―14― 雑魚どもが

 試行回数およそ510回目。


 宝箱のある部屋についた俺は迷いなく〈挑発〉を選んだ。


「「グォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」」


 鎧ノ大熊バグベアたちの雄叫びが部屋の中を木霊する。

 もう、何度も何度も聞いた雄叫びだ。


「ばーか」


 まず、近くにいる鎧ノ大熊バグベアAと鎧ノ大熊バグベアBに対して挑発をする。

 すると、二体とも俺を挟み込む形で突進してくる。

 それをしゃがむことでギリギリでかわす。

 すると、グサッ、とお互いがお互いを斬りつけあった。


「攻撃を外したようだな、雑魚が」

「「グガァアアアッッ!!」」


 再び、鎧ノ大熊バグベアAと鎧ノ大熊バグベアBに対し、〈挑発〉を使う。

 すると、二体とも俺に対し猪突猛進に突っ込んでくる。

 それを確認しつつ、前に跳ぶ。

 すると、鎧ノ大熊バグベアCと鎧ノ大熊バグベアDがいるため、鎧ノ大熊バグベアCの頭の上に手をのせて、宙返りしながら飛び越える。

 すると、鎧ノ大熊バグベアAとBの攻撃が、CとDに直撃する。


「ガゥッ!」


 攻撃をくらった鎧ノ大熊バグベアは盛大に後ろへと倒れた。

 よしっ、いい感じだ。


「雑魚どもが、かかってこいよ」


 次は鎧ノ大熊バグベアたち全員に〈挑発〉を使う。

 すると、彼らは一目散に俺に襲いかかろうと一カ所に集まってくる。

 おかげで、魔物たちは互いに至近距離になった状態で、攻撃を繰り出してきた。

 それら猛攻をすべてかわしていくうちに、外した攻撃が別の魔物へと当たる同士討ちが何度も発生する。


「俺はこっちだ」


 指さしながら〈挑発〉を使う。

 すると、鎧ノ大熊バグベアが振り向き、腕を全力で振るう。

 それをしゃがんでかわせば、その攻撃は別の鎧ノ大熊バグベアに刺さる。

 味方に攻撃してしまったとわかると、鎧ノ大熊バグベアは一瞬冷静になろうとして、攻撃をやめようとする。

 けれど、とまることは俺が許さない。〈挑発〉を使って、さらなる攻撃を引き出す。

 それを寸前にかわす。

 すると、その攻撃は他の鎧ノ大熊バグベアが受けることになる。


 俺は巧みに〈挑発〉を駆使して、何度も何度も同士討ちを発生させた。


「おい、こんな攻撃も当てられないのか?」


〈挑発〉しまくる。

 すると、鎧ノ大熊バグベアは必ずのってくる。

 攻撃を避けるのは難しいことではない。

 鎧ノ大熊バグベアの攻撃は何千回とこの目に焼き付いているからだ。

 どんな攻撃がやってきて、どう体を動かせば、攻撃を避けられるのか手に取るようにわかってしまう。


 気がつけば、鎧ノ大熊バグベアは残り一体となっていた。

 最後の鎧ノ大熊バグベアは、攻撃を何度も受けたせいか、全身から血を流している。

 その上、疲労困憊なのか、攻撃する気力もないようで、立ち止まっている。


「おい、休むなよ。雑魚」

「グァアアアアアアッッ!」


〈挑発〉を使うことで、一転して鎧ノ大熊バグベアが襲いかかってくる。

 最低限の動きのみで、攻撃を回避しつつ、足を前に出す。

 すると、鎧ノ大熊バグベアは盛大に前方へと転倒した。

 見ると、気絶したのか、すでに気を失っていた。


「ふぅ」


 大きく息を吐く。

 喜びよりも安堵の気持ちが先にくる。

 それから徐々に喜びの感情が溢れてくる。


「よっしゃぁあああああああああッッッ!!」


 だから、全力でその場でガッツポーズをして喜んだ。


 試行回数およそ510回目にして、俺は10体の鎧ノ大熊バグベアが出現する部屋を突破したのだった。


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