六百四十八話 ちょっと麻痺してた

(スティームが戦い終わるまでは、大丈夫だろうけど、一応早く終わらせないと、な!!!!!!)


(アラッドも、速攻で終わらせる、みたいね! それなら、私もガンガン攻めて、速攻で終わらせようかしら!!!)


アラッドはまだ全身に赤雷を纏った状態では、長い間戦い続けられないことを知っており……オリハルコンの牢獄も長時間続かないこともあって、速攻でプロミネンスコブラを倒すと決めた。


そしてガルーレは……特に理由はなかったが、スティームとアラッドが速攻で勝負を終わらせようとしていることを察し、自分もそうしようと決めた。


「「ジャァアアアアアアアアアッ!!!!」」


とはいえ、二体ともそれぞれBランクの怪物。

ディーマンバは非常に打撃攻撃に優れた蛇系モンスターであり、毒も食らえば激痛が襲い掛かってくる。


プロミネンスコブラは火属性の蛇らしく、口からは毒よりも火をメインに吐き出す。

その炎は溶解に優れており……直接喰らわずとも、あまり空気の通り道が少ない場所で吐き出され続けると……人間に害が及ぶ毒が体内に入り込み、動きを阻害する。


どちらも一筋縄ではいかない獲物だが、アラッドは渦雷を抜剣すると……スティームと同じく戦場を縦横無尽に駆け回り、プロミネンスコブラが炎を吐き出す間を与えず加速し続けていく。


曲線を描いて動くことは出来ないため、タイミングを見計らえば……捉えられないこともないが、プロミネンスコブラはあまりにも攻め気の強いタイプであり、あまり策を為して敵を倒すことが得意ではなかった。


半ダンジョン化した地帯に誘導された影響もあったのか、何度も攻撃は行うものの……そのどれもがスカ。

数回ほど炎を吐き出すも、嫌な予感がしたアラッドは水の大弾丸を放ち、即消火。


そして戦闘から開始十数秒後。

最高速……ではないが、それでも渦雷の力を発揮し、その首を切断。

まさに圧巻の勝利だった。


対して、ガルーレはと言うと……数か所だけ、内出血している箇所があった。

彼女の本気は……超身体強化スキル、ペイル・サーペルスを発動した状態。

しかし、ペイル・サーペルスは自身が一定以上のダメージを受けた場合でなければ発動出来ない。


故に、ガルーレは本気中の本気を出せない状態の中、ディーマンバを倒そうとした。

元々そういった戦り方に慣れているのか、ガルーレは被弾覚悟で体内にダメージが浸透するように手のひらを叩きつける。


その結果、ディーマンバの柔軟でありながら堅い鱗を貫通して体内にダメージを与えることに成功したが、更に一歩相手の懐に飛び込んで攻撃するため、非常にカウンターを食らいやすい。


しかし……根性に関してはそこら辺の男よりも勝っているため、その場で踏ん張って耐え、一度も攻撃がスカることなく体内にダメージを与え……アラッドやスティームとほぼ同じタイムでディーマンバの討伐に成功した。


「リベンジ達成だな、スティーム……って、ガルーレ。大丈夫かよ」


「ん? 平気平気。これぐらいどうってことないよ。最近は二人と探索するようになってからちょっと麻痺してたけど、この黒い大蛇みたいなモンスターと戦えば、こんな傷を負うのは当たり前よ。というか、寧ろ今回は比較的軽めで済んだよ」


これまでガルーレは何度もBランクのモンスターを倒してきたが、どれも楽な戦いとは言えなかった。


同業者たちと一緒に戦う時は、戦況によっては頑丈な体を活かしてタンクとして相手の攻撃を防ぐこともあり、毎度無傷で済むことは決してなかった。


とはいえ、それでも割と良いカウンターを食らってしまったことに変わりはなく、念の為ポーションをがぶ飲みする。


「ふぅ~~~、相変わらず苦いね~~。にしても、あんな荒ぶるスティームは初めて見たよ」


「い、いやぁ~~~……お恥ずかしい限りだよ」


「何言ってんだい。私はスティームのあぁいう部分が見れてラッキーだったよ」


人によって、全力中の全力を出す状態……雰囲気が異なるのはガルーレも解っている。


ただ、強いて好みな状態を上げるのであれば…………闘争心全開、野性大解放な状態。


ソルヴァイパーに襲い掛かろうとした時にスティームは、まさにその状態だった。


「というか、あれだけ珍しい様子で襲い掛かったってことは……もしかして、あの白蛇が噂の二人が取り逃がしちゃった個体?」


「「うぐっ……」」


今回、本当に運良く……偶々再び巡り合うことができ、無事討伐することが出来たが……過去にスティームとアラッドの二人がソルヴァイパーを取り逃がしてしまったという汚点は、一生消えない。


「ま、まぁそうだね。ソルヴァイパーの中でも白雷を使える個体は本当に珍しい。だから、今回僕が倒したソルヴァイパーはあの時取り逃がしてしまったソルヴァイパーで間違いないと思うよ。あっ、ファル。ごめんね、一人で突っ走っちゃって」


「クルルルゥ」


ファルとしては自分も一緒に戦って倒したかったところだが、それでも主が無事で……尚且つリベンジを果たしてスッキリしているのであれば、特に文句はなく……寧ろ自分事の様に喜んだ。

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