第10話 嫌な予感はよく当たる


 「奈々子ちゃんが俺と翔太のこと忘れてなくて!准と一緒に忘れられてたらどうしようかと思って、ここに来るまで不安だったんだから。あはははは」


と仁志が言うと、春の陽気に包まれてポカポカしたあったかい空気が、一気に凍り付いた。

 だが、その状況に気づいていない仁志は、一人呑気に笑っていた。


翔太は心の中で

「落ち着け俺。仁志に何を言っても意味がないからと言って、どついてはいけない。それにここは病院。ここは病院!!」

と自分に言い聞かせていた。


准は

「嫌な予感が当たった。やっぱり仁志を連れてくるべきじゃなかったな」

と准は心の中ですごく後悔していた。


奈々子は、なんとも言えない顔で下を向いていた。


准は奈々子のことに気づくと、

「そうだ、奈々子。昨日の検査結果どうだった?」

と准がさりげなく、奈々子に訊いた。


「右足首と左手首を骨折したけど、もう骨がくっついてるみたいだから、左足首は二日後ギブスとって、リハビリを始めるの。

手首の方はもう少し安静にさせといたら問題ないだろうって。

あざとか擦り傷とかは多いけど、痕が残るほどの傷は無いみたい」


「そっか、跡が残るほどの傷がなくて良かったね」


奈々子が説明すると、翔太がそう言った。


「じゃあ、始業式までには退院できそう?」

と仁志が訊くと、


「十日後ぐらいには、なんとか退院できるみたい」


「それなら、始業式までになんとかなりそうだね」


「うん」


と奈々子と准が話した。


「でも、准から五日間も目を覚ましてないって、聞いた時はどうなる事かと、仁志と心配してたんだよ」


と翔太が言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

記憶がなくても君が好き 古味矢川 侑 @KomiyagawaYu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ