危険な位普通の二人

@ankokuorenji

第1話 タコも煮えるお天道様



「いま、ここで倒れてやろうかしら」




思わず私はそう呟いた。


隣の水路に顔を突っ込めるのなら

今すぐにでも突っ込んでやりたい

頬は林檎のように染まり

頭皮はジリジリと音をたてて焼ける。

わざわざ田んぼのど真ん中に来た自分を恨まざるを得ない

何故自分がこんな所に居るのかと言う

と、簡単に言ってしまえば仕事だから

である、知人から仕事を斡旋され

今回、イギリスからわざわざ日本の

灼熱の夏の時期に来たわけだ。

その結果、ゆでダコになり掛けていた

だが、そんな状況でも私は動かない

ここまで来た道がとてつもなく遠くに感じたからだ。

それでもここで倒れる訳にもいかない

私は持っていた書類で日除けにし

ヒリヒリとした肌の痛みを感じながら

前に倒れる様に歩みを進めた。

すると、少し遠くから


「Sさあん、Sさあん」


と、少し張り上げた声が聞こえた。

顔を上げると日陰に相棒のジョンが立

っていた、私も返事をしようと思った

が、そんな気力もないので少し小走り

で彼の所に駆け寄った。

「やぁ、ジョンどうしてここに?」

「どうしてって、貴方の仕事を

友人として手伝いに来たんですよ!」

「お、それは有り難い!

嗚呼、これ書類と資料!」

私は日除けにしていた紙を手渡す。

いつの間にか先程までの気怠さは薄れていた、ジョンはその資料を見ると

顔をしかめ資料を返してくる。

「情報、少なすぎませんか?」

「あぁ、やっぱりそう思うよね!

私が可笑しいのかと思ったよ!」

「都市伝説の調査、やはり断った方が

良かったのでは?」

「わざわざ、イギリスから

日本に来て言うかい?

出来る限りやってやるさ」

紙に書いてあるのは都市伝説の情報

【クトゥルフガイ】の情報だ。


「二年位前から広まった都市伝説

""見た目は成人男性で背中から触手

しかし、目撃情報だけで証拠なし

場所はこの田んぼで時間帯は深夜""

たったこれだけですか………

その他は都市伝説による影響とか

真偽の分からない噂ばっかり!」

「まぁ、依頼人も信じちゃないサ

それでも依頼してきたのは

ヤクザが絡んでる可能性があるから」

JapaneseMafiaジャパニーズマフィア………

んな、末恐ろしいモンが都市伝説に

絡んでるんですか?信じがたいですね

ただでさえ真実か疑わしいのに?」

「勿論、証拠も無しに言ってないさ」

私は資料を軽く叩きながら言った。

「実はヤクザや半グレの活動が

二年前から活発的になってきたんだ。

そしてその集団の中に外国人が

混じり始めたのも二年前

クトゥルフガイ込みの都市伝説が

新たに出始めたのも二年位前!」

「確かに、偶然にしては被り過ぎです

けど、証拠としては弱いのでは?」

「確かにね、ジョン君の言う通りだ

でも、決めつけは良くないと思うな!

こう言う物から真実を見出だす物さ!

さてさて、ジョン君、ここを読んでく

れたまへ!」


ジョンは少し戸惑った後、私が指差し

た部分を読み上げる。

ソコはこの都市伝説による影響が書いてあった。


「探偵様へ、無関係かもしれませんが

この頃、学生達の間で売春が横行して

います、所謂パパ活と言うものです。

しかも、それにも都市伝説が絡んでお

り、今回の依頼とも関係している可能

性があるかも知れません………」

「ここの売春のトコロ!

ここになヤクザが絡んでるんだヨ!

このトコロ、学生が非行に走る原因が

ヤクザの様なアッチの奴らに勧誘され

たからみたいなんだよねぇ」

「んなコト何処で知ったのやら……」


現代、何処から情報が漏れでているか

分からないものである。

真偽の程は怪しいがこんな情報が

10も100も出てきたら信じるしかなかろう。


「んで、そのクトゥルフガイとは別に

キャンディパパって言う都市伝説があ

るんだヨ、キャンディを配るって言う

都市伝説

一見、無害だけど受け取った人は

行方不明になるってウ・ワ・サ

行方不明になっていないヒトは

麻薬中毒の様な症状を起こし

いずれ、行方不明になる………

そのキャンディを作っているのは

ヤクザ、もしくは何処かの国の

組織の可能性が高い!」

「クトゥルフガイとの関係性は?」

「ソコはちょっち置いといてくれ!

だけど、関わっているのは

ほぼ確定と言ってもいい!

この辺は知人の事情もあっから

ジョン君と言えども簡単には

話せないんだよね!」


私がそう言うとジョンは不服そうにし

ながらも素直に引き下がってくれる。


「それより、高校の生徒から聞き込み

は出来た?俺だと顔の傷のせいで聞き

込みなんて録に出来ないからな!」


私には昔の仕事で負った古傷がある。

薬品を被ったのだ。。顔の右側が爛れ

目の皮膚がくっついてしまった。

サングラスで目は隠しているものの

事情を知らない物にとっては

恐怖の対象でしかないだろう。

それに比べてジョンは正に好青年!

(まぁ、アラサーなのだが)

人からの信頼を得やすい

それを利用して今回依頼をされた

高校の生徒への聞き込みをお願いしていた。


「最近、肝試しが流行ってるとか

あと、血溜り事件とか肉塊事件とか

そう言う話が多いらしいですね。」

「ふむ、その事件はここに来る時に

チラッと聞いたな、よし、今夜直接

ここの田んぼに行って都市伝説を確か

めよう!それまでにその事件も調べて

みようか!」


私がそう言うとジョンはあからさまに

嫌な顔をしてやめましょうと制してく

る、ジョンは正直言ってこう言う類い

の話が苦手である理由は殺せないから

らしい、殺せたら怖くないのか??


「仕事の為だ、なんなら君は来なくて

もいいぞ、俺1人でまた来よう。」

「いや、危ないんで着いていきますよ

それに、仕事ですから。」

「うん、ありがとうね

じゃあ、ホテルに戻ろうか

このままだと熱中症になっちまうよ」


私は田んぼに背を向けて歩き出す。

すぐ後ろに田んぼがあるなんて

信じられない位大きな道路が広がって

いた。

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