三百五十三話 零れる本音

「貴様ら……よくも同胞たちを」


リネアたちが囚われていた部屋の入り口から、十数体の上位種達と、特徴的なオークが現れた。


そのオークは通常種ほど太っておらず、体には刺青の様な模様が入っている。


(あれは……まさか、オークシャーマンか?)


オークの上位種の一種であり、非常に珍しい個体。

分類としてはメイジと同じだが、上位種の中でもよほど知能に長けた個体でなければ、シャーマンへの進化はほぼ不可能。


アラッドの目の前に現れたオークシャーマンは、オークの頃から人の言葉を理解し、片言で話す事が可能な程知能が高く、シャーマンに進化してからは流暢に人の言葉を喋れるようになった。


(というか……ぷっ、はっはっは!!)


心の中だけに抑えようと思っていた笑いが、堪え切れず零してしまった。


「きっしょ!!!!!」


アラッドが思わず口にしてしまった言葉が洞窟の中に響き渡り、空気は静寂に包まれた。


「……き、貴様ぁあああ!!!!」


少しの間を置いて言葉を理解したオークシャーマンは、激情に駆られた。


アラッドは口に出してから、いくらモンスターが相手とはいえ、少々申し訳ないと思った。


だが……通常種程太ってはいないが、腹は中途半端にぽっちゃりしている。

そして似合わない中二病感あふれる刺青が入っており、顔も……一般的なオークや、その他の上位種と比べれば人寄りだが、それも中途半端過ぎることもあり、アラッドの感想はあまり否定できる内容でもなかった。


そんな余裕過ぎる言葉を聞いてしまい、囚われの身だったリネアたちの緊張感は和らぎ、小さく噴き出して笑ってしまう。


「っ~~~~~~……お前たち、そのガキとウルフは殺せ。後ろの女たちは傷付けるな」


オークシャーマンの宣言と共に、上位種たちが一斉に襲い掛かる。


「クロ、リネア嬢たちを守っててくれ」


「ワゥ!」


囚われていたリネアたちが「自分たちも戦う!!!」と口にする前に、アラッドは動き出した。


(一応、視る眼はあるみたいだな)


上位種たちは全員強化系のスキルを発動していた。

身体強化だけではなく、個体によっては腕力や脚力強化のスキルも同時発動。


全身に魔力を纏っており、属性魔力を己の武器に纏っている個体もいる。

全ての上位種が本気でアラッドを殺しに掛かっている中……狙われている本人は、薄っすらと笑みを浮かべていた。


決して上位種たちを侮ってはおらず、同じく強化系のスキルを発動し、刃には魔力を纏っていた。


そして……スレッドチェンジを発動し、通常の糸を鉄糸に変化。

当然生み出した鉄糸にも魔力を纏うので、消費量は増える。


だが、クロがいるとはいえ、一体でも後ろに通さないことが重要。

万が一オークシャーマンも逃がしたくないため、早期決戦を選択。


とはいえ、やることは単純。

何も警戒なしに突っ込んでくる上位種達の脚に、鉄糸を引っかける。


アラッドのことを知っている人物であれば、そういった妨害系の技が頭に浮かんだかもしれないが、いくらオークシャーマンの知能が高くて人の言葉を流暢に喋れたとしても、目の前の人間の詳しい情報までは解らない。


「「「「「「「「っ!!??」」」」」」」」


突っ込んで来た前衛タイプの上位種たちは……思わず「ド〇フか!!!」とツッコみたくなる程、面白い具合に全員転んでしまった。


そうなってしまえば、後は単純作業。

全て首、もしくは頭部に狙いを定めて、ちょっと魔力を贅沢に使った斬撃を放ち、半分は切れ味抜群の鉄糸で首をスパッと切断。


普段であれば、転びそうになっても、なんとか耐えられる個体もいる。

しかし、自分たちの事実上トップであるシャーマンの怒りを感じ、少々全力出し過ぎダッシュをしてしまった。


その結果、頭が地面に向かう速度があまりにも早過ぎた結果、その後に飛んでくる攻撃に対し、全く反応出来ずに戦闘不能へ追い込まれた。

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