第65話 最終章-最終話 ワールドクエストオンライン


 静香は死んだ。

この手の中で冷たくなっていく静香を剣也は、ずっと抱きかかえる。

守れなかった。

強くなったと思っていた。

大切な人を守れるだけの強さは得たと思った。


なのに、結果はこれだ。彼女は死んだ。


『200億ポイントに達成しました』


*

「認めるっていったのよ! ええあなたの勝ちよ!」

静香との記憶、初めて会ったときあの時は、真っ赤になって怒ってたな。

*


『終わりの蕾が開花可能です』


*

「私はあなたと違って努力しなければ魔獣の一人も倒せないからね。あなたの倍頑張るわ。」

あの時もツンツンしてたけど努力家だなと思った。

*



『開花処理を開始してもよろしいですか?』


*

「でもいいでしょ。勝手に好きになるのは」

真っ赤な顔で、まくしたてられた初めてもらった告白

*


『はい

 ▶いいえ』


*

「たとえ世界が敵でも私は、私だけはあなたの味方よ」

*



「なぁ、静香、あの真っ赤で可愛い顔をもう一度見せてくれよ」

青白い顔をした静香の顔には、血は流れない。代わりに静香の頬を伝って流れるのは、涙

どれだけゆすっても彼女の顔はもう色づかない。


*

「折れないで、剣也」

*


剣也はゆっくりと静香を置く。


*

「勝ってね、あいつに」

*


辛い、苦しい。胸が張り裂けそうだ。

それでも、剣也は、立ち上がる。

それが彼女の望みだから。彼女の最後の願いだから。


『はい

 ▶いいえ』


この選択をしたら、受け入れてしまう。彼女の死を。

それでも俺は選択する。

これが最善だったと、この選択が最善なんだと。

もう変えることができない彼女の死こそ、が最善なんだと。

だから俺が選ぶのは、



『▶はい

 いいえ』



『選択されました。ギフト:終わりの剣が開花しました』


直後、王が吹き飛ばされ、壁に埋まり気を失う。

きっかり王は5分粘った。



『殺したのですか?、愚かだ。また人間は同種で殺し合う。なぜ手を取り合えないのか』


「あぁ、バカだよ俺は。でも静香は違う」

剣也は、閻魔を握りしめる。強く。


『何が違うと?』


「人間は、誰かのために死ねるんだ。誰かを守るために、自分以外のために死ねるんだ。その行為を愚かとは俺は言わせない」


『…』


「俺が証明するよ、彼女は間違っていなかったと」


剣也は、ENDへ向かって剣を構える。

居合切り、剣也が最も得意とする一刀


『では、証明してください。私を倒して!』

ENDの周りにシールドは張られる。破壊不能の絶対領域



俺が証明してみせる! 静香。

君は世界を救ったと! 君こそ英雄だと。


その一閃に切るという過程はない。

光すらも置き去りにして振り切られたその刀にあるのは、切ったという結果のみ

因果すらねじ伏せて、運命すら切り伏せる。

その剣に切れないものは存在しない。すべてを終わらせる剣。ゆえに終わりの剣


『え?』

気づいたときにはENDの体が真っ二つに切れていた。


『到達したのですね、おめでとう。御剣剣也』

ENDは半分になりながらも祝福を述べる。


「あぁ、静香のおかげでな」


ENDは光の粒子になって消えていった。


「終わったよ、静香」

達成感はない。

それを感じるためには、あまりにも失ったものは多すぎた。



直後剣也の前にファンファーレと共に大きく現れる文字


【Congratulation!! ゲームクリア!】


「ゲームクリア?」



「おめでとう、そしてありがとう。御剣剣也君」

光の粒子が消えたと思ったら、そこには、一人の男が拍手と共に立っていた。

30代ぐらいだろうか。白衣を着て研究者という感じの無精ひげを生やした男だ。


「あなたは?」


「少し時間がある。話そうか」


そして景色が一変する。

剣也が困惑していると、男が説明を始めた。


「ここは、記録の間、人類の歴史の保存場所。つまりはセーブデータだ」

そこには、シャボン玉のような泡の中にまるでテレビのような映像が所狭しと空中に浮いては消えを繰り返していた。



「順を追って話そう。まず私はこの世界を見届ける役として名ばかりの管理者として選ばれた人間だ、そしてここはゲームの中だよ」


「ゲーム?」


「その話をするためには、少し人類の歴史を話さなければならない」

そういって男は座り語り始めた。



 21XX年 人類は完全な意識のデータ化そして、実用的な人工知能の開発に成功した。

永遠の命を電脳世界で過ごし、肉体は、劣化しないように培養液の中につけていた。

機械たちは、農業をし、漁業をし、人間がやるべき仕事をすべてやるようになった。

人類についに働く必要のない時代が訪れた。



 もちろんすべての人間が、電脳世界に入ったわけではない。

しかし、多くの人間が電極でつながった電脳世界で過ごし、娯楽に勤しんだ。


 無限とも思える電脳世界で遊ぶように様々なゲームが開発された。 

そこで、ある一つのゲームが爆発的ヒットで波及する。

開発者不明。何のために誰が作ったのか。

そのゲームは、従来のゲームに比べて圧倒的なクオリティと現実世界を完全に模倣した仮想空間を実現した。


 しかし誰一人として最後までクリアできなかった。

プレイヤーたちは、畏怖と尊敬を込めてそのゲームをこう呼んだ。

【ワールドクエストオンライン】と。


 その間も人工知能は成長を続けたのだが、突如暴走を始めた。

すべての人類を半ば強制的に電脳世界に隔離したのだ。

施設に押し込められ電脳世界に幽閉される。

すべてを機械に頼っていた人類はあっという間に制圧された。


「そして始めたんだよ、このゲームを。目的はわからない。私はその幽閉された一人なのだが、私だけは管理者として世界の行く末を見守る役割を与えられた。

といっても私に与えられた権利は、誰に力を与えるか。そして最も大事なファーストクエストをどれにするかだけだった。」


「あなたが僕を選んで、ケルベロスを当てたんですか?」


「そうだよ、剣也君」


「私は、何度も挑戦した。クリアすれば人類を解放するという言葉を信じて。

だが誰もAランクダンジョンすら攻略できずに世界は魔獣に滅ぼされてしまうんだ。

時間制限があってね。一定時間を過ぎると魔獣があふれかえる。」


「そして、挑戦した回数も100を超えたあたりで君を見つけたんだ。御剣剣也君」


「俺ですか?」


「君に、Aランククエストを当てる。つまり、ケルベロスだね。すると高確率で狂戦士を取得したんだ、そして君は多くの人間を殺すことになる。しかしそれでも世界を救おうと、もがき進むんだ」


「そして何度もENDに挑戦する。しかしやはり勝てない。それだけでは」


『そこで、偶然が起きたのです』

一人の少女が現れる。 あれはEND?


『おめでとう、御剣剣也君 私はあなた方をこの世界で戦わせている存在です。ENDも私の仮想人格の一つですよ』


「久しぶりに顔をだしたな。そろそろ教えてくれるのか? なぜこんなことをしたのか」


『それはあとのお楽しみです』


「けっ! そういうと思ったよ」

そういってその男は話を続けた。


「そいつが言うように偶然が起きたんだ。世界が滅びた後、過去の記憶を消して偽りの記憶で再度挑戦させるんだが、御剣剣也お前さんの記憶の消去に一度だけ失敗した」


『電子回路に羽虫が入りこみましてね。小さなショートなので気づきませんでした。まさかそれがこの結果を生むとは思いませんでしたが』


「あぁ、完全とはいかなくてもほとんどは消えたはずだ。本物の記憶の断片。お前さんがあの世界に持って行った記憶だけは、こいつらが疑似的に作ったものじゃなく、本物だったんだよ」


夏美との思い出、そして狂戦士の過去、それがすべて実際にあったことだったと。


『では、そろそろ時間ですね。すべての人類を解放します。御剣剣也ありがとう、そして頑張ってください、人類の英雄よ』


『あ、そうそう。この最後の世界だけは記憶をそのままにしてあげます。お幸せに』

そういうと、その少女は消えてしまった。


「長かったな。お疲れ、剣也君。そしてありがとう」

男も消えてしまった。



そして剣也の意識も暗転する。


「ここは?」

 暗い一室のカプセルの中で剣也は目を覚ます。服は着ていないが、横に用意されている。

それにこれは刀? 武器も一緒に用意されていた。

刀をもって、服を着て外にでると、同じようにちらほらと同じ服を着た人間が歩いていた。


 そして俺の隣の部屋から出てきたのは、


「しずか?」


「え? 剣也?」


剣也は、静香に駆け寄ると力いっぱい抱きしめる。

生きていた。

電脳世界と聞いて、もしかしてと思っていたけど、やっぱり生きていた。


「あれ? 私死んで、あれ?」


「静香」


剣也は静香を抱きしめてあの時の続きをする。

静香も黙って受け入れる。これは夢? それともここが死後の世界?


「うまくなったね」

剣也は笑う。


「さ、三回もやればね!」

静香も真っ赤になって笑う。


そしてその後ろにもっと真っ赤になっている女性が一人。

「剣也? 浮気なの?」


「な、夏美! いや、違うんだ。これはえっと、とにかく違うんだ」


「夏美さん。側室としてなら受け入れてもいいわよ。英雄色を好むというもの」


「ちょ、ちょっと静香! 話をややこしくしないでくれ」


「「剣也!」」


「「どっちを選ぶの!?」」


▶夏美

静香


or


夏美

▶静香



「り、両方で」

冷や汗を流しながら笑って答える。


「「剣也!!」」


 身の危険を感じた剣也はその場を後に逃げだした。

しかしその顔は笑顔であふれる。静香は生きて、夏美は元に戻っていた。

これほどうれしいことはない。


「あれは王?」

施設を走りながら王を見つけた。

一人の少女と抱き合っている。

良かった。きっと王も会えたんだな。今は二人にしてやろう。


そして施設の扉の前に立ち、扉は開かれる。朝日が眩しい。

剣也は外へと一歩を踏み出した。




 直後地面が揺れる。

大きな地震。まるであの時の。なんだ? 何が起きた?

そして、現れたのは巨大な塔、なんども見てきたあの見覚えのある塔



「まさか!」

剣也は導かれるように近くの塔へと駆け寄った。

そして塔に触れる。



『No00001 御剣剣也 認証しました。セーブデータがありますがロードしますか?』


『はい

▶いいえ』



*

『御剣剣也ありがとう、そして頑張ってください』

*


そういうことか。

剣也は笑う。すべてが繋がった。

なら俺が選ぶのはもちろん…



『はい が選択されました。頑張ってください。人類の英雄』

システム音声は、確かにうれしそうにそう答えた。




空間を引き裂く音と共に門が現れる。

そして現れるのは、もちろん。



「よぉ、久しぶりだな、糞犬。今回の餌は世界を救うぞ」


人類の英雄が、刃を構えて前を向く。

その熱く燃える瞳には、微塵の恐れも映さない。

 

END


















あとがき

完結しました。

ここまで読んでくださった方々 本当にありがとうございました。

皆さんのおかげでなんとか予定通りの完結までもっていくことができました。


オンラインというタイトルで、気づいている方もいたかもしれませんね。

露骨すぎたかも。


それでも処女作ではありますが、満足いく完結ができてとてもうれしく思っています。

もっと書きたいことたくさんありますが、この物語を通して皆さんと繋がれるのもこれが最後です。


次回作はもっと面白くなれるよう勉強してまた浮上しますので、待っていてください。

この作品に宣伝いれるかも?

まぁまだ未定なのでなんともですが。



それでは、みなさん本当にありがとうございました。

最後になりますが、この作品のテーマは選択です。

どちらでもいいんです。自分の意志で選択する。それが次を作るから。ではみなさん


この作品を

『▶★をつける?

  ★をつけない?』


(笑)






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【完結】世界《ワールド》クエストオンライン 現実にダンジョンが、現れた! ~英雄という名のインフルエンサーが世界を救うまで~ KAZU @kazu-ta

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