二百五十三話 猛勉強

「学生による大会は、大体学園に入学してから、三か月後に行われる」


「最短で三か月後には、騎士の爵位を頂けるということですね」


「その通りだ。アラッド程の強さがあれば、その時点でもう学園で学ぶことは何もないと判断し、飛び級で卒業することが可能だ」


現在学園に在籍する生徒の中で、頂点に立つ女子生徒も即卒業して騎士となる資格を持っているが、彼女はその権利を使用せず、三年生とし終わりを迎えるまで卒業するのは待つと決めている。


「学園によってはそれ許さないところもあるが、私の知り合いが学園長を務めている学園は、それを許可している」


「……バイアード様、是非その学園長様に話を通していただけないでしょうか」


アラッドは腰を九十度に折り、バイアードに頼み込んだ。


「はっはっは!!! 任せなさい!!!! しっかりと話を通しておこう」


しっかりとお金を払ったとはいえ、バイアードはアラッドにキャバリオンを優先的に造ってもらった恩がある。


何なら、試験を免除するよう学園長に申し出ようか? と提案した。

しかしアラッドはその提案を却下。


「学園の入学は、自身の実力で手に入れます」


「そうか……無粋な提案だったな」


アラッドの実力、賢さであれば試験など必要ないとバイアードは考えていたが、本人が免除を拒否したのであれば、仕方ない。


「アラッド……君の気持ちは嬉しいけど、最低でも三か月は冒険者になる期間が遅れるんだ。本当にそれでも良いのかい」


アラッドの実力があれば、その三か月の間で冒険者ランクを駆けあがるのも不可能ではない。

たった三か月かもしれないが、アラッドにとっては重要な三か月なのだ父親は理解していた。


「えぇ、勿論。それに……少しの間ですが、学園で過ごすのも悪くないかと。良い経験になるかもしれません」


自分が絶対にその令嬢を打ち破り、騎士の爵位を国から貰うことを前提で話す。


その自信満々な態度にフールだけではなく、バイアードも頼もしさを感じた。

ただ、バイアードは一つだけアラッドに忠告する。


「アラッドよ。お前の実力は十分解っている……いや、アラッドのことだ。まだ力を隠し持ってるかもしれないな」


「ははは、そんなことありませんよ」


そんなことありありだが、簡単に人に言いふらす様な力ではない。


「だが……それでも、あまり現在の学生のトップ……フローレンス・カルロストを侮らない方が良い」


バイアードは今年、王都で行われた学生による大会を直に観たが……フローレンス・カルロストはその中でも頭一つ跳び抜けている……という言葉が生温く感じるほどの実力を持っていた。


(自身の実力や才能に胡坐をかくタイプではない。来年には更に実力を付けているだろう)


だが、バイアードが嘗めてかからない方がいいと伝えたためか、アラッドの体から闘争心が湧き上がる。


「それでも、自分はフール・パーシブル侯爵の令息です。フローレンス・カルロストを倒し、最短最速で騎士の爵位を手に入れます」


「良い表情だ」


バイアードは自領に戻った後、早速知り合いの学園長にアラッドの事を手紙に記し、もしフローレンス・カルロストに大会で勝利すれば特別に卒業させてほしいと伝えた。


アラッドの噂は学園長の耳にも届いており、本当にフローレンス・カルロストを大会で打ち破ることが出来れば、特別に卒業を許可すると返事を返した。


そしてそのアラッドは…………学園に入学する際に、首席で合格するために座学について猛勉強していた。

今まで十五歳を過ぎれば、直ぐに冒険者になると決めており、フールもそれを承認していたので勉強をする機会はある程度歳を重ねれば必要ないと判断され、鍛錬や錬金術に時間を費やしていた


とはいえ、勉強始めるようになってからも鍛錬やモンスター狩りに錬金術、キャバリオンの制作を続け……ようやく学園に入試の時期が訪れた。

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