六百四十九話 それはそれで楽しみ

「う~~~~ん…………もしかしてたけど、今現れた三体って、ボスじゃなかったのかな?」


ソルヴァイパー、プロミネンスコブラ、ディーマンバ。

三体のBランクモンスターを倒したアラッドたちだが、強敵三体を倒した三人の元に……宝箱は現れなかった。


「そういえば、宝箱が現れないな。いや、確定ではないから現れない場合もあるとは思うが」


アラッドはこれまで一度もダンジョンを探索したことがなく、ボスと呼ばれるモンスターと戦ったことがない。


しかし、元冒険者である母から何度もダンジョン探索を行った際の体験談は聞いたことがある。

それらの内容に照らし合わせると……三体の蛇系Bランクモンスターの戦闘力は、間違いなくボスモンスターと呼べるだけの強さを持っていた。


「僕もあの三体はボスモンスターなのかなって思ったね。多分だけど、あの三体は偶々この鉱山周辺に訪れて、半ダンジョン化した鉱山の力? に誘われて集まったばかり……って印象を持った」


「私も同じね~~~。ある程度この鉱山を探索してモンスターと戦ってきたけど、あれは間違いなくボスモンスターに当てはまる強さよ。けど、こうして宝箱が現れないっていうのを考えると…………まだこのリバディス鉱山が考える最強クラスのボスモンスターではなかったのかもしれないわね」


「…………なるほどな」


鉱山が考える……その言葉だけを聞けば、こいつは何バカなことを言ってるんだと思うだろう。


だが、アラッドから見て、半ダンジョン化した地帯、ダンジョンという場所……存在は本当に摩訶不思議なもの。

自身の愛剣である渦雷も含め、前世という記憶……知識に常識を持つアラッドはガルーレの考えを一蹴、バカにする気持ちは微塵も生まれなかった。


「ガルーレの考え通りなら、そのうちさっきの三体の戦闘力を合計したものより強いモンスターがボスとして現れるということだよな」


「そうなってもおかしくはないかな」


「そう考えると……待つ楽しみはありそうだな」


ソルヴァイパーとプロミネンスコブラ、そしてディーマンバ……この三体と一人で戦うということを考えると、プロミネンスコブラ一体だけと戦った時の様に圧勝することは難しい。


加えて、その三体の総戦力以上の力を持つモンスターとなれば…………スティームとガルーレを含めた三人と共に戦ったとしても、勝利するのは容易ではない。


「「「「「っ!!??」」」」」


一先ずそれらの考えは街に戻ってから続けようと思った瞬間、アラッドたちは揺れを感知。


「一旦出るぞ!!!」


少し離れた場所でモンスターと人間が戦ってるからこそ感じる揺れ……と放置できる大きさではない。


スティームとガルーレも直ぐに把握し、アラッドと共にクロの背中に乗って脱出。


「ふぅ~~~~~、ったく……いきなり何が起こったんだ?」


アラッドたちに続き、次々にリバディス鉱山から脱出する冒険者たち。


約五分後……ようやく揺れが収まった。

結果的に、リバディス鉱山が崩落することはなく、中の通路も無事に生きている。


「……アラッド、どうする?」


どうする? とはもう一度中に入って探索するか、今日はもう街に戻るか? という意味。


その質問に対する答えは、既にアラッドの中で決まっていた。


「俺は、もう一度中に入って探索したいと思う。二人はどうだ?」


自分の中で決まっていたとはいえ、二人はどうしたいのかと尋ねるアラッド。


「良いと思うよ。もしかしたら、色々と変わってるかもしれないし」


「私ももう一度潜るのに賛成かな」


アラッド本人は全く意識していないが、二人は自分たちの暫定的なパーティーの中で、リーダーはアラッドだと思っていた。


だからというのが理由ではないが、二人も先程の揺れがリバディス鉱山に何をもたらしたのか、非常に気になるところ。


「それじゃ、入ってみるか」



アラッドたちが再度リバディス鉱山に入ってから数時間後……そろそろ日が見えなくなり始めるといった頃、三人は何も変わったところを発見出来ず、ややテンションが下がっていた。


「まっ、こんなこともあるか」


「結構期待してたんだけどね」


「ダンジョン探索してれば、こういう事もあるからね~~~。でも、もしかしたらさっきの揺れはこれから数日後に新しい変化をもたらすかもしれないし、がっかりするのはまだ早いかもね」


「そういう事もあるか……よし、今日はもう帰るか」


リバディス鉱山の外に出た三人。


しかし、外に出ると何故か上の方から同業者らしき人物たちの声が聞こえた。


「ん? あいつらは…………なんでわざわざ上に向かって登ってるんだ?」


多くの冒険者たちがリバディス鉱山の中ではなく、何故かリバディス鉱山の頂上に向かっていた。


「……何かあるのかもしれな」


「行く、一択だね」


「だね!!!!」


アラッドとガルーレはクロの背に乗り、スティームはファルの背中に乗って頂上へと向かう。


「随分と、人が居るな」


あっという間に同業者たちが集まる頂上に到着したアラッドたち。


「っ…………なんだ、あれは」

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