二百五十四話 内部進学生と合流

アラッドは王都の学園に入学すると決め、猛勉強を開始し……雇われた教師も、これなら首席で入学することも難しくないと断言した。


ちなみに、アラッドが十五歳になるまでの間……あの錬金術大好き人間であるアッシュは、意外にも積極的に狩り……薬草などの採集を行っていた。


元々、アラッドが錬金術に必要な素材を自ら集めていたこともあり、それに習ってアッシュも十歳になってからは護衛の兵士と魔法使いを連れ、森の中で暴れていた。


暴れていたという言葉には少々誤りがあるかもしれないが、一度アッシュの狩りに付き添ったアラッドは、その戦いぶりに戦慄した。


(戦うのが上手い……そういうレベルじゃないな。まさに天賦の才か)


人とモンスターとでは、対処方法が違う。

アッシュも最初から上手く戦えていた訳ではないが、アラッドがアッシュの狩りに付き添ったのはアッシュが狩りを始めるようになってから二か月後の話。


その時には、既にEランクのモンスターを軽々と葬るようになっていた。


勿論、双子であるシルフィーもEランクのモンスターを相手に苦戦することは殆どない。

しかし……アラッドの目から観て、どう考えてもアッシュの方が余裕を持っている様に感じた。


(ドラングにとって、俺が同じような存在なんだろうけど……ちょっと、シルフィーが可哀想に思えてきたな)


シルフィーはドラングの様に、アラッドを……アッシュも自分の踏み台にしようなんて考えてはいない。

ただ、それでも絶対に越える存在と認識している。


その心意気にはアラッドも感心している。

感心しているが……シルフィーがアッシュに追い付けるイメージが浮かばない。


アッシュは相変わらず、自分を鍛えるための鍛錬にはあまり興味がない。

それでもモンスターの素材、魔石が錬金術の素材になるため……モンスターの狩りには非常に積極的。


順調にレベルを上げ、シルフィーとの差が更に広がっている様に感じる。


そんな二人も……アラッドと同じタイミングで王都に向かい、学園の中等部に入学する。

二人とも実技の方は問題無く、座学に関して……シルフィーはあまり得意ではないが、絶望するほどのバカでもないので、座学の教師は合格は間違いないと断言した。


三人は冬真っ只中……王都に向かい、学園の試験を受けに向かった。


王都までそれなりに距離はあるが、今回の旅にはクロが付いてきている。

ブラックウルフからデルドウルフに進化し、Aランクモンスターになったことで……旅の間、基本的にモンスターや盗賊が襲って来ることはない。


やろうと思えば、体を小さくして他者に与える圧を抑えることも出来る。


ただ……旅の間はそんなことをする必要がないので、強者の圧を零しながら先頭を歩く。

そんなクロのお陰で、王都までの道のりの間……無駄にモンスターや盗賊と戦う必要がない。


(……若干ピリピリしてるな)


あの模擬戦から、二人の仲は……悪くはなってない。

悪くなってないが、あの模擬戦の前から元々仲が良くなかった。


馬車の中には子供組とフールしかおらず、フールもこの若干ピリピリした空気に汗を浮かべていた。


(二人が受かるのは間違いないだろうから、そこで問題が起きるとは思えない……起きるとしたら、試験の結果か?)


試験結果は、試験を受けた三日後に学園内に張り出される。


そして結果が発表されてから約二か月後に、学園生活が始まる。

その際に、アラッドは高等部からの入学となるので、中等部から上がってきた内部生徒合流することになる。


(別にアッシュは試験の結果なんて、受かればそれで良いと思ってそうだけど……シルフィーはいい成績を残したい。アッシュより良い結果を残したいと思ってるだろうな)


三人が入試を受ける学園、パロスト学園では成績上位十名だけが正確に発表され、後の合格者の順位は発表されない。


「俺の勝ちですね」


「……そうだね、僕の負けだ。もう一回やろう」


二人はピリピリした空気から思いっきり目を背け、食事の時間になるまでリバーシで遊び、時間を潰し続けた。

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