―08― 次に選ぶべきスキル

「くそ……っ」


〈加速〉で鎧ノ大熊バグベアを倒せないことを悟った俺は、自暴自棄になっていた。

 最初は、〈加速〉の持つ破格の効果に興奮していた。

 なのに、〈加速〉を選び続けたことが無駄骨だったとわかると、流石にしんどいって感情が沸く。

 とはいえ、歩みをとめることは許されない。

 なにせ、死んだ瞬間、最初の鎧ノ大熊バグベアを襲ってくる直前に時が戻るのだ。

 ショックだからと、なにもしないでいたら、そのまま死んでしまう。

 そうわかっているはずなのに、中々スイッチが入らない。


「憎い……」


 だから、思い出すことにした。

 ナミアのこと。

 ナミアを殺したダルガのこと。

 そして、冤罪の俺に罪をかぶせた村人たち。


「憎い、憎い、憎い……ッ!」


 憎しみが俺にとって、なによりの原動力だ。

 この憎しみがなければ、とっくに心が折れていたに違いない。


「絶対にダンジョンを脱出して、この手で復讐してやる」


 決意を新たに、俺は再び歩き始めた。





 試行回数およそ305回目。

 再び俺は宝箱にある部屋へとたどり着いていた。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 以下のスキルから、獲得したいスキルを『1つ』選択してください。


 Sランク

〈アイテムボックス〉〈回復力強化〉〈魔力回復力強化〉〈詠唱短縮〉〈加速〉〈隠密〉


 Aランク

〈治癒魔術〉〈結界魔術〉〈火系統魔術〉〈水系統魔術〉〈風系統魔術〉〈土系統魔術〉〈錬金術〉〈使役魔術〉〈記憶力強化〉


 Bランク

〈剣術〉〈弓術〉〈斧術〉〈槍術〉〈盾術〉〈体術〉〈ステータス偽装〉


 Cランク

〈身体強化〉〈気配察知〉〈魔力生成〉〈火耐性〉〈水耐性〉〈風耐性〉〈土耐性〉〈毒耐性〉〈麻痺耐性〉〈呪い耐性〉


 Dランク

〈鑑定〉〈挑発〉〈筋力強化〉〈耐久力強化〉〈敏捷強化〉〈体力強化〉〈視力強化〉〈聴覚強化〉


 △△△△△△△△△△△△△△△


 さて、〈加速〉も駄目、〈隠密〉も駄目ってことになると、次に選ぶスキルはなにになる?


 Sランクで唯一有用そうなのは、〈回復力強化〉だ。

 怪我をしても、すぐに直るスキルなんだろうが、そもそも一撃食らえば即死することが多いからな。

 やっぱり〈回復力強化〉は選んでも意味がなさそうだ。

 そう考えると、下のランクから探すことになるんだろうが。


 まず、Aランクのスキルは魔術に関するスキルばかり。

 魔術系統のスキルは〈魔力生成〉というスキルで、魔力を体内に保有しないと意味がないので、自然と除外される。

 Aランクで唯一、魔術と関係ないのが〈記憶力強化〉だが、こんなスキルを手にして、なんの役に立つとのか見当もつかない。


 ってことを考えたら、次はBランクからスキルを選ぶことになるが、そのBランクのスキルも武器を持っていることを前提としたスキルばかりだ。

 例えば、〈剣術〉なんかは手に剣を持っていないと、効果が発揮されない。

 ゆえに、武器を持っていない俺には、これらのスキルを無用の長物となる。


 けれど、そのBランクにして、唯一、武器を持っていないことを前提としたスキルが存在する。


「まぁ、順当にいくなら、これか」


 そのスキルとは――〈体術〉だ。


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