八百十六話 推察
「とりあえず、依頼を受けるのは今度にするか」
「そうだね」
「目的は別にあるし、無理に受ける必要は確かにないね~」
結局三人はクエストボードに張られている依頼書を眺めるだけ眺め、依頼を受けずに冒険者ギルドから出て行った。
「あの三人……いったい誰なんだ?」
人混みを煙たく思う者たちは、三人と同じ様に少し離れた場所から依頼書を眺めていた。
ただ、アラッドたちの周りに……そういった者たちはいなかった。
「なぁ、あの男二、女一の組み合わせのパーティーっていたか?」
「いやぁ~~、いるにはいると思うけど、あの三人は多分見たことない、かな」
「クエストボードの方を眺めてたけど、結局依頼書を手に取らなかったよな」
「それはそれで……なんで? って思わなくないけど、一番気になるのはあの圧でしょ。クエストボードの前に並んでた人たち、ビビッて避けたわよ?」
ある女性冒険者の言葉に、クエストボードの前で依頼書を探していた冒険者たちの方がピクっと反応した。
ビビってないわ!!!! そう反対しようとした。
だが、その時に感じた圧を……振り返った時に並んでいた三人の姿を思い出し……再度震えてしまった。
「あの三人組、三人とも強かったよな」
「ギルドに入ってきた時から、俺たちは強いんだってオーラを零してたな」
「見た感じ、三人とも……近距離タイプじゃなかった?」
「フルアタッカー? それって超バランス悪いじゃん」
「確かにバランスは悪いが、ここ最近組み始めたパーティーの様には見えない」
「それが本当だとしたら、フルアタッカーのパーティー構成でも上手く戦えてるってことね」
「…………あの金髪? の子、魔力量が前衛のそれじゃなかった」
とあるテーブルであの三人について語っていた者たちの中で、一人の低身長女性魔法使いが口にした言葉に、一定の注目が集まった。
「魔力量が多いタイプの前衛ということか?」
「帯剣してたし、前衛なのは間違いないだろ。こいつが魔力量が多いって言うなら、貴族の令息とかじゃねぇのか?」
「……解らない」
「解らないというのはどういうことかしら?」
「確かに、あの貴族の令息らしい子は帯剣してた。前衛らしい雰囲気を感じたけど……でも、後衛に思えなくもなかた」
「魔剣士だったってことか」
「魔剣士じゃなくて、魔法剣士かも。あと、もう一人の男の子も…………何か、普通じゃなかった」
低身長女性冒険者の強さを知っている者たちは、バカな事を口にしていると一蹴することはなかった。
「普通じゃないってのは……どういう事だ?」
「ごめん、細かい事は解らない。ただ、普通の双剣士? ではなかった」
「普通じゃないということは、人族の見た目をしているけど、祖先に人族以外の人がいて、その祖先の力を宿してるタイプなのかもしれないね」
冒険者としての経験がそれなりにある者たちであれば、かつてアラッドが闘技場で戦った獣人族を祖先に持ち、獣心を解放出来るルーキー、オルフェンの様な存在を知っている。
「そういう可能性も、あるかもしれない」
「それじゃあ、もう一人の……多分アマゾネスらしき女の子はどうだった」
「あの子は………………二人ほど、不思議が詰まってはいなかったと思う。視た感じ、一番槍タイプの子かな」
一番槍タイプ……とどのつまり、猪突猛進な怖いもの知らず。
冒険者達は苦笑いをしながら、周りにいる知り合いに目を向け、視線を向けられた一番槍タイプの冒険者たちは気まずそうな表情を浮かべながら顔を明後日の方へ向けた。
「でも、こう……ただの一番槍タイプじゃなかったかな」
「最後の一人も、普通じゃないってか?」
「まぁ見た感じ二十を越えてないのに、あそこまで同業者たちを圧倒出来るオーラを零してたんだ。三人ともそれだけで普通ではないと言えるだろう」
「それはそう。強いて言うなら、ちょっとバーサーカー味がある?」
「狂化のスキルを持ってるの?」
「視てはないから、そこまでは解らない。ただ、そこら辺の一番槍タイプよりも強いと思う」
「あの体型のアマゾネスってことは、パワーがあるだけじゃなくて、スピードもあるだろうな…………てかよ、そこまでお前が褒めるってことは、どう考えてもあいつらDランクとかCランクじゃなくて、Bランクの冒険者だよな」
若くてBランクの冒険者。
そんな妬ましさ全開の視線で見られるであろう存在は、いる事にはいる。
カルトロッサはロッサの密林という冒険者にとって死地である同時に宝庫と言えなくもない一帯があるため、多くの冒険者が集まる。
故に、そういった稀に現れる存在を知っている者は多い。
「男が二人、女のが一人で貴族の令息っぽい奴がいる……んで、そいつがリーダーぽかった……よな?」
「そうだね。あの真ん中の彼がリーダーだと思うよ。まだ若いけど、風格が備わってる様に見えたよ」
「あの金髪の子がリーダー……ん? ねぇ、もしかして」
何かに気付いた冒険者が、頭に浮かんだとある冒険者の名前を口にした。
「「「「「「「「「「それだ」」」」」」」」」」
その名前を聞いた瞬間、周りにいた者たちは口を揃えてそれが答えだと確信を持って同意した。
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