四百十三話 限界ギリギリの爆発

(この感じ……クソがっ!!!!!)


口の悪さ全開なアラッド。


(オーアルドラゴンと似てる圧を発するとか、なんてやつだ!)


未だに単体では全力を出しても勝てないと認めているドラゴンの知人、オーアルドラゴン。


体の大きさはオーアルドラゴンよりも小さく、総合的な戦闘力も劣る……が、ドラゴンはドラゴン。

ワイバーンなどの下級ドラゴンと比べて、一線を画す力を持つ。


「嘗めるなぁあああああああああッ!!!!!!!」


恐怖は感じれど、それがどうしたという話。


逃げ出す?

絶対にあり得ない。


そんな選択を取るほど臆病者でも薄情者でもないアラッドにとって、それは天地がひっくり返ってもあり得ない選択。


(加速が始まった時間を考慮すれば……ちっ! まだ時間がいる)


完全に殺す為には、渦雷の効果である加速をマックスまで引き出す必要がある。


「こいつの相手は俺がやる!!!!」


味方にそう告げると、アラッドは真正面からドラゴンゾンビに近づき、自身に意識を集中させる。


「ゴォォアアアアアアアッ!!!!」


当然、ドラゴンゾンビは真正面から突っ込んで来た小さな生物に鉤爪を振り下ろす。


食らえば潰れる一撃を避け、適度に離れた距離から雷の斬撃を放つ。


「ッ!!!!」


その一撃は確かに効いており、ドラゴンゾンビは苦悶の表情を浮かべる。


(離れて正解だった、な!!)


ドラゴンゾンビの体から体液が飛び散ると、触れた地面や壁が解け始めた。


加えて、ゾンビになってもドラゴン特有の回復力は残っているため、雷の斬撃によるダメージは十秒後には完全に回復。


(狙うは、加速が最大限まで高まった瞬間!!! それまで……堪えろ、落ち着け、マジットさんたちがあの屑野郎を討てるために……この暴力の暴走を、制御しきれ)


渦雷の効果である加速を最大限に活用する為には、まだ時間が足りない。


しかし、時間が経ち過ぎると……内なる狂暴性に飲み込まれ、黒幕の男やドラゴンゾンビなど関係無く、手当たり次第に周囲の生物を攻撃し始める。


それだけは絶対に避けなければならない。


ドラゴンの中では遅い部類であり、Aランクの中でも下位の存在だが、決して狂化なしに対応出来る鈍間ではない。


「お前ら! アラッドがドラゴンゾンビを抑えてる間に、他のゾンビを全部叩き潰すぞ!!!!!」


ルーキーに守られてばかりいられないと、更に闘争心を燃え上がらせる討伐隊。


アラッドに加勢してやれない力の無さに悔しさを感じるも、今はプライドを優先する場面ではないことぐらいは解る。


(いったい何なんだあの子供は!!??)


黒幕の男が召喚したドラゴンゾンビであるため、男が指示を出せば言う事を聞く。


ただ、討伐隊の闘争心が燃え上がるという事は……現在、黒幕男と護衛のゾンビが相手をしている戦闘者たちのテンションも爆上がり状態となり、別の戦況を気にする余裕など完全になくなる。


(あの子供が……あの子供さえいなければ!!)


討伐隊がアジトに侵入してきてからの行動は全て把握していない。


戦闘光景を見たのは最奥の部屋が初めて。

そこでの戦闘だけで、どれだけアラッドと呼ばれる冒険者が恐ろしく、討伐隊を殲滅するのに邪魔な存在なのか理解させられてしまう。


丁度良い距離を保ち、攻撃を放ち続け……更に攻撃を先読みし、破壊力抜群の攻撃を躱しながら加速を続ける。


(まだだ……まだ、まだだ)


一度試したことがあるため、自身の限界は把握していた。


故に、限界が来た瞬間……体が反射で動く。


「オオォォァアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


自身の前方に十数本のウィンドランスを展開し、一つに融合。

アラッド自身が一本の風槍と化し、ドラゴンゾンビの反応を上回る速度で突貫。


(ここっ!!!)


モンスターである以上、脳や心臓と同等な部分である魔石……そこを一点集中で狙い、見事一撃必殺を叩きこむことに成功。


魔石を切断されてはドラゴンの強味である高い回復力も行かせず、ガラクタの様に崩れ落ちた。

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