第10話 悪神との決着

「で、どうやって倒すんですか?」


俺は腰を抑えながら、神様に尋ねる。


『神格の違いからして、我のほうが強いのは確か。けど、ちょっと色々な事情から我はいま力を使えないので、お前に力を授ける。授かったら、なるべく早くあいつの首を掴んで頭を叩け。数度叩けば、煙か何かになって消えていくだろうから。』


「なるほど……なんか分かったような何もわからないような気がする。じゃあ、なる早で終わらせて、飲み会自体から抜け出しますか。」


俺はみんなが酔っ払っているのを横目に、部屋の端っこにへばりつくに近づいていく。


『よし。じゃあ、1、2、3で行くぞ。』


「オッケー」


俺は神様と目を合わせて頷きあい、ソレの方を向く。


『1』


ゴクリ


『2』


ドキドキ


『3、GO!!』


よしきたっ!!!


俺は神様の勢い良い声を聞くと同時に、飛び出してソレに飛びかかる。


神様の力を付与したといっても、別に体が光ったりすることはなく。本人的には変化の一つもなかった。


ただ、明らかにおかしいのは。


「と、とったぞー」


逃げようとするソレを掴めていること。


掴んだ感触と言えば、温度もなにもないのになにか逃げ出そうとする抵抗感と、ほどよい触感があって、気持ちが悪い。


触ったことはないが、なめことかを素手で掴んだらこんな感じなのではないだろうか。


『よくやった! はやいうちに頭を叩くんだ!!』


神様に言われて、俺は少し遠慮がちにソレの頭を叩く。


ふにゅん


そんななんとも言えないさわり心地と、軽い反発がある。


えい、えい、えい


俺は未知の触感に顔をしかめながらも、ソレを叩き続ける。

ちょうど10回叩いた時。


「うきゃぁ……」


そんなか細い声とともに、ソレは黒いモヤになって消えていった。


「お、終わった?」


俺は自分の手を握ったり開いたりして感触を確かめながら、つぶやく。


『あぁ。お疲れ様。』


神様が微笑みながら労いの言葉をかけてくれた。


よ、良かったぁ。これで世界オレの平和は保たれた。


俺はそうほっと胸をなでおろして、頬の汗を拭う。


『ほんとにおつかれさま。今後もたまにくるかもしれないけどよろしく……ボソ。』


神様がこちらもやりきったという顔で、満足そうに微笑んで言う。


「ありがとうございます……って、おい!? 今なんつった? ボソって言ってんのも聞こえてんだぞ!!」


一瞬惑わされそうになったが、聞き逃さねぇぞオイ!!!!

おま、ふざけんなよ!!?

俺の平和なキャンパスライフに何してくれちゃってんの!!!!!!?


『な、なんのことかな〜』


神様は露骨に視線をそらして、吹けもしない口笛を吹いて誤魔化そうとする。


決めた。俺こいつ殺す。神とか関係ない。

本体であろう木の像を明日の可燃ごみの日に出してやるんだ。


オレハ、ツヨク、ケッシン、シタ。


『や、やめたそれだけは、マジでやめて。』


「やめない」


今更ながら焦った声を出す神様に、俺はこの世のすべての真理を悟ったような笑みを浮かべて返答する。


『ごめんなさぁぁぁいっ!!!!!!!!!!!』


胡散臭い像を崇め続けて3代目。

朝起きたら美少女が横に寝てたんだが、これはご利益なんかでは絶対にない。











ーーFinーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

胡散臭い像を崇め続けて3代目。朝起きたら美少女が横に寝てたんだが、これはご利益なのだろうか。 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ