懐かしい味

久しぶりに

たけのことツワと鶏肉で炒め煮

残りご飯を茶粥にして

あとはキュウリの浅漬け

何となく心と身体が草臥くたびれていて

母の味が懐かしくなって


息子が「おっ!」といいながら

食卓に座る

いただきます!も、もどかしげに

口にしてから

「ああ〜懐かしい味だ〜」

と、しみじみつぶやく


ふふふ、ばあちゃんと

同じ味、まだ出せてる?

聞くと、「うんうん」

夢中で食べている

懐かしい味は

心にも身体にも優しい


山の家で酢水で手を濡らしながら

母娘三代でツワの皮を剥いた想い出

それでも、たくさん剥くからだろう

母の指先も祖母の指先も

アクで黒く染まっていたっけ


また作ろうねぇ

あの情景を瞼の裏に浮かべながら

わたしも箸をのばして、ひと口


そして、顔を見合わせて笑う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る