二百四話 圧倒的な判断速度
(こやつ……分かってはいたが……うむ、色々とおかしいな)
純粋な剣技だけでは熟練の剣技を持つ老騎士には敵わないと解り、攻撃魔法を使い始めたアラッド。
剣技を使いながら魔法も使う……魔法剣士という存在は実在する。
実際に冒険者でも騎士でもそういったスタイルで戦う者はいる。
だが、バイアードの経験上……アラッドの年齢でハイレベルな剣技と攻撃魔法を同時に扱う者はいない。
いなくて当然だが、目の前の小僧は平気な顔で攻撃魔法を連発しながら剣技スキル技を発動する。
「アッドスラッシュ!!!」
「ぬぅぅ!! ふっ!!」
一つの斬撃に複数の斬撃の威力を乗せた一撃を放つが、バイアードは余裕でそれを受け止め……弾き飛ばす。
だが、背後からファイヤーランスが放たれていた。
しかしそこは歴戦の騎士らしく、神速の速さで察知して上に跳んで躱した。
「ぜあああッ!!!!」
そこでアラッドは躱され、自分の方向に飛んでくるファイヤーランスを上に蹴り飛ばした。
「ッ!? せい!!!!」
魔法を素手で消し飛ばす、もしくは方向転換させるものは存在する。
ただ……何度でも思ってしまう。
まだ十にも達していない子供がそれをするのかと。
アラッドが放ったファイヤーランスは未熟な大きさや密度ではなく、しっかりと形と質が保たれたプロの炎槍。
しかし、そんな炎槍もバイアードは一太刀で粉砕。
「はっはっは!!!! 本当に君は面白いな!!!!」
「それはどうも、ありがとうございます!!!!!!」
バイアードは心の底から自分に対し、勇猛果敢に……多種多様な方法で攻めてくる子供に賛辞を送った。
そして賛辞を送られたアラッドはそれが本当に心の底から思っているのか、それでもお世辞なのかは分からないが……それでも人生の、戦闘者としての先輩に褒められるのは素直に嬉しかった。
嬉しいが、まだ一つも有効打を与えられていない状況がアラッドの闘争心を更に燃え上がらせる。
「ふん、やっ!!! おらっ!!!」
「ぬっ!?」
追加で腕力強化のスキルを使用し、魔力の残り残量を気にせずに攻め続ける。
(持っているスキルの数も多い……これも、アラッド君の努力の結晶なのだろうな)
一太刀一太刀を受け止めるごとに、今までどれだけアラッドが鍛錬を重ねてきたのか感じる。
(そろそろ……私からも攻めさせてもらおうか!!!!)
今まで殆ど守りや回避に徹してきたバイアードだが、ここでギアを上げて攻撃に転じる。
「くっ!!??」
一撃一撃が重く、受け止めるのは得策ではない。
直ぐにそう判断したアラッドはチェーンやウォール系の魔法を多用し始め、バイアードの動きを妨害。
そしてバイアードの動きがほんの少し乱れた瞬間を狙い、渾身の一太刀を入れていく。
(この人……ヤバ過ぎるだろ!!!!)
妨害や防御魔法を駆使し、渾身の一太刀が入ったと思った。
だが……その一撃でバイアードの鎧に掠り傷すら入らなかった。
「ッ…………バイアード様、さすがに堅すぎませんか」
「ふっふっふ……君なら、からくりが解るだろ」
「まぁ、なんとなく予想は出来ますが」
アラッドが渾身の一撃を入れた場所には、魔力が一点集中されており……更には硬化のスキルが使われていた。
(そりゃ剣になんも属性魔力を付与してない状態じゃな……けど、あんな高速戦闘の間に狙われる個所を一瞬で判断できるか?)
バイアードは狙われた箇所以外にも魔力を集めていた……訳ではなく、狙われた左わき腹にしか硬化を付与した魔力を集めていなかった。
「だからって……いや、とにかく凄過ぎますよ」
「それはこちらのセリフだ。君の様な七歳児はこの先一生現れないだろう」
存在自体が特殊過ぎる為、それは間違いなかった。
(褒めてくれるのは嬉しいけど、それでもやっぱり良い感じの一撃は入れたい、な!!!!!)
体技スキル技、縮地を使用してもう一度果敢に攻める。
(まだ糸は使わないか……だが、それも良し!!!!)
真っ向からの勝負は大好物であり、獣の様な好戦的な笑みを浮かべながら迎え撃つ。
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