車での移動かと思っていたけど、豪華な装飾をされた馬車なんだと思っていたら、マリーが隣国で外務大臣の部下が外交の際に買ったマジックバッグを外務大臣から話を聞いた国王が取り上げ、国宝にした。
ゴルチェ王国の王子が乗るのだから荷物が積める荷馬車より豪華な馬車の方が見映えがいいからと今回の旅に使用許可がおりた。
そのマジックバッグを馬車に取り付けたからこの装飾が施されている王家の馬車での移動になったらしい。
因みに市販されているマジックバッグは、時間停止機能はないし、生きているものは収納できないし、収納量もピンキリで馬車3台分の容量のものから木箱1つ分の荷物が入るかどうというものまであり、容量が大きいほど高額になるがあの馬車のマジックバックの容量はせいぜい木箱3つ分くらいのやつらしい。
また聖女が馬車に乗り込んだと思ったら暫くすると服装が変わっており、両手にドレスを持って王子とハザードの元に戻って相談し始めた。
「2人共、明日のドレスどっちがいいと思う?」
「パジャマに着替えたのか。そうだな……こっちがいいんじゃないか」
「私もこちらがいいと思いますよ」
「やっぱり!2人もそう思う。じゃあ明日はこれ着るね」
「魔族や悪魔に遭遇するようになったり、魔王国が近くなったら念のためにマキにも防具を着てもらうことになるから今のうちに着たい物を着ておくといい」
「そうする」
聖女が着ているパジャマも両手に持っているドレスも私がデザインして、私の商会で私がオーナーの服飾店で販売しているものですわね。
そういえば、店長がゴルチェ王国にも支店出して、通常より高値で売ってボロ儲けするとか言ってましたね。
聖女様、本店や他の支店よりだいぶお高い料金設定ですのにお買い上げありがとうございます。
まあ、支払いをしたのは王子でしょうけどね。
追放公爵令嬢は最後に笑う 紅 蓮也 @-T2Ya-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。追放公爵令嬢は最後に笑うの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます