五百話 逆に襲われる?

「アマゾネスは、強い雄に強く惹かれる。私はハーフだからまだ理性でそういった部分を抑えることが出来るが、ハーフでない純粋なアマゾネスは……その、少々見境ないところがあるのだ」


「そういう話は聞いたことあるね。確かにアラッドはロングソードや他の武器の扱いだけじゃなくて、徒手格闘の腕も立つから、アマゾネスの人たちからすれば非常に魅力的な存在なのかもしれないね」


「そう……なのか」


ここで一つ、アラッドとスティームは気付きそうで気付かない部分にツッコまなかった。


アマゾネスからは基本的に女性しか生まれない。

その相手が誰であろうと……娘のアマゾネスが生まれる。

故に、普通はハーフという存在がない。


「でも、そういう場所に行って囲まれてしまうと、責任を取らないといけないのではないか?」


「いや、別にその必要はないらしいよ。よっぽどこう……恋愛的な出会い? そういう出会い方でなければ、アマゾネスが求めるのは強い雄の体……正確には種だ」


「た、種か……それはまたストレートな内容だな」


エレインの話は決して誇張ではなく、アマゾネスの殆どは強い雄に惹かれると……その男と行為を重ねたくなる。

ベストマッチだと感じれば更に壁を越え、その男の子供が欲しくなる。


ただ、子供が出来たからといって、男に自分と結婚しろと攻めることはあまりない。

勿論子育てという面を考えれば隣に居てもらうに越したことはないが、基本的に束縛が激し者はいない。


「……アラッド王国の誕生だね」


「王国ってなんだよ、王国って」


「だって、アラッドぐらい強くて雄々しかったら、殆どアマゾネスたちがアラッドのことを求めそうじゃん」


「確かにその通りね。でも、強さという点に関してはスティーム、あなたも同じよ」


「えっ?」


予想外の言葉に固まるスティーム。


「決勝戦であなたが見せた本当に純粋な……強敵に勝ちたいという静かな闘志。加えて、最後にはそれを爆発させて勝利を掴みにいった。今回の試合だけ見れば、アラッドよりもあたなに意識が生むアマゾネスが多いかもしれない」


「え、えぇ~~~」


「良かったな。スティーム王国の誕生だ」


「ちょ、そんな事あり得ないから」


お返しとばかりにがっつりからかうアラッド。


「まぁでも、僕としてはアラッド君に嫉妬したかな」


アバックから直接、嫉妬したという感想を伝えられたアラッドは……本当に僅かに、他三人にバレない程度に身構える。


「僕との戦いでスティーム君が本気で戦っていなかったとは思わないけど、それでも……明らかに集中力が違ってた」


準決勝で戦ったスティームを非難したいわけではない。


ただ……自分との戦いに勝利したスティームが、自分の時以上に集中していた。

その対戦相手に、アバックは抱いた決して小さくない嫉妬心が中々消えない状態が続いていた。


「僕がまだまだ弱かったからっていうのが原因なのは解ってるんだけどね。でも、それでも気付いたときには嫉妬してたよ」


「…………今すぐ、俺と戦りたいってことか?」


ただ模擬戦を、もしくは真剣勝負を行いたいという頼みであれば、特に申し出も断る理由もない。


「いや、そういう事ではない。今のままじゃ、アラッド君の本気を引き出せないことぐらいは解ってるから」


人によっては、ここで挑むという選択肢を取らないアバックを臆病者と思うかもしれない。


隣にいるエレインも一瞬そう思ってしまったが、直ぐにその様なバカな判断を取り下げた。


(ふ~~ん。こいつもそれなりに熱くて、しっかりと芯がある男みたいだな)


アラッドという怪物には絶対に勝てない。

そう思っているのでぇあなく、今はまだ勝てないと判断しただけ。


当然のことながら、いずれアラッドに挑戦することは……既にアバックの中で決定事項だった。


「そうか……俺が言えることじゃないけど、あまり無茶し過ぎて死ぬなよ」


「はは、本当にアラッドが言えることじゃないね」


「自分でも解ってるよ。ただ、無茶をするのは……あれだ、多分うちの血的に普通のことなんだよ、多分な」


アラッドの父、フールが現役騎士時代の時に殆どソロでAランクモンスターのドラゴン、暴風竜ボレアスを倒し……つい先日、現パーシブル侯爵家の次期当主で長男のギーラスもソロでボレアスの息子、ストールを倒したという

事情を知っている為、特にもやもやすることなく納得出来てしまう。


(アラッド君なら、また僕たちに耳に入る様な功績を立てそうだね…………それなら、やっぱりも僕もそれぐらいの偉業を打ち立てて、彼らの耳に入って……嫌でも意識してもらえるようにならないとね)


昼食を食べ終えた後、四人は解散。

とはいえ、アラッドとスティームはまだレドルスに滞在している為、偶に一食に食事を取る機会はあった。


そんな中……いつも通りギルドの訓練場ではなく、街の外の森でスティームと模擬戦を行い、技術力の向上に努めている中……休憩中に不吉な気配を感じ取った。


(殺気……殺気、か?)


これまでの人生経験から、殺気の種類によって視線を飛ばしてきている相手が人かモンスターかは区別が付くようになっていた。

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