第9話 いきなり敵!! とか、どんなラノベよ?
「ねぇ神様、あれって……。」
俺は周りに聞こえないように小声で、ソレを指差す。
「あれは……神じゃ。しかもあまり良くはない。」
神様が驚愕の表情を警戒に変え、睨みつけるようにそちらを見ながら言う。
「こんなところで何してるんすか?」
「わからんが、飲み会で生まれるマイナスの気持ちを集めているのかもしれないな。」
俺の質問に、彼女は実に真剣に答える。
そこにはさっきまで意気揚々とツッコんでいたお笑いの神の影は存在せず、キチンと神様らしかった。
「それは駄目なことなんですか……? 倒したりとかするんです?」
もしかして、俺まで巻き込まれてしまうかも?
契約者的な……!?
俺はそんな不安を抱きつつ尋ねる。
「いや、それは微妙なところじゃ。居るだけなら問題はないが、神というのはいるだけで周りに影響を与えてしまう。それに、やつが悪い神ならば、絶対に放ってはおけない。そして、やつは雰囲気的に、悪い神だ。」
真剣な顔に少しの申し訳無さを混ぜて、神様が教えてくれる。
「なるほど……つまりは?」
彼女の告げた内容を咀嚼するが、いまいちわからない。
「つ、つまりは、早急に対処したほうがいい。戦うなり何なりして。」
神様はこちらを見据えてつぶやいた。
「……できるんです?」
俺は嫌な予感をビンビンと感じながら、確かめるように尋ねる。
「……お力を、お借りしたいなと……。」
…………クソやん
「はぁ、本当に貧乏神じゃないですか。」
いきなり布団に入ってきて、そしてついてきて、挙句の果てに戦えだと?
それはないよ。
貧乏神中の貧乏神だよ。
貧乏神 of the yearだよ。
受賞おめでとう。
「わ、我だってこんなことになるとは思ってなかったわ!! まさか、契約したら我以外の神も見えるようになるなんて!! お前がおかしいのではないか!?」
神様が先程までの真剣な雰囲気はどこへやら、逆ギレをかましてきた。うん、こっちのほうがいい。
「逆ギレされましても……。とりあえずいきますか。放ってはおけないんでしょう?」
俺はやれやれと、どこかのラノベ主人公のように首に手を当ててつぶやくと、ゆっくり立ち上がる。
「そ、そうだな……。我は、お前がわからないよ。お前はまともな人間なのか? そうではないのか?」
神様がこちらを実に不思議なものを見るような目で見る。
俺からすれば彼女の存在や、アレのほうがよっぽど異質なのだけど。
常に飛んでいられるとか、他の人に見えないとか。
物理法則ガン無視人間じゃないですか。
いや、人ではないのか?
なら、人権はなく日本国憲法でも健康で文化的な最低限度の生活を保証されてないから、何をしても怒られないのでは!?
「変な目でこちらを見るな!!」
俺が、どんなイタズラをしてやろうかと目線をやると、それに気がついた神様がムキーッと叫んだ。
「まともっちゃまともですよ。まともに狂ってるだけです。あっ、やべぇ、腰つった。イテテテ……ヤベェ、年だコレ。」
いきなり立ち上がったから痛みを主張する腰を抑えながら、えっちらよっちらと歩いていく。
「笑えねぇよ」
そんな俺の様子を見て、神様は呆れ混じりにどこか嬉しそうに呟いた。
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