百四十二話 厄介な三拍子
「おぉ~~~、こいつは珍しいな」
「アラッド様!!!」
「大丈夫だ。後ろで待っててくれ」
お茶会から戻ってきてからの日々は特に変わらず、領地でオークションが開かれるまではいつも通りの生活を送っているアラッド。
そして今日も普段通り、兵士二人と魔法使い一人の護衛たちと一緒に森の中を歩き、モンスターを狩っている。
そんな中、今日は初めて遭遇するモンスターとご対面。
「なるほど、確かに大きいな」
そのモンスターの名はサイクロプス。
一つ目の巨人。
ランクはCであり、攻撃力と防御力が飛び抜けている。
速さはあまりないが、それでも一つ一つの攻撃が当たれば骨は砕かれ、大ダメージを負ってしまう。
下手すれば即死する場合もあり、護衛たちが焦るのも無理はない。
しかし今まで何度かCランクのモンスターと戦って勝っているアラッドからすれば、自分の力を振るうのに丁度良い相手だった。
だが、それでも普段から倒し慣れているEランクやDランクのモンスターではない。
それを考慮してクロと一緒に戦うと決めた。
「クロ、好きなように動いて良いぞ」
「ワウッ!!!!!」
好きなように動いて良いという指示を貰い、テンションが上がったクロは身体強化のスキルを使って早速サイクロプスに襲い掛かる。
「グゥオオオアアアアアアッ!!!!」
サイクロプスも殺る気満々のクロに対抗し、戦意を漲らせながら巨大な槌を振り下ろす。
スピードタイプのクロはその攻撃をあっさりと躱し、鋭い爪でサイクロプスの体を引き裂く。
「おっとっと。凄い揺れるな」
クロはあっさりと躱したが、サイクロプスの一撃が地面に振り下ろされたことで辺りの地面が揺れた。
そして振り下ろされた場所は大きく陥没しており、どれだけサイクロプスの一撃が恐ろしいのかを示していた。
「防御力は高そうだし、糸を使って攻めるか」
接近戦も得意とするアラッドだが、それでも目の前のサイクロプスとまともに戦うのは分が悪いと感じた。
子供ながらにある程度のレベルまで鍛え上げたアラッドだが、目の前のサイクロプスは余裕でアラッドのレベルを越えている。
(やっぱりそう簡単には止まってくれないみたいだな)
糸を使ってクロのサポートを行うが、一度もがっつりサイクロプスの動きが止まることはない。
通常時のサイクロプスであれば、ほんの少しの間動き止めることに成功したが、糸を警戒したサイクロプスは即座に身体強化のスキルを使った。
(状況判断の速さも高いな。あぁいうモンスターってランクが高くてもちょっと頭が悪いって聞いてたけど、案外そうでもないみたいだな)
頭の良さ悪さに関しては個体によるが、野生の本能的な部分でサイクロプスは糸の脅威を察知。
先に後ろでこそこそと動いているアラッドから潰そうと思ったが、それを許す程クロは間抜けではない。
「ッ!?」
鋭い爪で確実にダメージを与えていくが、五秒ほど経てばサイクロプスの傷は塞がってしまう。
「アラッド様! サイクロプスは治癒力が高いので大きなダメージを与えなければ、直ぐに傷が治ってしまいます!!!」
「うん、どうやらそうみたいだな」
糸でクロをサポートしているアラッドもそこには気付いていた。
(攻撃力が高くて、防御力も高い。それに加えて治癒力まで高いと来た……動きはそこまで速くなくて厄介なモンスターだな)
世間一般的には遭遇したくないモンスターであり、後ろで待機している兵士や魔法使いはいつでも参戦できるように構えている。
ただ、クロの攻撃によって確実にダメージを与えられていると解っているアラッドにとっては、このまま状況が続くのであれば十分に勝機がある戦い。
(魔力を纏っても結構あっさり引き千切られるのは少しショックだし、ストリングショットもスラッシュもそこまでダメージを与えられてないが……ちゃんと血は出てるんだよな)
油断してはならない。
それは分かっているが、アラッドはこの戦い負けるとは全く思っていなかった。
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