九百八十五話 持ってるじゃん
「良いじゃん良いじゃん、教えてよアラッド~~~~」
今現在、ガルーレたちは虎竜という超珍しいドラゴンを探索している最中。
一日目、二日目と碌に情報すら得られていないこともあり、真剣に探索しなければ見つけられないのだが……闇竜の時と違い、本当に情報の欠片すら見つからないこともあってか、ガルーレの探索気力はやや低下していた。
それもあって、アラッドが情報通信系のマジックアイテムを造るなら、どういった素材が必要なのか……という予想に興味が湧いてきた。
「……あくまで、中途半端野郎の予想だぞ」
「うんうん!!!」
「それで構わないよ」
ガルーレは全く気にしておらず、スティームは「相変わらず謙虚だね~~」と言いたげな表情をしながら頷いた。
「言葉を伝えるタイプの通信系マジックアイテムなら、まず実際に人間の言葉を喋るような個体じゃなく、俺たちの……脳内、もしくは心の内か? に語り掛けてくることが出来る個体の素材が必要になると俺は思ってる」
「そうなの? ……私は錬金術とか全然解んないけど、言葉を伝えるなら、人間の言葉を喋れた方が良いんじゃないの?」
「声で伝えるのとそういった能力、もしくはスキルで語り掛けてくるのとでは、届く距離が違う。それに、声だと伝わらなくても良い人にまで伝わってしまうだろ」
「あぁーー…………なる、ほど」
あまり学のないガルーレでも、アラッドが言いたい事がなんとなく理解出来た。
「だから、そういう事が出来るモンスターの素材が好ましいと俺は思う。ただ、そういった事が出来るモンスターは多くないだろうから、そこが懸念点になる」
「じゃあ、その懸念点をどうやって解消するんだい」
自身で錬金術に関しては中途半端野郎だぞ、と語るアラッドに対してスティームはさも当たり前の様に「でも、その懸念点を解消する考えはあるんでしょ」と尋ねる。
「……一応な。要は他者に何かを伝えることが出来るモンスターの素材というのが、俺の仮説だ。だからこそ、他者に対して精神関連の攻撃が出来るモンスターの素材なら、代用できるんじゃないかと思ってる」
「毒とか麻痺系じゃなくてってこと?」
「…………もしかしたら代用できるかもしれないけど、それならそれでデメリット付きのマジックアイテムが完成するかもな」
通信をしている最中、通信社である二人が常に毒状態か麻痺状態になってしまう。
なんだそのバカげたマジックアイテムはと……馬鹿にされるのが落ちだが、人によってはそれだけで済むのであれば容易いと代償だと考える者もいる。
加えて、超上等な状態異常耐性のマジックアイテムを装備すれば、結果的にデメリットなしで扱う事も出来る。
「ともかく、俺としてはそういった事が出来るモンスターの素材が、要の素材になるんじゃないかと予想してる」
「つまり、アンデット系のモンスターとか……咆哮のスキルレベルが高いモンスターの素材が必要になる感じかな?」
「咆哮か……そうだな。戦力差があれば、咆哮一つで戦意喪失させることも出来るからな」
ガルーレの思い付きに再び感心させられるアラッド。
そんな中、スティームは何かを考え込むように黙ってしまった。
「……………………」
「? スティーム。急に黙っちゃってどうしたのさ」
「いや、ちょっとね……うん…………その条件にピッタリ当てはまるモンスターが頭の中に思い浮かんで」
「えっ!!! 凄いじゃん!! ねぇねぇ、どんなモンスターなの! 私たちが知ってるモンスター!?」
「知ってるというか、もう倒してるというか……」
「????」
「……あっ」
ガルーレは直ぐに解らず首を傾げるが、アラッドはスティームがどんなモンスターを思い浮かべているのか直ぐに理解した。
「スティーム、お前もしかして……」
「うん、そうだよ。闇竜の素材なら、アラッドやガルーレが言った事、ある程度当てハマってるんじゃないかと思って」
闇竜、デネブ。
ステータスの表示上はBランクではあるものの、複数の要素はAランクに届いている怪物。
そんな怪物はアラッドに遠距離攻撃の闇魔法は潰しても構わないと思いこませ、あと一歩のところでアラッドの狂気を爆発させる寸前まで追い詰めた。
そして、アラッドとの戦いでこそ使わなかったが、闇竜デネブはドラゴンらしく咆哮のスキルを有しており、スキルレベルは五と、決して低くはなかった。
「どうかな、アラッド」
「…………まぁ、そうだな。色々と……要素は、当てハマってるとは、思う」
闇竜デネブとはアラッドしか戦っておらず、基本的に売却した素材以外はアラッドが有している。
(そうだな……すっかり忘れてたな。あいつなら、色々と条件に当てハマってる…………そう考えると、心臓を売ってしまったのは、ミスだったかもしれないな)
闇竜デネブの心臓……ドラゴンハートを、アラッドはギルドに売却してしまっていた。
自分以上に錬金術に興味が爆発している弟、アッシュにプレゼントしようかなと思ったものの、デネブの恐ろしさを身を持って体感したからこそ、もし弟に万が一のことがあったらと思い、売ってしまった。
「……まぁ、それでも実験はしないけどな」
「えぇ~~~~、なんでさ~~~~」
「俺はあくまで冒険者だ。それに……もう制作で缶詰になるのはこりごりだからな」
何を言っているのか分からず首を傾げる二人をよそに、アラッドは死んだ目をしながら遠い日の出来事を思い出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます