第5話 あなたの暮していた世界とは違うの
1週間が経ち出立の日の昼過ぎになった。
危惧していた押しかけられることも襲撃されることもなかった。
ログハウスの前で騒がれることに関しては、外の騒音は室内には聞こえないし、結界があるので結界内に居る者に対して悪意ある者は弾かれるので扉の前まで来れないので簡易魔力感知に引っかからないし、モニターにも映らないので確認しようがないので不明だ。
奴らが来ているかなどいちいち自身で探知魔法を使い探る気もないしね。
マリーもログハウスに朝から来て、奴らが来るのを待っている。
午前中に出立予定だったが、マリーの話によると朝から奴らは出立式とパレードを派手にやっているらしく昼を過ぎたというのに城門前にまだ来ない。
午後3時過ぎた頃にやっと来やがりました。
こんな時間から出発したら私達は自分たちの馬に騎乗して移動だがそれでもこんな時間から馬を飛ばしても暗くなってから王都から一番近い大きめの街に到着できる感じ。
だが奴らは馬車移動するのでこちらも速度を合わせての移動となり馬車は速度を出せないので初日から野宿決定である。
因みに王子たちが乗る馬車の御者はマリーがやる。
馬にも乗れない3人なので、身分的にも馬車の操縦などできるわけがない。
王族である第一王子であり勇者であるカイル、王族に次ぐ身分を与えられた異世界から召喚した聖女マキ、公爵家当主となったハザード。
この中で一番身分が低いのはハザードなので御者をするならハザードだが、騎士団所属のくせに馬にも乗れない。
それってどうなんだ!!って激しく思う。
御者をやらせると魔王討伐以前に馬車の事故で死ぬ可能性もあってマリーも帯同することなったのでマリーが御者となった。
マリーが確認しに行ってくれ、3人が到着する前にログハウスを無限収納に仕舞った。
出立前に騒がれると更に遅れるからだ。
城門前に馬車が到着し、3人は馬車から降りることなく、パレードの御者をしていた者からマリーに御者が変わって、3人と会話を交わすことなく出発出来たのは有り難い。
森の中に入ったのでまだ王都近くとはいえ野盗が出る可能性があるので、ある程度範囲拡めにした探知魔法を展開させながら移動していると探知魔法に不自然な集団がこの先にいることを探知した。
「マリー。この先500mくらい進むと恐らく野盗が潜んでいるわ。私が指示を出したら馬車をとめてね」
「わかったわジーナ」
400m進むと潜んでいた野盗が馬車を確認できたのかゾロゾロ出てきて道を塞いだので、マリーに指示を出し、馬車を停車させた。
「野盗さんかしらね。この馬車が王家のものだとわかっているのかしら?
通行の邪魔なので退いていただけるとお互いのためになると思うのですけど」
レッジィーナは、馬に騎乗したまま野盗たちを見下ろすようにそう言うと一番ガタイがよく、額に大きな傷のある偉そうにしている男が言い返してきた。
「王家の馬車か。そりゃあ襲いがいがあるな。今夜は大宴会が出来そうだな。
だからはいそうですかと退くわけにはいかねんだわお嬢ちゃん」
まあ、他国と違いゴルチェ王国内の野盗だから、魔法使えないし、中・遠距離攻撃は弓と銃器だけであとは接近しての攻撃だから、馬上から魔法一発くらわせれば終わるわね。
「あなたがリーダーかしらね。そう。退いてくれないのね。では排除させてもらうわ」
そう言ってレッジィーナは無詠唱で風魔法のウイッドカッターを複数放った。
「……」
「ぎゃあ!」
「痛えよ〜」
「助けてくれ」
風の刃で首を切られた者たちは叫び声を上げることなく息絶え、切られた場所がよく致命傷を免れた者たちは、その場に倒れ込み血を流しながら絶叫し、運良く当たりどころが良かった者たちは逃げ出して行った。
「あら、死んだ仲間や重症なリーダーを置いて逃げて行くなんて優しいお仲間さんたちね」
利き腕の右腕を切られ、痛みで悶絶しているリーダーに馬上からレッジィーナは言った。
「クソ!なんだよ。その攻撃。見たことねえぞ。卑怯だぞ」
リーダーは痛みに耐えながらレッジィーナを睨みつけながらそう言った。
「卑怯ではないわよ。魔法攻撃を受けるのは初めて?いい経験になったわね」
「魔法だと!そんなもん知らんぞ」
「そうね。ゴルチェ王国しか知らない者は使える者はいないから知らなくても仕方ないわね。
でも他国では王侯貴族だけでなく平民ですら使えるのよ」
ゴルチェ王国は、弱小国なのに強国だと勘違いしている国王をはじめとした愚かな王族や貴族たちは、交渉などで大臣や部下に任せて自ら他国を赴くことをしない。
だから魔力が高いとしても魔法を使えないし、マキが拙い聖魔法を使えるのも異世界召喚されたからとか聖女だからだと思っている。
「なぜ停まっているさっさと進め」
「きゃあ〜カイル血だらけよ」
リーダーとおしゃべりしていると馬車から降りてきたのか怒鳴り声と悲鳴が聞こえた。
「なんだこいつらは?野盗か」
マキの言葉で現在の状況を見たカイルは、レッジィーナに問いかけてきた。
「そうです。野盗です。王家の馬車なので退いてくれるようにお願いしたのですが、従ってくれなかったので、まだ息のある者や逃げ出した者もいますが対処しました」
バカにしたような言い方でレッジィーナはカイルにそう返した。
「人を殺したり、大怪我を負わせたりするなんてレッジィーナさんはやっぱり犯罪者です。
悪いことをした人たちだって説得すればわかってくれて自首してくれるはずなのに、退いてくれないだけで殺すなんて最低です。人間のクズです。カイルもハザードもそうおもいますよね?」
「「ああ……」」
野盗などが説得に応じるはずもないし、殺さなければこっちが殺られる可能性もあるので、こちらの安全の為にもレッジィーナの対処が正しいと思っている2人は、マキの問いに曖昧な返事を返した。
「聖女マキの居た世界はとても平和なところだったのですね。
しかし、ここはあなたの居た世界とは違う異世界です。
あなたの居た世界にもルールがあったでしょう……
あなたは異世界から召喚されてきたのですからあなたの居た世界のルールではなく、こちらの世界のルールに従うべきです。王子も公爵もそう思いますわよね?」
「「……マキはお前と違って優しいんだ」」
聖女の言い分にレッジィーナはそう言い返して更に王子と公爵の二人にそう問いかけてやったら二人は黙り込んだあとボソボソと言ったので、聖女にある提案をしてやった。
「王子と公爵曰く、聖女マキは私と違いお優しいとのことなので、そこに居る片腕を失くし血を流しながら辛そうにしている野盗のリーダーの腕を自首してくれるように説得しながら治してあげたらいかがです。
聖女マキは聖魔法が使えるのですから高位の聖魔法なら失った腕を元通りにしたり、腕を再生させ新しく生やしたりできますし、高位魔法ができなくても聖魔法なら止血して彼がこのまま死ぬようなことは、回避できますわよ」
「わかったわ。やってみるわよ」
「やめるだ!」
「どうして?ハザード」
言われた通りにやろとした聖女をハザードがとめた。
「マキ。野盗をマキのみが使える聖魔法で治してやってもそいつはマキの説得に応じて自首することはないよ。
それどころか治してくれたマキに感謝せずマキを人質に取り逃げるか、最悪は私達を殺し、マキたち女を奴隷として売り払うよ」
「どうして?」
聖女を人質に取られても野盗リーダーを今度は殺すので奴隷商に売られることはないわよ。
聖女は顔を青くして疑問を口にした。
なのでその疑問には私が答えてあげましょう。
「聖女マキ。この世界では、野盗は殺しても罪にならないのですよ。生きたまま兵士に引き渡せば報奨金が貰えるのですよ。
なぜ、治してあげたのに説得に応じて自首せず、治してくれた恩人のあなたを人質に取り逃げたり、更に罪を重ねるかと言いますと野盗は、捕まると待っているのは処刑か犯罪奴隷落ちだからです。
それでも助けて自首させたいと言うなら治してあげたらいいですよ」
犯罪奴隷は罪が軽い方なら何十年か奴隷として鉱山などで重労働すれば釈放されるが、重い罪だと死ぬこともできず、何百年何千年と超過酷な重労働や魔物の森と言われる魔物が蔓延れ森で魔物を討伐させられ続けるのだ。
「……」
私の話を聞いて聖女は、黙って悩み始めたので、今日の予定が出発時点でだいぶ遅れており、更に遅れることになるので、更に提案してやった。
「聖女はお優しいらしいですから治すか止血してあげたらいいですよ。もし聖女が人質に取られても逃がすこともエルメスは勿論、王子も公爵も殺されることもないですし、聖女、私、マリーが奴隷商に売られることはありませんよ。
聖女が人質になったら聖女には怪我させないように今度こそ野盗を殺しますからね」
そう言うと更に顔を真っ青にして言った。
「悪いことはいけないことですし、レッジィーナさんのやったことは正しいです。悪いことをした野盗たちを突き出せばお金が貰えて旅の資金が増えていいことばかりなのでそうしましょう」
お金が貰えるとわかって、引き攣っていた顔を笑顔にして連れてって引き渡そうだなんて現金な聖女だこと。
「野盗たちを引き渡すには街まで連れていかなければなりませんし、王都に引き返すにもここから一番近い街にも距離がありますので、ここに放置していきますよ。
このままなら出血多量で死ぬでしょうし、もし私達が過ぎ去ったあと逃げたとしてもこの怪我では無理でしょうし、血の匂いで寄ってきた魔物や狼など肉食動物に襲われるでしょうね。
死体の処理は襲ってきた魔物や動物が食べてくれますしね」
「誰かさんたちのおかげで出発も遅れ、野盗たちとお花畑発言の聖女の所為でさらに遅れたから今夜は野宿だぞ。さっさと出発するぞ。馬車に乗れ」
エルメスがイライラしながらそう言った。
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