―05― 知恵の結晶
落とし穴の先に隠し通路があることがわかった。
けれど、何度死に戻りしても隠し通路にたどり着くのに苦心していた。
まず、
何度も繰り返しているおかげで、俺の動きは洗練されていっている。だから、繰り返せば繰り返すほど、成功率は高くなっているが、それでも三回に一回は失敗する。
すべての攻撃を避けた後、
ただ、顔面殴るだけでは、25秒しか時間を稼げない。
目を殴った場合は、それが35秒に増える。
35秒間全力で走って、やっと落とし穴までたどり着くことができる。
落とし穴に落ちてからも問題だ。
ただ、落ちるだけではトゲに体が串刺しにされてしまう。
体の落ちる場所を調整して、串刺しにされないようにしなくてはいけないが、正直狙ってそれをやるのは難しい。
試行回数200回目にして、
「やっと、成功した」
無事トゲに体を刺されないように、落とし穴に落ちることができた。
「ガウッ!!」
「うわっ」
穴底から見上げると、
だが、腕の長さが足りず、俺のいる場所まで届かないようだ。
ひとまず、
「やっぱり落とし穴の先に隠し通路があるみたいだな」
そう呟きながら、通路を進む。
すると、広い空間へと出た。
この中央には宝箱が置いてある。
「あった!」
探していた宝箱の存在に歓喜の声をあげつつ、宝箱を開けた。
「なんだ、これは? 宝石か?」
入っていたのは、透明なクリスタルのような物体だった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
〈知恵の結晶〉を獲得しました。
効果が強制的に発動します。
△△△△△△△△△△△△△△△
「うおっ!」
突然現れたメッセージに驚愕する。
そして、驚いている最中にメッセージの内容が切り替わる。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
以下のスキルから、獲得したいスキルを『1つ』選択してください。
Sランク
〈アイテムボックス〉〈回復力強化〉〈魔力回復力強化〉〈詠唱短縮〉〈加速〉〈隠密〉
Aランク
〈治癒魔術〉〈結界魔術〉〈火系統魔術〉〈水系統魔術〉〈風系統魔術〉〈土系統魔術〉〈錬金術〉〈使役魔術〉〈記憶力強化〉
Bランク
〈剣術〉〈弓術〉〈斧術〉〈槍術〉〈盾術〉〈体術〉〈ステータス偽装〉
Cランク
〈身体強化〉〈気配察知〉〈魔力生成〉〈火耐性〉〈水耐性〉〈風耐性〉〈土耐性〉〈毒耐性〉〈麻痺耐性〉〈呪い耐性〉
Dランク
〈鑑定〉〈挑発〉〈筋力強化〉〈耐久力強化〉〈敏捷強化〉〈体力強化〉〈視力強化〉〈聴覚強化〉
△△△△△△△△△△△△△△△
大量に現れたスキル名に困惑する。
通常、スキルというのは生まれつき入手するものだ。
そして、大半の人はスキルを持たない状態で生まれる。
もちろん、俺もその一人だった。
だから、冒険者なんかにならず農地を耕して生きてきた。
そんな入手機会がほとんどないスキルを、この中から好きに選んでいいってことだとだよな。
そう考えたら、〈知恵の結晶〉は相当破格な性能を有していることになる。
まぁ、Sランクダンジョンの奥地にある宝箱だ。
それなりに、優秀なアイテムがないと割に合わないのだが。
さて、問題として、俺はどのスキルを選択すべきか。
まず、〈治癒魔術〉や〈火系統魔術〉を初めとした魔術系統のスキルは除外していい。
魔術を扱うには、まず〈魔力生成〉というスキルを獲得して魔力を入手する必要がある。
〈魔力生成〉も獲得できるみたいだが、それだけ手に入れてもなんの役にも立たない。
また、〈剣術〉や〈弓術〉といった武器を持っていることを前提としたスキルも獲得しても意味がない。
今の俺は武器一つ手にしていない状態なんだから。
そう考えると、選択肢は自ずと絞られていく。
「まぁ、Sランクのスキルを選ぶのが定石だよな」
そう口にして、Sランクスキルを眺めていく。
まず、〈アイテムボックス〉は論外だよな。便利ではあるんだろうが、今欲しいのか戦闘力を少しでも強化してくれるスキルだ。
〈回復力強化〉は有用かもしれないが、今の俺は一撃食らえば死に直結することがほとんど。必要と思えないな。
〈魔力回復力強化〉は俺自身が魔力を保有していない時点で論外。〈詠唱短縮〉も同様に魔術が使えない俺には不要なスキルだ。
ってことを考えたら、〈加速〉か〈隠密〉のどちらかだ。
〈加速〉を使えば、走る速さが強化されるんだろう。これから、出会った魔物から逃げ続けようと思うなら悪くないスキルだ。
〈隠密〉も、魔物から隠れて進めるってことだろうし、悪くない。
今の俺に必要なのは、いかにこのダンジョンを生存しながら脱出できるかだ。
どちらのスキルも生存率をあげてくれるスキルだ。
悩むな……。
「よしっ、〈隠密〉にするか」
そう決意した俺は〈隠密〉をタップする。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
スキル〈隠密〉を獲得しました。
△△△△△△△△△△△△△△△
というメッセージウィンドウが現れた。
〈隠密〉を選んだわけは、〈加速〉に比べて体力を温存して移動ができそうだと判断したからだ。
〈加速〉を使えば、魔物に見つかっても振り切れるかもしれないが、体力をある程度消費するだろう。
それを、これからたくさん出会うであろう魔物全てに〈加速〉を使って振り切れるほど体力を温存できるとは思えない。
と、そんなことを考えていると――
クゴォオオオオ、と音がしたことに気がつく。
振り向くと、この部屋に入るために使った入口が閉まっていることに気がつく。
「閉じ込められた」
そう呟いた瞬間だった。
周囲に複数の魔法陣が展開される。
「「クゴォオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」
魔法陣と共に現れたのは
総勢、10体。
「……は?」
そう呟いた次の瞬間には、俺は
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