第15話

「どういうことと言われましても、言葉通りの意味ですけれど。あのビラに書かれた情報は嘘なのです。あれは、犯人とジャレット様の居場所を特定するための罠です」


「……は? 罠? ということは、私はお前の策略に嵌ってしまったということか?」


「まあ、そういうことですね。罠に嵌るまでは、犯人がお父様たちだとは思いませんでしたし、こんなところにジャレット様がいるとも思いませんでしたよ」


「おかしいだろう!? なんであんなビラ一枚で、私たちのことやこの場所が特定できたんだ!?」


「え、まだわかっていなかったのですか? 単純なことですよ。まず、ジャレット様を連れ去った犯人は、彼の部屋で金目の物を取ろうとしていたことからも、お金に困っていることが分かります。そして当然ですけれど、ジャレット様の居場所も知っています。だから、あのビラを配ったのです。あれを見た犯人は、どうするでしょう? 当然、ブレスレットを手に入れようとしますよね。一億円の価値と聞けば、誰でもそうします。そしてそのブレスレットがある場所は、当然ジャレット様の居場所と同じです。ブレスレットを落としていなければ、彼がつけているのですからね。そして、ジャレット様を攫ったのは、あの日パーティに来ていた数十人と、屋敷で働いている人の内の誰かです。ほかには誰も屋敷に入っていませんでしたからね。だから、あのビラを配ったあと、憲兵の人に容疑者の数十人を尾行してもらったのです」


「まさか、あのビラにそんな罠が仕掛けられていたなんて……」


「容疑者のうちの何人かは、ブレスレットを捜そうとしていました。しかし、ただ闇雲に捜しているだけでした。ブレスレットがどこにあるのか知らないからです。ただ、あなたたちは違いました。周りに目もくれず、まっすぐどこかへ向かっていました。ブレスレットがどこにあるのか知っていたからです。そして、私たちはあなたたちのあとをつけて、ここへたどり着いたのです。これが、ジャレット様の居場所と犯人を特定した方法です。理解できましたか?」


「そんな、金持ちになれると思っていたのに……、まさか、スーザンの手のひらの上だったとは……」


 お父様たちは、憲兵に連行されて行った。


「お疲れ様。大活躍だったね、スーザン」


「カーティス様……」


「君のおかげで、弟は助かったよ。本当にありがとう」


 彼は微笑んだ。

 彼の表情を見ると、私まで嬉しくなる。


「ええ、カーティス様のお役に立ててよかったです」


 私も微笑んだ。


「それじゃあ、帰ろうか」


「ええ、そうですね」


 もう私の帰る場所は、お父様たちのところではない。

 カーティス様の隣が、私の居場所なのである。

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傲慢な侯爵令息様をビンタした結果、なぜか彼のお兄様に溺愛されることになりました 下柳 @szmr

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