―72― 120回
「マジかよ……」
死ぬのには慣れている。
けど、傀儡回しに殺されたとなっては流石に動揺を隠しきれない。
「なんで、カナリアが傀儡回しを……?」
わからない。だが、現に傀儡回しを操っているとこを見せつけられた。
そもそも聖騎士カナリアは何者なんだ? なんで、勇者を裏切るんだ?
もしかしたら、聖騎士カナリアを調べれば、傀儡回しを人間にするヒントを得られるのかもしれない。
次は、彼女のことを少し探ってみてもいいのかもしれない。
そう決意した俺は、淡々と彼女のもとへ向かうのだった。
◆
「最初に再会するのが貴様とはな」
聖騎士カナリアは俺の姿を確認すると不満そうにそう口にする。
「貴様はこのダンジョンに詳しいんだろ? だったら、私を案内してくれ」
彼女と雑談をするつもりはない。
だから、早速こう口にすることにした。
「取り繕うのはやめろ。お前が魔王の配下なのを俺は知っているんだ」
「――――ッ」
微かに聖騎士カナリアは顔をしかめる。
だが、すぐに真顔に戻しては主張する。
「なにふざけたことを言ってるんだ。私は勇者に忠誠を誓った身だ。そんなはずがあるわけないだろ」
まだ誤魔化すつもりか。
まぁ、いい。俺は他にもたくさんの秘密を知っているんだよ。
「蘇生させることができる指輪。寄生剣傀儡回し。証拠なら、すでに揃っているんだ」
「………………」
彼女は俺の言葉聞くと、目を大きく見開いて呆けた表情する。
「くっひっ、ふっはっはははははははぁ」
そう思うと、今度は不気味な笑い声をあげた。
「なんで、貴様ごときが私の秘密を知っているんだ……?」
聖騎士カナリアの不気味な笑みに、ゾクッ、と背筋が凍る。
今まで見たことがない聖騎士カナリアの素顔だ。もしかすると、この姿こそ彼女の本性なのかしれない。
「俺の質問に答えろ、カナリア。寄生剣傀儡回しをどうしてお前がもらっている?」
「
そういえば、蘇生させる指輪も主からもらったと言っていたことをふと、思い出す。
「主というのは、魔王のことか?」
彼女の主が魔王だというのは、当然の帰結だった。
なにせ彼女は魔王を復活させるために暗躍し、勇者を殺すんだから。
「我が主を侮辱するなッッ!!」
突然の怒鳴り声だった。
あまりにも突然すぎて困惑する。
「いいか、我が主は魔王よりも崇高な存在だぞ! 魔王と比べられることすら、おこがましい」
聖騎士カナリアの言葉を整理する。
つまり、彼女の主は魔王でない誰か? つまり、どういうことだ?
「お前は何者なんだ?」
「そうだな、一つだけ教えてやろう。『混沌主義』、それが我々を意味する唯一の言葉で、私は信奉者の一人といったところか」
「その『混沌主義』というのは組織の名か?」
「まぁ、そんなところだな」
そう答えるや否や、彼女は寄生剣
どうやら、これ以上話すつもりはないらしい。
傀儡回しの攻撃になんとか抵抗するも、その抵抗虚しく俺は死んでしまった。
◆
どうやら聖騎士カナリアは『混沌主義』という組織に属しているらしい。
その組織のトップは魔王ではないらしい。
そして、その組織のトップが寄生剣傀儡回しを聖騎士カナリアに渡した。
これらが会話でわかったことだ。
これ以上のことを聞き出そうと何度か試してみたが、結果、失敗に終わった。
肝心なことは教えてはくれないようだ。
とはいえ、俺のやることは変わらない。
まず、聖騎士カナリアを倒して、魔王の復活を阻止する。その先に、アゲハや傀儡回しがいるはずだ。
そう決意した俺は再び前に進んだ。
試行回数120回目。
何度も死んでいくうちに、聖騎士カナリアに対する対策が徐々にわかってくる。
まず、
俺は今まで〈加速〉を選んでいたが、この選択が本当に最善なのか、今一度考えてみることにした。
死に戻りした直後の俺のステータスはこうなっている。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
所持スキルポイント:2430
〈セーブ&リセット〉
レベルの概念なし
〈挑発Lv3〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:1000
〈剣術Lv3〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:3000
〈誓約〉
レベルの概念なし
△△△△△△△△△△△△△△△
着目すべきは、残っている所持スキルポイント、2430と意外と余っている。
【カタロフダンジョン】のボス、
〈加速〉を選んだ場合はこのように表示される。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
〈加速Lv1〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:50
△△△△△△△△△△△△△△△
スキルポイントを50払ってレベルを上げる。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
〈加速Lv2〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:500
△△△△△△△△△△△△△△△
まだスキルポイントが残っているので、500ポイントを払う。
すると、今度はこのように変化する。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
〈加速Lv3〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:5000
△△△△△△△△△△△△△△△
流石に5000ポイントは支払えないので、レベル3で打ち止めだ。
この状況で、何度も聖騎士カナリアに挑んだが惜しいとこまではいくが、寄生剣傀儡回しを使われると決まって負けてしまう。
そこで俺は改めて〈加速〉以外の選択肢を考えてみることにした。
手に入るスキルの一覧はこのようになっている。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
以下のスキルから、獲得したいスキルを『1つ』選択してください。
Sランク
〈アイテムボックス〉〈回復力強化〉〈魔力回復力強化〉〈詠唱短縮〉〈加速〉〈隠密〉
Aランク
〈治癒魔術〉〈結界魔術〉〈火系統魔術〉〈水系統魔術〉〈風系統魔術〉〈土系統魔術〉〈錬金術〉〈使役魔術〉〈記憶力強化〉
Bランク
〈剣術〉〈弓術〉〈斧術〉〈槍術〉〈盾術〉〈体術〉〈ステータス偽装〉
Cランク
〈身体強化〉〈気配察知〉〈魔力生成〉〈火耐性〉〈水耐性〉〈風耐性〉〈土耐性〉〈毒耐性〉〈麻痺耐性〉〈呪い耐性〉
Dランク
〈鑑定〉〈挑発〉〈筋力強化〉〈耐久力強化〉〈敏捷強化〉〈体力強化〉〈視力強化〉〈聴覚強化〉
△△△△△△△△△△△△△△△
魔術系統のスキルは〈魔力生成〉というスキルが必須なため、却下。
二つスキルが手に入るなら、〈魔力生成〉となんらかの魔術系統のスキルという選択肢もあるんだが。
あとは、〈記憶力強化〉といった戦闘力に関与しなさそうなスキルも却下だ。
となると、おのずと選ぶべきスキルは絞られていく。
候補は〈回復力強化〉〈隠密〉〈身体強化〉〈筋力強化〉〈敏捷強化〉〈体力強化〉といった感じだな。
さて、どれを選ぶべきか……?
「まぁ、全部やってみるか」
なにせ俺には〈セーブ&リセット〉がある。
失敗すれば、死んでやり直せばいい。
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