―38― いっただきまーす
つまり、この隠し部屋では、俺は10倍の速度で成長することができるということだ。
ガシャッガシャッ、
「
『もちろんっ!』
傀儡回が甲高い声で返事をする。
「
〈脈動する大剣〉の固有能力、それは〈自律機能〉というもの。
〈脈動する大剣〉自身が、俺をひっぱるように動いてくれるのだ。おかげで、振り回すのさえ困難なほどに重たくとも、剣自身が動いてくれることで苦労せず戦うことが出来る。
思えば、別の時間軸にて傀儡回に乗っ取られていたとき、散々俺の体を勝手に引っ張っていた。ってことを考えると、この固有能力を手にするのは当然のように思える。
進行方向にいた
『やるなぁ、ご主人』
「あぁ、お前のほうこそ」
悪くない感触だ。
この力なら、もしかしたら勝てるかもしれない。
「クゴォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」
刹那、聞いたことがない雄叫びが聞こえた。
『出た。これが、この部屋の本命だよ、ご主人』
傀儡回がそう呟く。
前方には、見たことがない魔物がいた。
転移陣を使って、新しく出現した魔物に違いない。
『
それは馬に騎乗した一際大きな甲冑を身につけた魔物だった。手には、それまた巨大な槍を持っている。
どうやら、この
「倒せるのか?」
『それは、ご主人次第じゃないかな?』
傀儡回の回答に、それもそうか、と頷く。
そして、〈脈動する大剣〉の柄を強く握りしめる。
「傀儡式剣技、
〈脈動する大剣〉を横に薙ぎ払いして、目の前の
『ご主人、後ろから敵が』
「あぁ!」
周囲の状況を把握できるらしい傀儡回が状況を伝えてくれた。
それに呼応するように、大剣を振り回す。
それから
レベル2になった傀儡回の力と、レベル3の〈剣術〉スキル、そして、俺自身の魔物の動き読む能力が合わされば、倒せない敵なんていないんじゃないかと思えてしまうほど、順調に魔物たちを倒していく。
「あとは、お前だけだな」
目の前には、
さらに、その奥、この部屋のボス、
だから俺は高く跳躍して、〈脈動する大剣〉を高く振り上げる。
「傀儡式剣技、
空中で一回転させながら、その勢いを利用して、地面へと叩きつける。
グシャッ、と
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
魔物の討伐を確認しました。
スキルポイントを獲得しました。
△△△△△△△△△△△△△△△
というメッセージに気がつく。
「倒したのか……」
あっけなく倒せてしまったことに逆に困惑してしまう。
『やったな! ご主人!! なぁ、これなら、もしかして俺様をレベル3にさせるだけのスキルポイントが貯まったんじゃなんいのか!?』
「ん、それもそうだな……」
傀儡回の言葉で現実に戻された俺はスキルポイントを確認しようとステータス画面を開く。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
所持スキルポイント:1320
〈挑発Lv1〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:10
〈剣術Lv3〉
レベルアップに必要な残りスキルポイント:3000
〈寄生剣
レベルアップに必要な残りスキルポイント:700
△△△△△△△△△△△△△△△
〈寄生剣傀儡回の主〉がレベル3になるのに必要なポイントは十分足りているな。
出し惜しみする必要もないので、早速レベルを上げてしまう。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
スキルポイントが使用されました。
レベルアップに必要な条件を達成しました。
スキルは〈寄生剣傀儡回の主〉レベルアップしました。
寄生剣傀儡回の主Lv2 ▶ 寄生剣傀儡回の主Lv3
△△△△△△△△△△△△△△△
「うおーっ、これでさらに進化できるようになるぜーっ!!」
〈脈動する大剣〉がさらに光を放ち始めた。
そうか、レベル2になったときは〈脈動する大剣〉という派生スキルを獲得した。
ということは、レベル3になった今も新しいスキルが手に入るということか。
一体どんな派生スキルが手に入るか楽しみだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
派生スキル〈
△△△△△△△△△△△△△△△
〈
『これよ、これ! この姿が俺様がもとめていたもんなんだ!』
そう叫びながら傀儡回は姿を変えようとした。
大剣の姿から段々と大きくなり、見た目もさらにゴツくなっていく。
「なんだ、その姿は……?」
俺は不思議に思っていた。
だって、レベル3になった傀儡回は武器と呼ぶには、あまりにも相応しくない見た目をしていたからだ。
大きな顎を持った巨大な生き物。
というのが、最も適した説明だろうか?
しかし、生き物という表現にもひっかかりを覚える。
それは、手足もなければ、胴体もなく、目や鼻もない。大顎しか、生き物らしい特徴を持っていなかった。
でから、生き物と呼ぶにはあまりに不完全な気がする
まるで、食べることだけを目的として作られた存在のような……。
あぁ、だから、捕食者なのか。
目の前の存在が〈
「なぁ、傀儡回。その姿で、一体なにができるんだ?」
「それはもちろん食べることだよ」
傀儡回は巨大な顎を動かして、そうしゃべった。
まぁ、食べることを目的としていることは予想通りではあるんだが。しかし、これを使って、どうやって戦うのか、全く想像つかない。
「では、いっただきまーす」
ふと、傀儡回がそう口にする。
「おい、なにを言って――」
言葉を最後まで告げることができなかった。
だって、俺の体はたった今、〈
〈
「ありがとう、ご主人。これで、やっと人間になれるよ」
その言葉を聞こえたときには、俺の意識はすでに消え失せていた。
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