私もあなたで栗パーティ!
喧騒で目が覚めた。
ログハウス、と言うんだろうか。木造の部屋の中でテーブルを囲んで、人々がどんちゃん騒ぎをしている。アキラを探す。アキラは俺のすぐ横の椅子で眠っている様子だった。流石に理解が追いつかなくて、とりあえずアキラを起こしてみる。
「んー・・・。」
少しうめいて、アキラが目を開けた。2人とも無事だったことにひとまずほっとして、もう一度室内を見渡した。
窓はない。カーテンや灯りといったものも無い。あるのは、テーブルと椅子。あとテーブルに乗っている山盛りの料理。その材料を見ると、予想できるものについては全て、栗、栗、栗。モンブラン、栗のコロッケ、焼き栗、甘栗、栗まんじゅう、その他もろもろ。周りで騒ぐ人々は、なぜか顔がわからない。顔、と言うよりかは、首から上が不明瞭なのだ。
「カナタ、ここって、もしかしてだけど、さ。」
「多分、あの木の中。」
「俺ら・・・帰れないの、か?」
「都市伝説の通りだとするなら・・・。」
アキラが大きく取り乱したのがわかった。泣きじゃくり、やだ、帰りたいと何度も呟いている。
「ご、ごめん、カナタ、俺、俺が、行こうなんて、言わなきゃ・・・。」
「大丈夫だよアキラ!まだ帰れないと決まったわけじゃ・・・。」
そう言いながら周りを見渡して、絶望した。この部屋には窓がないどころか、入ってきたはずの扉もない。完全な、密室・・・。
「ありがたや、ありがたや、それ食べ尽くせや栗の山、永久に続けや栗パーティ!」
喧騒が再び聞こえてきた。それと同時に、テーブルを囲む人々の姿もはっきりしてくる。隣でアキラが小さく悲鳴を上げるのが聞こえた。俺も思わず息を呑んだ。
人々はとても不気味な、とても恐ろしい、おぞましい姿をしていた。体はひとつしか無いのに、胸から上が二つに分かれ、頭が二つついている。粘土で作った人形のように歪で、服の柄もマーブル模様みたいに混ざり合っている。手足もありえない方向に曲がり、虚な目はただ眼前の食事だけを見つめている。そして、歌を歌いながら、栗の食事を次々と口に運んでいく。
言葉が出なかった。恐怖、絶望、後悔、驚き、色々なものが混じり合って、もうどう表現すればいいのかもわからなくて、アキラと2人、ただそこに座り続けていた。急に空腹を感じた。こんな時だというのに、絶対に食べてはいけないとわかっているのに、体が料理を求めている。目の前にあった栗まんじゅうに手を伸ばし、頬張った。
「食べ尽くせ、食べ尽くせ、まだまだ減らぬ栗の山、私もあなたで頬張れ喰らえ、永久に続けや栗パーティ!」
歌が変わった、と思った瞬間にアキラとぶつかった。胸から下が、締め付けられ、捻られ、粘土の人形でも作るように。手はあらぬ方向へ曲がり、足もメキメキと音を立て、身体中かき混ぜられるような、耐え難い苦痛と共に、アキラの恐怖と後悔が伝わってきた。
***
腹が減った。
腹が減ってしょうがない。
ああ、なんて美味しそうな、おあつらえ向きな栗の山だろう。
これを食べれば、腹も満たされるに違いない。
歌え、喰らえ、永久に続けや栗パーティ!
大きな栗の? 旭 東麻 @touko64022
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